栃木県の那須エリアを中心に、那須高原ロングライド2023が9月に開催された。今年で11回目の開催となる。エイドで提供されるグルメの豪華さや、おもてなしの温かさから人気の高い大会だが、今年は新たに3つのコースを新設。走行地域は県境をまたぎ、福…

栃木県の那須エリアを中心に、那須高原ロングライド2023が9月に開催された。今年で11回目の開催となる。
エイドで提供されるグルメの豪華さや、おもてなしの温かさから人気の高い大会だが、今年は新たに3つのコースを新設。走行地域は県境をまたぎ、福島県まで伸び、より広域で連携し、地域全体のさらなる魅力を発信する大会となった。



今年は那須高原を飛び出し、福島も走った「那須高原ロングライド2023」

コースは、全部で8つ。これまで、もっとも人気が高く、コロナ禍前には、受付開始後1時間以内に定員に達していた「那須高原ヒルクライム」コースは、およそ100kmを走り1886mの標高差を上る。このコースをベースに、距離や上りを抑えた70、60、40kmコースが設定されている。「那須どうぶつ王国」まで行き、現地で待つ自転車に乗らない仲間と合流して、バーベキューを楽しむ「どうぶつ王国BBQ満喫50」のようなユニークなカテゴリーも。



地元の皆さんが楽しく運営してくれるエイドも魅力!

今年、福島県の西郷村や白河市まで足を伸ばし、100kmで1941mの標高差を走る「白河・甲子高原ヒルクライム」が新設され、初年度から「那須高原ヒルクライム」に迫るエントリーを集めたという。



美しいエリアを走る新設の「白河・甲子高原ヒルクライム」



地元の味覚がふるまわれた

その他、白河の関方面に向かい、エイドで白河名物のフードやドリンクを楽しめる「白河ラーメン65」、生乳生産量本州第1位を誇る酪農地帯を走る「那須塩原MILK ROAD60」の3コースも新たに設定され、どのカテゴリーも順調に参加者を集めていた。



「白河ラーメン65」には、ラーメン大好きな面々がエントリー!



小峰城。「白河ラーメン65」は、歴史探訪のコースでもある



乳製品がふるまわれた「那須塩原MILK ROAD60」



美しい道を抜けていく「那須塩原MILK ROAD60」

大会の朝、早くからスタートゴールとなる那須町の余笹川ふれあい公園に参加者が集まってきた。前日に雨が降り、朝から会場は深い霧に包まれており、肌寒かった。だが、聞けば、那須岳方面は快晴で、路面も乾いているそうだ。見晴らす雲海の真下に、ちょうどスタート地点があるのだとか。上っていけば美しい景観が望めると聞き、参加者の気持ちも上向きになった。



時差スタートながら、多くの参加者が早朝から会場に足を運んだ

この大会は、ゲストが豪華なことでも知られている。公式レース参戦のため、例年よりやや少なかったものの、宇都宮ブリッツェン、さいたま那須サンブレイブ、キナンレーシングチームからロード選手が、地元の日本競輪選手会栃木支部所属の選手らが顔を揃えた。



豪華なゲストライダーが最前列に揃い、最初にスタートセレモニーを行った

少々の雨が降り始め、気温も低く、体を冷やす可能性があったため、カテゴリーごと時間をかける予定だったスタートもコンパクトにし、予定を前倒しにして運営された。
このスタートのタイミングから、地元の会社のソーセージや牛乳がふるまわれるなど、他の大会にはないおもてなしが始まった。宿の朝ごはんをおいしくいただき、ここでふるまいを食べて、エイドでさらに地元グルメをいただく、という、ほぼ食べ続けになるのだが、上級クラスにはしっかり長距離と獲得標高が用意されており、おいしくグルメを楽しめる設定になっている。



スタート前からフルサイズのソーセージがふるまわれ、悪天候ながら笑顔に



地元の牛乳のふるまいもスタート! この日、エイドやゴールを含め、数種類の牛乳を味わえるよう設定されていた



牛乳大好きな参加者も!(彼は牛乳とともに無事完走した)

スタートする間に、天気は好転し、気温も上がり、スタート順が後半のカテゴリーは、真夏のような天候の下でコースに飛び出して行った。
筆者は、最終スタートの40kmコースに参加。もっともやさしいカテゴリーではあるが、それでも440mの標高差が含まれている。ここには、冬のシクロクロスの全日本タイトルホルダーの小坂光選手(宇都宮ブリッツェン)や、競輪から、那須町在住の佐藤悦夫選手、山口貴弘選手、荒牧聖未選手がゲストとして加わっており、ファミリーの参加も多く、多様で華やかなカテゴリーとなった。



スタートからしばらくは上り基調ではあるが、美しい景観が続く

コースは、交通量の多いルートや、勾配のきつい箇所を巧みに回避し、農道を行くなど、心和み美しいルートが連なっていた。このコースは前半に上りが集中しているのだが、急勾配は現れず、景観に優れた道が続くので、ビギナーや子どもたちも楽しそうに走っている。走る方はありがたいけれど、看板の掲出や、立哨スタッフの配置など、決して容易ではなかったことと思われる。このような参加者目線の配慮が、この大会の人気の理由の一つであると言えるだろう。



楽しく走る参加者

のんびりと走って、第1エイドに到着。この大会では、エイドが那須高原エリアで15、ラーメンエリア限定でプラス3、西郷村方面でプラス3、計21ものエイドが同時に運営されている。通常のサイクリングイベントでは、ありえない話である。この40kmの中でも、3つのエイドに寄れるように設定されているのだ。
この第1エイドまでで、ある程度の上りを終えたことになり、少々ほっとしながら自転車を停める。汗だくで、のどはカラカラだ!



天気が好転し、汗だくで冷たいドリンクを受け取る。幸せな一瞬だ



那須修道院の「トラピストガレット」がふるまわれた



ここでも地元の牛乳がふるまわれていた

キンキンに冷えたペットボトルをいただき、あまりの美味しさに、ほぼ1本、この場で飲んでしまった。ここではバナナや、グリコの牛乳、お土産で大人気の那須修道院の「トラピストガレット」などが惜しげもなく提供されていた。まだ上りの途中であり、気は抜けない。ここでは参加者もあまり長居をしすぎないように、短い滞在で立ち去っていたようだ。

朝のどんよりとした雨模様が嘘のような晴天の中、再びスタート。
朝は防寒具の話が出ていたが、今や日焼け対策が深刻だ。空気が今年は9月に入っても、夏日が続いていることもあり、盛夏のような青々とした景観が広がっていた。陽の光に輝く緑が、目にまぶしい。



少々「やりすぎ」なんじゃないか、という冗談が聞こえてきたほど、天気が好転。一気に太陽が照りつける盛夏のライドになった

ここからも淡々と上り基調。美しい緑に彩られた道をゆく。「フラワーワールド」を越えれば、上りエリアは終了! もちろん、細かいアップダウンはあるが、基本的に下り基調となる。一気に、気持ちが軽くなった。上りが苦手な面々が多くエントリーしていることもあり、皆、ホッとした表情を浮かべていた。「ここからは下りですね!」と声を掛け合いながら進む。



お子さん2名を乗せたトレーラーで参加するファミリーも! ここまでくれば、後は下り基調だ

次のエイドに駆け込むと、ここでは、皆がややまったりと過ごしていた。ゲストライダー4名も笑顔で参加者と交流している。ここでは冷たいドリンクと、「冷やし焼きいも」がふるまわれていた。地元のサツマイモを焼いて、冷やしたもののようだが、驚くほど甘く、スイーツのよう! 冷たさも、またありがたく、ペロリと食べてしまった。



地元のお子さんも手伝ってくれ、雰囲気のよかった第2エイド



ここでは「ひやしイモ」がふるまわれた。やわらかく、甘くて、スイーツのようだった

かなり暑かったこともあり、少し休憩して、再度コースへ。
下り基調とあって、かなり快適だ。次のエイドまでは5kmほどとあって、あっという間に着いてしまった。
3つ目のエイドは「那須高原小学校」。40kmコースの中では最大のエイドで5つのカテゴリーが共有する。すでに先行していたカテゴリーの参加者が「食事」を楽しんでいた。



3つ目のエイドは「那須高原小学校」



サイクリングイベントのエイドステーションに、お品書き??

ここではなんと「お品書き」が掲出されており、「食事」の雰囲気なのである。メニューは「赤身ステーキ丼」「和牛スパイスカレー」「那須御用卵の親子丼」「ヤシオポークのチャーシュー丼」。ほぼレストランである。ここから一品を選ぶのだが、なかなか決められない参加者も多かったようだ。筆者は悩みに悩んで、ロイヤルなたまごを使った親子丼をセレクト。



大好評だった「和牛スパイスカレー」。エイドに和牛のメニューが出るなんて!



「那須御用卵の親子丼」。たまごはとろとろ、お肉はプリプリ。味付けも絶妙だった



野菜とフルーツを添えて、定食に

小ぶりな丼には、つやつやしたごはんと、とろとろの卵、鶏肉、玉ねぎが乗っていた。プリプリした新鮮な鶏肉も、コクのあるたまごもおいしくて、レストランクオリティーだ。さらに、冷やしきゅうりや梨、食後にはかき氷もいただける。
通常40km程度のカテゴリーのライドでは、軽いお菓子とバナナ程度のことも多いのだが、40kmでこのボリューム! 子どもたちも、那須のファンになったに違いない。ちなみに、消費カロリーより摂取カロリーの方が明らかに高いが、そこは置いておこう。短いカテゴリーの参加者は、もうコース内最後のエイドであり、ここでゆったりと時間を使っていた。



食後にはかき氷を!



広々とした校庭の木陰で、ゆったりと休憩

名残惜しくも再スタート。ここからは明らかな下り基調だ。美しい田園風景や林の間を抜け、少々珍しい路面表示を撮っていたら、少し先の交差点を恐竜が歩いている。恐竜???



美しい田園風景の間を抜けていく



視線の先に恐竜が!



まさかの侍と恐竜?

ここはコース内のいったんフィニッシュに近くなるスポットで、長距離カテゴリーはここを通過後、小周回に入って戻ってくる。遅れて、制限時刻までに余裕がない参加者は、ここでショートカットが宣告される。その悲しい通告をなごませるために、例年「アシキリ侍」が待機しており、「斬られた参加者」はゴールに直接向かわなければならないのだが、つい笑ってしまい、悲劇にはならないのだとか。今年はその侍に恐竜が加わったということだった。侍と恐竜と参加者との交流を楽しく眺めたあと、筆者もゴールに向かった。



ショートカットポイントを通過すれば、また美しい実りの景観が広がる

ゴールでは宇都宮ブリッツェンの「ブリッツェンラバーズ」のMOEさんらが迎えてくれて、この日のライドは終了。ゴールエイドとして、冷たい牛乳などをいただいた。



ゴールでは冷えた牛乳がふるまわれた。甘くて、ほどよいコクがあって、最高の味。買って帰りたい

ゴール地点には、すでに多くの参加者がたどりついており、さらに次々とフィニッシュし、にぎわっていた。多くのキッチンカーが並んでおり、かき氷などには長い列を作っていた。
実行委員会副委員長より、来年の大会に向けての熱いスピーチもあり、楽しい雰囲気のまま、大会はクローズした。



ショップの仲間で参戦された皆さん。女子メンバーを先頭に爽快に走り抜ける

これだけの規模のライドイベントが、地元の方々のみの手で毎年開催され、しかも、さらに広域に広がっているのは、驚くべきことだろう。今年は走行エリアが広がり、エイドや立哨スタッフ人員が限られる中で、配置が極めて難しかったようだが、全員がしっかりモチベーションを持って複雑な役割をこなしていた。さらにコース誘導すら、全員から歓迎とおもてなしのムードが漂っており、地域としてのプロフェッショナルに感服した。



ヒルクライムとミルクロードの参加者が利用した板室エイドにて。運営も、参加者も笑顔なのが、このイベントの大きな特徴だ



感想を聞けば、ほとんど「最高だった!」の答えが返ってくる。全力で楽しんだ1日だった

那須高原ロングライドは、来年も、もちろん開催予定とのこと。開催時期が変わる可能性もあり、興味のある方は、来春ごろ、開催日を確認してみてほしい。子どもからベテランまで間違いなく楽しめる日本トップクオリティのライドイベント。要チェックである。

画像:那須高原ロングライド実行委員会(M-Wave)、編集部