特別全国障害者スポーツ大会「燃ゆる感動かごしま大会」が28日に鹿児島県内で始まる。大会は2001年に始まり、県内開催は初めて。身体や知的、精神に障害がある約3640人の選手が30日までの3日間、陸上や水泳など14の正式競技で練習の成果を披…

 特別全国障害者スポーツ大会「燃ゆる感動かごしま大会」が28日に鹿児島県内で始まる。大会は2001年に始まり、県内開催は初めて。身体や知的、精神に障害がある約3640人の選手が30日までの3日間、陸上や水泳など14の正式競技で練習の成果を披露する。開会式は28日午前、鹿児島市の白波スタジアムで行われる。

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 サッカー元日本代表の大迫勇也選手の母校でもある鹿児島城西高校(鹿児島県日置市)は、ほかのスポーツも盛んで、かごしま国体では陸上部員が優勝した。全国障害者スポーツ大会(障スポ)かごしま大会にも知的障害がある9人を送り出す。特別支援学校ではない普通の高校に、なぜ在籍しているのだろうか。

 20日午後、同校の調理室で普通科共生コース3年の約30人が唐揚げとポテトフライの調理を始めた。かごしま大会のフライングディスク競技に出場する中馬大介さん(18)は、食材を運んだり皿を拭いたりしていた。

 共生コースは1999年に設けられた。定員30人で軽い知的障害の生徒を受け入れている。小中学校に設けられている特別支援学級の高校版だ。

 一般入試では合格が難しいが、生活訓練や実習が中心の養護学校(現在の特別支援学校)にはなじまない子のいる県内の保護者らが90年代後半、高校での受け入れなどを求めて署名活動を行った。

 公立高校は受け入れなかったため、社会福祉科がある鹿児島城西高を運営する学校法人日章学園(宮崎市)に要請した。普通高校が、知的障害がある子を対象にしたコースを設けるのは県内で初めてだった。法人はその後、宮崎市の日章学園高にも共生コースを設けている。

 知的・発達障害児(者)の権利擁護に努める全国手をつなぐ育成会連合会(東京)によると、「障害者を個別に受け入れる例はあるがコースを設けている高校は全国的にまれ」という。

 共生コースの授業は、国語や数学、公共などの科目のほかに調理や園芸、ワープロなどの実習がある。卒業後、一般企業に就職する生徒や障害者就労支援事業所に通う生徒のほか、専門学校に進む生徒もいる。

 中馬さんは、共生コースの生徒を対象にした「ゆうあいスポーツ部」に所属。同部はサッカーやバスケットボールなどのほか、かごしま大会の実施競技にも取り組む。

 中馬さんは今年1月、同高を訪れたフライングディスクの指導者に筋の良さを見込まれた。飛距離を競うディスタンスの練習を重ねて5月の県大会で優勝し、県代表に選ばれた。休日は自宅近くの公園で自主練習する。飛距離はスマホのアプリで計測。50メートル以上飛ばすという。

 陸上立ち幅跳びに出場する瀬戸口縁(えにし)さん(18)は鹿児島城西高を卒業し、同校に併設された福祉共生専攻科に在籍している。高校に入学してから競技を始めた。長身を生かしたジャンプが特徴。コロナ禍による延期もあり、今回が初出場だ。

 今月3日、かごしま国体の選手とともに学校の激励会に出席した。ステージで隣にいた立迫大徳(たちざこひろのり)選手は国体少年男子共通800メートルで優勝。瀬戸口さんは「刺激になっています」と話す。

 ほかに7人が卓球やサッカー、水泳などに出場する。瀬戸口さんの目標は上位入賞。中馬さんは「優勝をめざします」と誓った。(宮田富士男)