「第6回マイナビ日本スケートボード選手権大会 supported by Murasaki Sports」男子パーク種目が茨城県笠間市のムラサキパークかさまにて2023年11月3日(金)~5日(日)に渡り開催された。今大会はもちろんパリオリン…
「第6回マイナビ日本スケートボード選手権大会 supported by Murasaki Sports」男子パーク種目が茨城県笠間市のムラサキパークかさまにて2023年11月3日(金)~5日(日)に渡り開催された。
今大会はもちろんパリオリンピック出場枠獲得を目指す日本人選手たちにとって大事な大会であることは間違いない。なぜなら今大会は来年度のワールドスケートジャパン強化指定選手及び特定育成選手の選考を兼ねていて、強化選手は2024年1月にUAEのシャルジャにて開催予定のパリオリンピック予選大会に派遣されるからである。なお今大会の上位5名が強化指定選手として選ばれる。
そんな世界への切符を確かなものにするため、本カテゴリーには全国から39名の選手が出場。日本人別の世界ランキングトップの永原悠路が欠場する中で、誰が優勝してもおかしくない熾烈な大会が繰り広げられた。決勝では準決勝を勝ち上がった合計8名で競われる形で、国内のトップ選手たちが名を連ねたスタートリストは坂本輝月、笹岡建介、志治群青、溝手寿麻、猪又湊哉、栗林錬平、天野太陽、櫻井壱世の順に。
そして決勝フォーマットは女子同様に一人45秒のランを3本滑走した上で自身の最高得点のランが最終スコアとなるベストラン採用方式。今大会のコースは昨年は「日本OPEN」が開催されたりと、国内公式大会も多く行われていることからどの選手にとっても馴染みのあるレイアウトとなっている。どの選手も高難度トリックかつオリジナリティに溢れたルーティンを持つため、決勝というプレッシャーの中でうまく自分の空気感を作り出して、フルメイクでランを終えることができるかどうかが勝敗を分けるポイントになると考えられる。
大会レポート
【ラン1本目】
笹岡建介のライディング ©ワールドスケートジャパン
直前に行われた女子カテゴリー同様に1本目では全体的に各選手がフルメイクで確実にランを決めてまずスコアを残していく展開。近年、世界の各大会では1本目から攻めのライディングをチョイスする選手が多いからかフルメイクする選手は少ないため、今回は比較的珍しいスタートとなった。
そんな1本目で攻めのライディングを見せてフルメイクでまとめ後続の選手にプレッシャーをかけたのは過去2度のタイトルを獲得しているベテランである笹岡建介。全体的にスピードとハイエアーを維持するライディングの中で、準決勝ではなかなかメイクできずにいたディープエンドからの「キックフリップインディ」に続けて、ボルケーノセクションでの「キックフリップインディ」を見事メイクし79.28ptをマークした。このルーティンをメイクした瞬間には会場中から大きな歓声が響き渡るほどで、笹岡も観客一人一人にグータッチで応える様子が見られた。
笹岡建介のライディング ©ワールドスケートジャパン
笹岡に続き、1本目で自身最高得点のランを見せて会場を沸かしたのは溝手寿麻。スタート早々からスピードを上げてスタイリッシュにライディング。ボルケーノセクションの「バックサイド360」からのクオーターで「ロデオ540」、さらにボルケーノセクションをリップを使って「キックフリップインディ」という間髪入れず立て続けに高難度トリックをメイクし65.76ptをマークした。
そして同じく安定したランを見せたのは栗林錬平。スタイリッシュな「ハリケーングラインド」を皮切りに「バックサイド540」や、「ノーズブラント to フェイキーオーリー」からの「インバート」などオリジナリティ溢れるトリックを随所に取り入れてフルメイクし、自身としてはどこかやりきれない様子も見せるも70.08ptをマーク。
さらにこのラン1本目で見事なライディングを見せたのは優勝候補の櫻井壱世。スピードはもちろんのことエアーの飛距離にも定評のある彼は、一発目からクオーターで大きなトランスファーをメイクすると、ディープエンドでの「マックツイスト」、ボールセクションでの「バックサイド・テールスライド」からの「バックサイド・リップスライド」のコンビネーションを決める。その後も「ボディバレリアル540」など高難度トリックを決め切り72.67ptをマーク。しかしまだまだ本人的には高難度トリックを温存している様子で次のランに期待がかかった。
【ラン2本目】
志治群青のライディング ©ワールドスケートジャパン
ラン1本目で5名の選手が70点台を叩き出し優勝争いが拮抗し始めた一方で、ラン2本目ではなかなかフルメイクできず得点を上げれられない選手が多く出てくる展開になった。1本目で暫定1位の座についた笹岡は1本目と違うルーティンでさらに得点を伸ばすべく2本目に挑むも最後のボルケーノセクションでトライした「ヒールフリップ・バックサイド360」で着地できず得点を69.95ptとし、まだ後続選手の追い上げに不安を残すまま3本目に挑む形となった。
志治群青のライディング ©ワールドスケートジャパン
そんな中で1本目のランを上回るライディングで得点を伸ばしてきたのは、1本目で71.60ptをマークした本決勝最年少の志治群青。笹岡の後の滑走した彼は、ディープエンドでの「バックサイドロデオ540」や、彼の持ち技ともいえるハイエアーでの「ジュードーエアー」を取り入れたライディング。その後も「バックサイド540」や「キックフリップインディ」そして最後には「バリアルフリップ to ディザスター」を決めフルメイク。75.05ptをマークし表彰台圏内の暫定2位にジャンプアップした。
その後は各選手、さらに得点を伸ばすべく1本目を上回る攻めのルーティンに挑戦するも中盤でトリックに失敗してなかなか決めきれない状態が続く。笹岡や志治にとってはこのまま守り切りたい状況である一方で他の選手にとっては絶対に決めなければならない展開となった。
【ラン3本目】
天野太陽のライディング ©ワールドスケートジャパン
そしてもう後が無い最後のチャンスとなった3本目。この回では各選手が今日イチの攻めライディングでランに挑んだ。今大会の一番走者となった坂本輝月は、1本目・2本目とラストトリックを決めきれずベストスコアを61.27ptとした状態で3本目を迎えた。ラストランでは綺麗な長い「5−0グラインド」や「アーリーウープ・ヒールフリップインディ」を豪快にメイクしていくも、やはりラストトリックとして、ボルケーノセクションでトライした「バックサイド540」をメイクできず61.46ptで大会を終えた。
また坂本同様になかなか自分の思うようなトリックができず悔しい思いをしたのが猪又湊哉。決勝では1本目・2本目と中盤でトライした「ノーズグラインド」や「バリアルフリップ to フェイキー」で失敗してしまい滑りきれておらず得点を伸ばせずにいた彼。3本目では「バックサイド540」や「キックフリップインディ」をメイクするも「アーリーウープインディ」の着地でスリップダウン。猪又らしくないミスに本人も頭を抱えて悔しがる様子も見られたがベストスコアを33.07ptとした。しかし大会後の練習ではボルケーノセクションで「トレフリップインディ」を決めており、その様子を自身のインスタグラムでアップするなど次回への期待を感じさせた。
天野太陽のライディング ©ワールドスケートジャパン
一方で、この最後の一本で逆転し一気に表彰台圏内に勝ち上がったのが天野太陽。1本目で70.70ptをマークしていた彼はそのランを更に上回るライディングを見せた。最初に「バックサイド540・テールグラブ」をメイクすると豪快な「ハリケーングラインド」や「マドンナ」などを組み込んだランを展開。そしてラストトリックには「フロントサイドテールスライド to 360アウト 」をメイク。76.23ptをマークし暫定2位に大きくジャンプアップさせた。
そして、そして最後は準決勝1位通過で優勝候補であった櫻井がどのように表彰台争いに入ってくるのかが注目だったが、中盤の「キックフリップインディ」で失敗し得点を伸ばせず4位に留まった。決めきれない悔しさにボードを叩き付けたくなる思いを押し殺す姿も見られ、見る方にまでその悔しさが伝わるラストランとなった。
この結果から1本目で79.28ptを叩き出した笹岡が勝ち切り大会3度目の優勝を果たした。そんな笹岡に続いて3本目に逆転した天野が2位、そして弱冠12歳の志治が3位という結果で今大会は幕を閉じた。
【大会結果】
左から天野、笹岡、志治の順©ワールドスケートジャパン
優勝 笹岡 建介 (ササオカ・ケンスケ) / 79.28pt
準優勝 天野 太陽 (アマノ・タイヨウ) / 76.23pt
第3位 志治 群青 (シジ・グンジョウ) / 75.05pt
第4位 櫻井 壱世 (サクライ・イッセイ) / 72.67pt
第5位 栗林 錬平 (クリバヤシ・レンペイ) / 70.08pt
第6位 溝手 寿麻 (ミゾテ・ジュマ) / 65.76pt
第7位 坂本 輝月 (サカモト・キヅキ) / 61.46pt
第8位 猪又 湊哉 (イノマタ・ソウヤ) / 33.07pt
最後に
これは前回の世界選手権の際に感じたこととも重複するが、国内に関しても選手たちの実力が上がっている中で、選手同士のレベルが拮抗しているということだ。実際に今回もトップ6名は70点台であり得点としても僅差であった。そのため今回の勝敗を分けたのは、笹岡のキャリアによる他選手との経験の差だと考えている。実際に笹岡自身も今シーズンはなかなか優勝できていない悔しい時間を過ごしたため、かなり今大会に向けては戦略を練ってきたのではないかとうかがえるライディングを見せていた。一方で若手選手たちも、最近では珍しいこのような展開になる大会を経験していくことでさらに今後の大会での駆け引きがおもしろくなってくると思う。
大会3連覇を果たした笹岡©ワールドスケートジャパン
そして今大会の決勝上位5名は、昨年の世界選手権が行われた土地である中東はUAEのシャルジャで開催されるパリオリンピック予選大会に出場することが決まっている。大会まで2ヶ月ほど期間があるが各選手たちがさらなる成長しどんな戦いがを見せてくれるかが楽しみだ。また現在は今大会不参加だった永原が世界ランキング12位(2023年11月時点)であり、パリオリンピック出場選手として最有力となっているが、他の日本人選手たちがどうパリオリンピック出場枠獲得争いに関わってくるのにも注目したいと思う。
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