フィギュアスケート2023−2024シーズン GPシリーズ展望 女子シングル編ジャパンオープンで高得点を出した坂本花織。GPシリーズでの演技にも注目だ【吉田陽菜はトリプルアクセルがカギ】 スケートアメリカ(10月22〜24日)から始まる、2…

フィギュアスケート2023−2024シーズン GPシリーズ展望 女子シングル編



ジャパンオープンで高得点を出した坂本花織。GPシリーズでの演技にも注目だ

【吉田陽菜はトリプルアクセルがカギ】

 スケートアメリカ(10月22〜24日)から始まる、2023−2024シーズンのフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ。GPファイナル(12月7〜10日)出場6枠をかけた女子のし烈な戦いは、昨季優勝候補として臨みながらGPファイナル初制覇を逃した坂本花織(23歳/シスメックス)を中心に展開しそうだ。

 第1戦のスケートアメリカは、昨季世界選手権3位のルナ・ヘンドリックス(23歳/ベルギー)と4位のイザボー・レヴィト(16歳/アメリカ)が対決し、210点台の優勝争いになりそうだ。

 レヴィトは9月のチャレンジャーシリーズ・ネーベルホルン杯では、フリーで回転不足やスピンの取りこぼしなどの細かいミスが続いて得点を伸ばせず、合計は198.79点にとどまった。だが、10月7日のジャパンオープンではミスを修正してきていた。その後の修正がうまくいけば、昨年大会の得点を超えるスタートになりそうだ。

 一方、ヘンドリックスはチャレンジャーシリーズに出場していないが、フリーで争うジャパンオープンでは回転不足のミスひとつだけで、坂本に次ぐ2位になった。ショートプログラム(SP)は安定感がある選手だけに、合計210点台で発進しそうだ。

 日本勢は、吉田陽菜(18歳/木下アカデミー)と河辺愛菜(18歳/中京大)、千葉百音(18歳/木下アカデミー)がどこまで食い込めるか。吉田は、SPでトリプルアクセルを成功させられれば気持ちが乗り、上位争いに割って入れるかもしれない。

【坂本花織は順調な仕上がり】

 次のスケートカナダ(10月27〜29日)には坂本が出場。9月のオータムクラシックではSPで好発進ながら、フリーは後半にミスを重ねていたが、ジャパンオープンはフリーを修正し、ノーミスの滑りで149.59点を獲得している。

 さらに翌週の全兵庫選手権はは222.39点でで優勝と、昨季に比べて仕上がりの早さを見せている。体調さえ合わせられれば、合計230点前後の発進になるだろう。

 日本勢は他に、昨季スケートカナダ優勝の渡辺倫果(21歳/TOKIOインカミラ・法政大)と松生理乃(19歳/中京大)が出場するが、渡辺は10月のフィンランディア杯で2位に入ったものの合計180.36点と出だしはよくない。GPシリーズはこの1試合だけで存在感を見せたい松生も、9月の中部選手権はSP、フリーともにミスが出て合計187.44点と伸び悩んでいる。

 そんな状況で坂本に続く可能性があるのは、ロンバルディア杯3位、オンドレイネペラメモリアルで200点台に乗せて優勝したキム・チェヨン(16歳/韓国)だろう。ジャンプは細かいミスもあるが、スピンとステップはすべてレベル4と取りこぼさない安定感がある。今季は210点台まで伸ばしてきそうな気配がある。

 アメリカ勢では2022年世界ジュニア3位のリンジー・ソーングレン(17歳/アメリカ)も注目の選手。シニア移行の昨季は結果を残せなかったが、今年8月のクランベリーカップで優勝。ジャンプの細かいミスを修正すれば、200点台に乗せる可能性大だ。渡辺も松生も本領発揮なら届かない得点ではないだけに、し烈な表彰台争いになる。

【2季ぶり復帰の樋口新葉に注目】

 続くフランス大会(11月3〜5日)で中心になるのは、世界選手権2位のイ・ヘイン(18歳/韓国)とレヴィトになる。イは自身シーズン初戦のオンドレイネペラメモリアルでキム・チェヨンに次ぐ2位でSP、フリーともジャンプでミスがあった。

 昨季も仕上がりは遅く、実力を発揮し始めたのはシーズン後半の四大陸選手権からだった。だが、昨季に比べると初戦の得点は高い。世界選手権2位になった自信もあるだけに、200点台に乗せてレヴィトと優勝争いをしてきそうだ。

 日本勢は千葉に加え、昨季のGPシリーズのフランス大会とNHK杯で3位になった住吉りをん(20歳/オリエンタルバイオ・明治大)と、2シーズンぶりの復帰となる樋口新葉(22歳/ノエビア)が出場する。

 ともに東京選手権に出場して、住吉が2位、樋口は4位というシーズンイン。そこからどこまで仕上げてきているか、カギになる。

 他には、北京五輪に出場した昨季ヨーロッパ選手権優勝のアナスタシア・グバノワ(20歳/ジョージア)も出てくる。今季のチャレンジャーシリーズ・ロンバルディアは優勝、フィンランディア杯も3位と積極的に試合をこなしている。その成果がどう出てくるか。

 また、昨季世界選手権8位のキミー・レポンド(17歳/スイス)も伸びてきている選手のひとりだ。今季のネーベルホルン杯は2位。170センチの身長を活かした滑りができれば、さらに伸びてくる可能性も秘める。

【三原舞依の優勝争いに期待】

 第4戦中国杯(11月10〜12日)は、順当にいけばヘンドリックスがGPファイナル進出決定に挑む大会になるが、ここから三原舞依(24歳/シスメックス)と四大陸選手権2年連続表彰台のキム・イェリム(20歳/韓国)、さらにはブレイディ・テネル(25歳/アメリカ)も出場してくる。

 三原は近畿選手権の棄権以来、試合に出ていない不安はあるが、体調を戻してくれば優勝争いをする力はある。

 昨季、NHK杯優勝でGPファイナルに進出したキム・イェリムは、 今季のチャレンジャーシリーズ・フィンランディア杯は優勝していて、表彰台争いには絡んできそう。また、昨季は不調だったテネルも、10月の上海トロフィーで優勝と復調の気配を見せている。

 エスポーグランプリ(11月17〜19日)は坂本とキム・チェヨンがスケートカナダに続いて出場し、住吉や河辺も出場する。この大会でGPファイナル進出者については、坂本やヘンドリックス、レヴィトらを含めて3、4選手は確実になっている状況だろうが、残りはNHK杯で決まる。そこで三原が、韓国勢のイやキム・イェリム、さらにはグバノワやテネルとどういう戦いを繰り広げるのか。

 ファイナルの6枠を争う戦いは最後まで続きそうだ。

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