日本バスケットボール協会の男子代表強化検討委員会(委員長=島田慎二・Bリーグチェアマン)が、新たな規定として設けた代表招集に関する罰則が波紋を呼んでいる。正当な理由なく辞退した場合、リーグ戦3試合の出場停止を科すというものだ。「代表引退」…

 日本バスケットボール協会の男子代表強化検討委員会(委員長=島田慎二・Bリーグチェアマン)が、新たな規定として設けた代表招集に関する罰則が波紋を呼んでいる。正当な理由なく辞退した場合、リーグ戦3試合の出場停止を科すというものだ。「代表引退」を公表した選手も招集される可能性があるという。選手もSNSで疑問を呈した規定変更の意図を、島田氏に聞いた。

 ――代表招集を拒んだ場合に出場停止という規定を定めた背景と理由を教えてください。

 そもそも、Bリーグの選手は代表に呼ばれたら参加するのがルール(Bリーグ規約第80条、協会から各カテゴリーの日本代表に選出された場合、練習や試合に参加することは義務)なんです。これは、Bリーグ創設時からある規約です。

 でも現実は(代表に)出る、出ないという(協会とクラブ・選手との)やりとりがずっとあった。それをあいまいにやり過ごすのがバスケ界のスタンダードでした。

 1年前から進めてきた検討委の議論では、代表ヘッドコーチ(HC)や強化側が考えるベストメンバーを国内外問わず選べるようサポートすることが我々にとって大事でした。強制力を持たせることで「呼ばれたら代表に行く」という前提を再確認したかった。

 過去に(選手やチームが)代表に行かない、行かせたくないということがあり、クラブ同士が疑心暗鬼になっていた部分があった。代表を出したチームとそうでないチームで不公平感が出ないように、罰則という形で公平性を担保しようとしたわけです。

 国際バスケットボール連盟(FIBA)には同様のケースで10日間の出場停止という規定があります。10日間はその時々の試合日程によってペナルティーがあいまいになるので、3試合の出場停止にしました。

 ――ただ、その意図はあまり外に伝わっていません。

 いまどき強制的に(代表に)行かせたり、拒否権がなかったり、罰則をかけたりするのはどうなんだ、と批判が出ました。でも、そもそものルールが守られていなかったという事実があったんです。

 ワールドカップ(W杯)で日本代表が活躍した今でこそ、みんなが参加したがるような代表になっているけれど、少し前まではそうではなかった。歴代の代表チーム、HCにとって大きな問題でした。そこに踏み込んだけど、真意がうまく伝わらなかったという認識です。

 ――「代表引退という概念はない」という発言について。代表で長年戦ってきた選手が、自分のキャリアの方向を決めることについては容認していいのでは。

 たとえば渡辺雄太選手や富樫勇樹選手が、勇気を持って代表引退を言うことは否定しません。

 ただ、日本のBリーグの選手は規約上、その時の代表HCがどうしてもこの選手が欲しいと招集した場合はルール上参加しなければいけない。義務が生じているわけなんです。そういう意味で会見で「拒否権はない」「代表引退という概念はない」という言い方をしました。

 でも実態として、HCや技術委員長らがチームや選手と確認し、リスペクトを持って納得すれば、招集しないという判断をすることは当然あると思います。

 一方で難しいのは若手で代表に行きたくない、リーグ戦だけ出ればいい、という選手がいた場合です。そうするために若手選手が「代表引退です」と言って、チームがプロテクトするようなことがあれば、代表が機能しなくなるわけです。

 だから基本的には規定に沿って招集することを前提にした上で、功労者のような選手に対しては協会がコミュニケーションをしっかり取るという部分はあっていいのではないか、と考えています。

 ――その時々の代表HCによって、招集方法に違いも出てくると思います。

 トム(・ホーバスHC)は分かりやすいですよね。「いくらうまくてもファイトできない選手はいらない」と言っています。コート上の姿勢だけでなく、日本代表に本気で臨むというメンタルがないといらない、と。トムはそういう選手を好むので、代表を拒否する選手はそもそも招集しないかもしれない。

 でも、HCによって色々な選び方は出てくると思います。若手、中堅、ベテランで扱いは違ってくるだろうし、一概には言えない部分はある。今回はあくまで前提を整えさせて頂いたということです。