フィギュアスケート2023−2024シーズン GPシリーズ展望 男子シングル編世界選手権連覇中の宇野昌磨。今季のGPシリーズも注目だ【イリア・マリニンに進化の予感】 スケートアメリカ(10月20〜22日)から開幕する2023−2024シーズ…

フィギュアスケート2023−2024シーズン GPシリーズ展望 男子シングル編



世界選手権連覇中の宇野昌磨。今季のGPシリーズも注目だ

【イリア・マリニンに進化の予感】

 スケートアメリカ(10月20〜22日)から開幕する2023−2024シーズンのフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ。男子最大の注目は昨季、全日本選手権を含む大会を5戦5勝し、世界選手権は連覇を達成するシーズンを過ごした宇野昌磨(25歳/トヨタ自動車)。今季、さらに充実した姿を見せられるか。

 そんな宇野が「近い将来、手がつけられない存在になる」と警戒するイリア・マリニン(18歳/アメリカ)は、第1戦のスケートアメリカに出場してくる。

 マリニンは今季、9月のオータムクラシックでシーズンイン。そのショートプログラム(SP)では100.87点の高得点を獲得。フリーは冒頭を4回転ではなくトリプルアクセルに抑える構成とし、ジャンプにミスもありながらも合計281.68点で優勝した。

 そして10月7日のジャパンオープンは、4回転アクセルを入れた構成とした。4回転ジャンプは5本跳んで、うち3本が「q」マーク(1/4回転不足)がつき、ループは3回転になったが、オータムクラシックのフリーより高い193.91点を出していた。

 昨季のスケートアメリカで優勝したマリニンは、経験と実績を着実に上積みしている。今季は、初戦から290点台に乗せてくる可能性は十分あるだろう。

 また、昨季の世界選手権で3位にとどまった時は、「高難度ジャンプより演技の質を高めたい」ともマリニンは話していた。

 だが、7月の「ドリーム・オン・アイス」で新SPを披露した際には、冒頭に4回転アクセルを入れ、ルッツ+トーループを跳んだあとの最後のジャンプをトリプルアクセルにする構成も見せている。さらなる進化を追い求めていることは確かだ。

【佐藤駿にチャンスあり?】

 スケートアメリカでマリニンに続く存在は、昨季の世界選手権で4位になったケビン・エイモズ(26歳/フランス)と、デニス・ヴァシリエフス(24歳/ラトビア)になるだろう。

 だが、エイモズはオータムクラシックではSPで大きく出遅れ、フリーで巻き返して2位にはなったものの不安を残した。また、ヴァシリエフスも9月のオンドレイネペラメモリアルでは7位というシーズンインだった。

 ふたりの調子が上がらないままなら、佐藤駿(19歳/エームサービス・明治大)にもチャンスが広がってくる。佐藤は9月の東京選手権で、鍵山優真(20歳/オリエンタルバイオ・中京大)に次ぐ2位だった。

 さらに10月のフィンランディア杯は、SPをほぼノーミスにして合計は261.23点で、苦しんでいたSPを克服してきている。この大会は、三浦佳生(18歳/オリエンタルバイオ・目黒日大高)に次ぐ2位だった。

【日本勢と韓国勢の戦い】

 スケートカナダ(10月27〜29日)で主役候補の選手は、世界選手権2位のチャ・ジュンファン(韓国)になるが、彼もオンドレイネペラメモリアルでは6位にとどまっている。

 その後、10月には上海トロフィーに出場して2位になったが、自己ベストのレベルに戻せないままスケートカナダに臨むようであれば、日本勢が主役に代わる可能性もある。

 その筆頭が昨季、GPシリーズ初参戦でGPファイナルまで進出した三浦だ。昨季は四大陸選手権初優勝を果たすなど自信を高めていて、今季もフィンランディア杯で優勝と調子を上げている。

 そんな三浦とともに、友野一希(25歳/上野芝スケートクラブ)と山本草太(23歳/中京大)も表彰台の可能性を持っている。

 昨季の世界選手権で自己最高得点を273.41点まで上げた友野は、9月のネーベルホルン杯でSP、フリーともにジャンプでミスがありながらも、265.78点で2位。昨季よりベースを上げているのは確かだ。

 また、昨季はファイナルに出場した山本も、今季のオータムクラシックは4位と不満足な結果だったが、その翌週の中部選手権では273.14点で優勝と調子を戻してきている。マッテオ・リッツォ(25歳/イタリア)が絡んでくる可能性もあり、表彰台争いは混戦になりそうだ。

【鍵山優真の復活に期待】

 第3戦のフランス大会(11月3〜5日)は、GPシリーズ2試合目になるマリニンが優勝候補筆頭。だが少しでもミスをすれば鍵山に加え、独特の世界観で人気のアダム・シャオ イム ファ(22歳/フランス)が上位争いに絡んできそうだ。

 鍵山はまだ2022年北京五輪時の構成に戻せない状態で、フリーの4回転も2本に抑えているが、ロンバルディア杯は優勝。さらに東京選手権でも優勝と底力を見せている。現状の構成でも290点台に乗せられる可能性がある。

 また、2年連続優勝を狙うシャオ イム ファは今季、ネーベルホルン杯で友野を抑えて優勝といういい滑り出しを見せると、上海トロフィーでも優勝。進化しながら結果を出している。

 この3選手の争いがどうなるか。ファイナル進出争いに影響も与えそうだが、そのなかで島田高志郎(22歳/木下アカデミー)がどこまで健闘するかも注目される。

【王者・宇野昌磨と鍵山優真の直接対決】

 中国杯(11月10〜12日)は宇野が登場し、シャオ イム ファや友野、山本を迎え撃つ。宇野はオフの間はアイスショーに出てシーズンインを遅らせていたが、今季はフリーで4回転サルコウを封印して完成度を高めたい意欲も持っている。初戦から完成度の高い演技を見せてくれそうだ。

 エスポーグランプリ(11月17〜19日)は、ファイナル進出をかけるチャと三浦、佐藤の戦いが注目だろう。さらにエイモズとリッツォがスケートアメリカとスケートカナダで表彰台に上がっていれば、その戦いに加わってくる。

 また、第6戦のNHK杯(11月24〜26日)は王者の宇野に、鍵山がどこまで迫るかが見どころになる。今季もファイナル進出争いは熱戦が見られそうだ。

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