11月12日(日)、京都競馬場で3歳以上牝馬によるGⅠエリザベス女王杯(芝2200m)が行なわれる。 今年は、昨年の勝ち馬ジェラルディーナや同2着馬ライラックのほか、GⅡ府中牝馬S(東京・芝1800m)で重賞初制覇を飾ったディヴィーナ、G…

 11月12日(日)、京都競馬場で3歳以上牝馬によるGⅠエリザベス女王杯(芝2200m)が行なわれる。

 今年は、昨年の勝ち馬ジェラルディーナや同2着馬ライラックのほか、GⅡ府中牝馬S(東京・芝1800m)で重賞初制覇を飾ったディヴィーナ、GⅠオークス(東京・芝2400m)2着・GⅠ秋華賞(京都・芝2000m)3着のハーパーなど、実績のある馬や勢いのある新星が揃い、非常に興味深いレースとなっている。そんなレースを血統的視点から占っていこう。



GⅢ愛知杯を勝利したアートハウス photo by Eiichi Yamane/AFLO

 エリザベス女王杯の血統的傾向の中で、筆者が注目するのはロベルト系の強さだ。ロベルト系といえば、日本では過去にリアルシャダイ、ブライアンズタイムが成功を収め、現在はモーリス、エピファネイアなどがトップクラスの種牡馬として活躍している。

 比較的に、牡馬に活躍馬の多い系統というデータもあるが、JRAの牝馬GⅠの中でロベルト系の勝利が最も多いのがエリザベス女王杯で、2000年のファレノプシス(父ブライアンズタイム)、2010、11年のスノーフェアリー(父インティカブ)、2012年のレインボーダリア(父ブライアンズタイム)、昨年のジェラルディーナ(父モーリス)と5勝。さらに、同じ京都で距離も近い秋華賞でも2勝を挙げている。

 2012年のレインボーダリアは他の重賞では馬券に絡んだことがなく7番人気だったが、馬場適性の高さによる勝利だったと考えられる。そのレインボーダリアのように、エリザベス女王杯におけるロベルト系は人気薄の激走も特徴だ。1998年2着のランフォザドリーム(父リアルシャダイ)は5番人気、2021年3着のクラヴェル(父エピファネイア)は9番人気、昨年2着のウインマリリン(父スクリーンヒーロー)は5番人気と、いずれも人気サイドの馬ではなかった。

 今年は昨年の勝ち馬ジェラルディーナも出走を予定しているが、ロベルト系でも比較的注目度の低いアートハウス(牝4歳、栗東・中内田充正厩舎)に期待してみたい。

 同馬は昨年のGⅡローズS(中京・芝2000m)、今年のGⅢ愛知杯(中京・芝2000m)と重賞で2勝。"中京巧者"に思われがちだが、昨春の忘れな草賞(阪神・芝2000m)では3馬身差と強い競馬を見せており、右回りの実績も十分だ。

 父は昨年の2着馬ウインマリリンと同じスクリーンヒーロー。スクリーンヒーローの産駒は4歳以降にGⅠを6勝したモーリス、5歳暮れにGⅠ香港ヴァーズ(シャティン・芝2400m)でGⅠ初制覇を飾ったウインマリリン、6歳にして先日のGⅡスワンS(京都・芝1400m)を勝ったウイングレイテストなど、4歳以降に本格化する馬が多い。

 今回は骨折明けで8カ月ぶりという条件ではあるが、約1カ月前に帰厩後、順調に調教を重ねて好タイムを出しており、状態は悪くないようだ。母パールコードは2016年のこのレース4着、秋華賞2着などGⅠでも上位争いを見せていただけに、母の雪辱を果たす走りに期待する。

 もう1頭はゴールドエクリプス(牝4歳、栗東・大久保龍志厩舎)を挙げる。父ドゥラメンテの産駒は今秋も、リバティアイランドが「牝馬三冠」を達成、ドゥレッツァがGⅠ菊花賞(京都・芝3000m)を制覇、アイコンテーラーが地方交流GⅠJBCレディスクラシック(大井・ダート1800m)を勝利と破竹の勢い。ドゥラメンテの母アドマイヤグルーヴは2003、04年にこのレースを連覇した馬でもある。

 さらにゴールドエクリプスの母系を見ると、母の父ハービンジャーは2017年の勝ち馬モズカッチャンの父で、祖母の父マーベラスサンデーはエリザベス女王と同じ芝2200mのGⅠ宝塚記念(阪神)の勝ち馬。祖母の父サクラユタカオーは、芝2400mで行なわれていた1995年のエリザベス女王杯の勝ち馬サクラキャンドルの父で、2009年の勝ち馬クィーンスプマンテの母の父と、このレースに縁がある血統が並んでいる。

 エリザベス女王杯は、ドゥラメンテの父キングカメハメハ直系から勝ち馬は出ていないが、この母系とドゥラメンテの今の勢いと血統構成なら、そのジンクスを破ってくれそうだ。京都で3戦2勝というコース適性の高さもあり、期待できる。

 以上、今年のエリザベス女王杯はスクリーンヒーロー産駒アートハウス、ドゥラメンテ産駒ゴールドエクリプスの2頭に期待する。