カヌー・スプリント競技で世界の舞台で戦ったこともある原綾海(あやめ)選手(26)が、故郷の島根県出雲市でスポンサーに頼らずに競技を続けている。練習に配慮してくれる会社で働きながら、クラウドファンディング(CF)で遠征費など活動費の確保を試…

 カヌー・スプリント競技で世界の舞台で戦ったこともある原綾海(あやめ)選手(26)が、故郷の島根県出雲市でスポンサーに頼らずに競技を続けている。練習に配慮してくれる会社で働きながら、クラウドファンディング(CF)で遠征費など活動費の確保を試みている。

 原さんは県立出雲農林高校でカヌーを始めた。乗りこなせるまで1カ月かかったが、平日は自主練習も含めて1日計7時間に及ぶ練習を続けた。

 1人乗りのシングルで好成績を残すようになり、3年の時、インターハイの500メートルで優勝。国体・少年女子では200メートルと500メートルを制した。世界ジュニア選手権にも出場し、アジアジュニア選手権では500メートルで2位になった。

 強豪の武庫川女子大(兵庫県西宮市)に進学。U23の日本代表に選ばれ、U23の世界選手権では500メートルで準決勝に進出した。

 大学はスポーツ推薦で入学し、授業料などで優遇措置を受けてきた。そのため、卒業後もスポンサーから資金提供を受けることに抵抗があったという。

 「働いたお金で続けたい」。2021年春に卒業後、アルバイトをしながら競技を続けた。だが、目指していた東京五輪出場はかなわなかった。いったんは引退を決め、卒業後も指導を続けてもらっていた大学時代のコーチに伝えた。

 だがコーチから、「君なら日本を引っ張っていける」と、翻意を促された。すでに家族に島根に帰ると話していたため、郷里で練習に励む道を選んだ。

 帰郷後、母校の出雲農林高校の好意で同校の筋トレ器具や艇庫を使わせてもらい、再び地元の神戸(かんど)川でパドルをこぎ始めた。今春、出雲市の食品関係の会社に入社。退社時間を午後4時15分にしてもらい、平日は4時間近く練習してきた。

 帰郷して間もなく2年になるが、「大会でも準決勝敗退が増えている。カヌーのレベルを上げ切れていない」。不調の一因は練習の質が落ち、時間が取れていないことではないかと考え、会社に頼んで勤務時間を短くしてもらった。

 学生時代は、「お前ならできる」と励ますコーチに応えようと練習に打ち込んだ。「人のためにカヌーをしてきたが、今はカヌーは楽しいと思う気持ちが芽生えてきている」。当面の目標は「来年の日本選手権決勝でしっかり戦うこと」。

 原さんは、明治安田生命主催の「地元アスリート応援プログラム」に参加していて、朝日新聞社のCFサイト「A―port+」(https://a-portplus.asahi.com/feature_pages/meijiyasuda)で活動費(目標30万円)への支援を呼びかけている。(石川和彦)