今年で23回目を数える『JBC』では、過去に数々の名場面が生まれている。特に2011年のJBCクラシックでは、スマートファルコンとトランセンドという砂のトップホース2頭が激突。配当面を含めて今でもファンの語り草になっている。  スマート…

 今年で23回目を数える『JBC』では、過去に数々の名場面が生まれている。特に2011年のJBCクラシックでは、スマートファルコンとトランセンドという砂のトップホース2頭が激突。配当面を含めて今でもファンの語り草になっている。

 スマートファルコンは全国各地のダートグレード競走を席巻し、通算で重賞19勝を挙げた稀代の快速馬。レース当時も絶好調で、前年のJBCクラシックから6連勝を飾っていた。いっぽうのトランセンドも、歴史的な砂の名馬。JCダートを連覇するなどGI/JpnIで4勝を挙げたほか、ドバイWCでも2着に入った。当時は10年の東海Sから7戦連続で連対中。お互いに競走馬生活のピークを迎えていた。

 両者の単勝オッズはそれぞれ1.2倍と2.4倍。3番人気のシビルウォーは29.2倍と大きく離れていたから、ファンのほとんどが“2強対決”を意識していたことがうかがえる。前年の日本テレビ盃以来の対決。GI/JpnIタイトルを手にして大きく成長した2頭が、再び決着を付けるときがきた。3万3000人の観衆が見つめるなか、決戦のゲートが開く。

 枠順と隣同士で脚質的にも似通った両者だったが、スマートファルコンがやはり速い。スタートで少しヨレたがすぐに立て直し、武豊騎手が軽くうながして先手。トランセンドが外に切り替えて同馬を追っていき、以下にシビルウォー、フィールドルージュらが続いた。だが、2コーナーを過ぎると既にが“マッチレース”の様相。非常に長い隊列になっていた。

 逃げるスマートファルコンを2、3馬身離れてトランセンドが追い、そこから5馬身ほど離れてシビルウォー。4番手以下には10馬身以上の差がついている状態で、向正面の隊列がビジョンに映ると、場内からはどよめきが起こる。アナウンサーが「ペースはどうか」と実況したが、武豊騎手の時計に狂いはない。およそ12秒フラットのたんたんとした流れで、ライバルのスタミナを少しずつ削いでいく。
 
 勝負どころの4コーナーでトランセンドが詰めにかかったが、スマートファルコンの手応えは楽。直線でようやく追い出す武豊騎手に対し、藤田伸二騎手がトランセンドを必死に鼓舞する。リード4馬身。「やはりスマートファルコンの独壇場か!」とアナウンサーは叫んだが、200m過ぎで差が詰まっていく。3馬身、2馬身、1馬身――だが、そこがゴール。スマートファルコンが王者の意地といわんばかりの1馬身差Vで“2強対決”は幕を閉じた。

 さて、気になる配当だが、レース後に表示された払戻額を見てファンは再び沸くことになる。2頭に絡んだ馬券は、複勝・枠複・馬複・ワイドが元返し。3連単でさえも「250円」という配当だった。これは中央では86年のグレード制導入以降、地方では97年のダートグレード導入以降、ともにGIでの最低配当金額となっている。