コマスポ編集部 インタビュー(全2回)後編・大学駅伝2年連続三冠 展望 いよいよ大学駅伝のシーズンが始まった。昨年度は駒澤大が圧倒的な力を見せ、出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝を制し、史上5校目の学生駅伝三冠を達成。そして、今シーズンもそ…

コマスポ編集部 インタビュー(全2回)
後編・大学駅伝2年連続三冠 展望

 いよいよ大学駅伝のシーズンが始まった。昨年度は駒澤大が圧倒的な力を見せ、出雲駅伝、全日本大学駅伝、箱根駅伝を制し、史上5校目の学生駅伝三冠を達成。そして、今シーズンもその強さは衰えを知らない。初戦の出雲駅伝を大会新記録で優勝し、2年連続の三冠に向けて好スタートを切った。

 そんな学生ランナーに近い目線、立ち位置で取材をしているのが大学新聞の記者だ。駒澤大には、全面カラーの新聞やオンラインで情報発信を行なっている駒大スポーツ新聞、通称「コマスポ」がある。コマスポ編集長の中西真雪さん(3年)、陸上班チーフの宮澤希々さん(3年)、次期陸上班チーフの大塩希美さん(2年)の3人に、今季の駒澤大の展望や見どころを聞いた。(※肩書きは10月9日時点)



コマスポ編集部の編集長・中西真雪さん(中央)、陸上班チーフ・宮澤希々さん(左)、次期陸上班チーフ・大塩希美さん(右) photo by Kitagawa Naoki

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【相性が悪いと思っていた出雲駅伝の勝因】

ーーまずは出雲駅伝で優勝し、好スタートを切りました。

中西真雪・編集長(以下、中西) 駒澤は前回王者ですが、出雲に関していえば、私は駒澤のほうがチャレンジャーなんじゃないかって思っていました。三冠を成し遂げた昨年度は10000mの平均タイムもトップでしたが、今年はそうではなかったので。

宮澤希々・陸上班チーフ(以下、宮澤) 中央と國學院が怖かったですね。出雲を走るのは6人ですが、この2校は強い選手の名前を挙げていくと、ぱっと6人が出てくる。青山学院は5000m13分台の選手が多く、層は厚いですが、ここ最近の駅伝ではなかなか力を出しきれない印象がありました。

大塩希美・次期陸上班チーフ(以下、大塩) 駒澤のメンバーは順当だったと思います。でも佐藤圭汰選手はアジア大会があったので、出雲のメンバーに入ったのはびっくりしました。まさか本当に走るとは思っていませんでした。

宮澤 正直に言って、1区の篠原倖太朗選手が区間賞だった時点でこれはいけるなって感じました。そこからの流れもよかった。勝因は、誰も外さずに走れたところだと思います。駅伝ではひとりぐらいは外してしまう選手がいると思うんですけど、昨年の出雲から駒澤は誰も外していないんですよね。期待どおり、もしくは、期待以上の走りができている選手が多い。それが他の大学に負けない理由だと思います。

ーーミスがないレースが続くと、プレッシャーを感じそうなものですが、皆さん、メンタルが強い。

宮澤 そう思います。私たちが取材をしていても、皆さん、あまり緊張もしないので、もともと度胸があるんだなと感じていました。

中西 駒澤はどの大学も成し得たことのない2年連続三冠を目指していますが、出雲が一番難しいというか、相性が悪いレースだと思っていました。スピード駅伝ですし、区間数も少ないので、他大学もメンバーをそろえやすい。だから、出雲を勝てたことで、再び三冠できる可能性はぐっと高まったと思います。全日本は駒澤にとって相性のいい大会ですし、箱根こそ、駒澤の層の厚さを発揮できる大会だと思っています。



編集長であり陸上担当でもある中西さん photo by Kitagawa Naoki

宮澤 去年は田澤廉選手(現・トヨタ自動車)の存在が大きかったですが、去年に比べて、誰かに頼るっていうことがないチームになってきているのかなと思いました。2年生の山川拓馬選手と伊藤蒼唯選手は今年の箱根駅伝の活躍で、山のイメージがかなりついていると思うんですけど、上り・下りではなく、平地でもちゃんと走れるところを出雲では見せてくれました。これはかなり大きな収穫だと思います。

【藤田監督の色と大八木イズムの継承】

ーー今季は大八木弘明監督(現・総監督)から藤田敦史監督に交代しました。

宮澤 藤田さんは本当にいろいろ考えていらっしゃるなと感じます。この選手はこういう点が弱いとか改善していったほうがいいとか、取材にわかりやすく答えてくれます。

中西 すごく論理的だよね。

宮澤 そう。藤田さんは、自分の気持ちを明確な言葉にしてくれる。駅伝でもそういうふうに冷静に考えてレースに臨むのかなと思っています。大八木さんは言葉に熱が帯びている。もちろんいろいろ考えているのは同じですが。同じ系譜ではあるけれど、ふたりは対照的だなとも思います。でも、チームとしては、昨年度から変わったという印象は全然ないですね。選手からも、何かが変わったっていう声は本当に聞きません。



陸上班チーフとして取材のアクセスや宿泊、当日の段取りなどの調整も行なう宮澤さん photo by Kitagawa Naoki

大塩 どのレースにも大八木さんはいらっしゃいますからね。午前は一関(岩手)にいたはずなのに、午後には神奈川の日体大(の競技場)にいたこともありました。

中西 トラックの反対側にいても、大八木さんがいらっしゃるのはわかります。声量がすごいですから。勇退されて総監督になっても、熱量を注ぐものが陸上競技なんですね。

宮澤 藤田さんも、ここぞという時は、大きい声で言葉をかけています。「ここで絶対に離れちゃダメだ!」とか。そこはやっぱり"大八木イズム"なんですね。三冠達成報告会で藤田さんが「大八木の熱意を引き継ぎます」っておっしゃっていたのが印象的でした。昨年度のチームは駒澤史上最強でしたが、「今年は『2年連続の三冠を』ではなく、昨年度の最強のチームをどう越えていくか、史上最強を更新できるか、と考えている」とおっしゃっていました。そういう意味では、今年度も駒澤は挑戦者です。



昨年度、大学駅伝三冠を達成した際に発行したコマスポの号外 photo by Kitagawa Naoki

【推し選手の活躍を見たい、が入学動機?】

ーー中西編集長から「層が厚い」という言葉がありました。皆さんが期待をかけている推しの選手を教えていただけますか?

中西 当たり前なんですけど、取材をしていると、どの選手も本当に頑張っていますし、いろんな思いを持っていたり、いろんなことを考えていたりするのがわかります。走ってほしい選手がたくさんいすぎます。区間が足りない(笑)。

大塩 私は長野県出身なんですが、高校の時は陸上部のマネージャーをしていて、同じ地区にいた山川拓馬選手(上伊那農業)を高校総体の地区予選からずっと見てきました。山川選手が活躍する姿を見ていきたいというのも、コマスポに入った動機のひとつにありました。1年目からの活躍には、高校の同級生とも盛り上がりました。あとは、佐藤圭汰選手ですね。じつは、どこの大学を受験しようか迷っていた時に、佐藤選手が駒澤に入学を決めたっていうニュースを聞いて、私も駒澤を受験することにしたんです。



次期陸上班チーフの大塩さんは、陸上をはじめスポーツへの愛を語った photo by Kitagawa Naoki

ーー佐藤選手が他の大学に進学をしていたら、別の大学に入っていたかもしれない。

大塩 そうかもしれません(笑)。それで、受験生だった高校3年の箱根駅伝の時にコマスポの存在を知って、駒大に入学したらコマスポに入ろうと思いました。

宮澤 なるべく応援している選手を取材できるように担当を決めているんです。

中西 やっぱり応援している選手に関する知識量は豊富だと思いますから。知識量があるほど、深いことを聞けるというのもあるので。

ーー中西編集長、宮澤チーフの推し選手は?

中西 私はずっと篠原倖太朗選手です。1年生の出雲駅伝のあとに取材をした時に、すごく丁寧な対応をしてくれました。気持ちが強くて、いろんなことを考えている選手です。でも、これほどの選手に成長するとは、正直思っていませんでした。入部した時は9番目の選手だったのに、いまやエース級ですから。エースとしてのこだわりがめちゃめちゃ強いんですよ。どの取材でも「自分は駒澤のエースなので」って絶対言うんです。それくらいの気持ちがあるからこそ、強いんだろうなと思います。田澤廉選手が抜けた穴は大きいですけど、各学年のエース、鈴木芽吹選手、篠原倖太朗選手、佐藤圭汰選手の3人を中心に、みんなで田澤廉選手の穴を埋めていけると思います。

宮澤 私は、4年の安原太陽選手です。2年の時の全日本で5人抜きの走りがカッコよすぎました。こんなにも気持ちの入った走りをする選手なんだと思い、そこから応援したくなりました。どのレースを見ても、気持ちの強さを感じますし、取材の対応も丁寧。言葉の使い方もきれいで、話もスムーズでしっかりとした人だなと感じます。安原選手は2年時での初めての箱根駅伝で失敗しちゃって(3区16位)落ち込んでいたんですけど、今年4月23日の誕生日に日本学生個人選手権5000mで優勝し、FISUワールドユニバーシティゲームズ出場を決めました。そして、その舞台では銀メダルを獲得しました。自分で決めたことをやり遂げている姿を見て、応援している甲斐があったと思いました。



出雲駅伝の取材現場でカメラを構える宮澤さん photo by Wada Satoshi

【偉業に向けて脅威となるチームとは】

ーーあらためて全日本、箱根で対抗になってくるのはどの大学でしょうか?

中西 やっぱり中央が一番の脅威ですね。

ーー出雲は7位という結果でしたが。

宮澤 吉居大和選手が不出場だったのが大きかったと思います。なので、本当の力を出せたわけではなかった。それに、出雲駅伝前の中大記録会では、1年生の本間颯選手と柴田大地選手が28分台をマークするなど、かなりいい記録が出ていました。選手層が厚いので、出雲で7位だったからといってあなどれないですね。あとは國學院。伊地知賢造選手、平林清澄選手、山本歩夢選手の3人は、駅伝でもトラックでも結果を出せる選手。勝負強さという点では、駒澤の選手に勝る部分もあるのでは、と心配になることもあります。

中西 青学はあまりマークしてこなかったんですけど、とくに箱根駅伝には合わせてくるのがうまいチームなので、恐怖は感じます。

宮澤 でも、出雲を見ると、ちょっと心配な部分もあるのかなっていう気がしましたが......。出雲では創価が2位、城西が3位でしたが、ここまでの順位だとは思っていませんでした。でも終わってから、いろいろ分析していると、それくらいの力はあったのかなと思いました。とくに創価は、2、3年生に強い選手がいっぱいいますから。



自校のチームだけでなく他大学の戦力についても分析した photo by Kitagawa Naoki

ーー身内だからこそ、ライバル校が強そうに見えるんでしょうね。

宮澤 でも、きっと大丈夫! 毎回心配になるんですけどね。大丈夫だって言い聞かせています。

中西 私たちが心配しても仕方ない!(笑)

前編<駒大スポーツ新聞「コマスポ」の奮闘 お金も時間も足りないけど...「スポーツが好きだから」「青春を追いかけるのが青春」>を読む