今季女子ツアーも、新たな"ヒロイン"が次々に登場している。そんななか、とりわけ注目を集めているのは、神谷そら、桜井心那、竹田麗央ら2003年度生まれの「ダイヤモンド世代」。いずれも飛距離を武器にして、各トーナメントで躍動…

今季女子ツアーも、新たな"ヒロイン"が次々に登場している。そんななか、とりわけ注目を集めているのは、神谷そら、桜井心那、竹田麗央ら2003年度生まれの「ダイヤモンド世代」。いずれも飛距離を武器にして、各トーナメントで躍動している。そこで、彼女たちの強さについて、永久シード保持者の森口祐子プロに分析してもらった――。
※ツアー成績などのデータは10月15日時点でのもの



神谷そら(かみや・そら/20歳)
2003年4月18日生まれ。岐阜県出身。ツアー通算2勝。メルセデス・ランキング13位。ドライビングディスタンス1位(平均飛距離260.31)。身長167㎝。血液型AB。

 神谷さんは屈指のロングヒッターですが、彼女が左利きであるということが、その飛ばしのスイングにプラスの影響を与えているのだろうと思います。

 彼女のスイングの特徴は、バックスイングで背中が目標方向に向くほどの強い体の捻転を作る大きなトップにあります。

 右利きの選手の場合、本能的に右手で打ちにいくので、トップが大きくなると左手よりも後ろにある右手とクラブは、ダウンスイングで遠回りして下りてくるので、スライスが出やすいカット打ちになることが多いです。

 でも、神谷さんのように左利きの選手の場合は、ダウンスイングで左腕を体の近くに通るように引っ張り降ろしてこられるので、トップが大きくてもクラブが遠回りせず、インパクトゾーンでは右手が余計な動きをしないため、クラブが鞭のように走ります。それが、大きな飛距離へとつながっているわけです。

 もうひとつ、神谷さんの特徴として挙げたいのは、テンポのよさです。ドライバーのティーショットからパッティングまで、ターゲットを見極めて、構えて、2回ほどワッグルを入れたら、あとはクラブを上げて、下すだけ。仕切り直しやモジモジしたりすることは、ほぼありません。

 変に型にハマらず、のびのびと自分のスイングをしている感じを受けますし、歩くテンポも含めて、ナチュラルなプレーができているな、と感じます。

 9月には、日本女子プロ選手権コニカミノルタ杯でツアー2勝目を飾った神谷さん。同トーナメントの開催コースは1番がロングホールで、ティーショットで左サイドのバンカーを越えれば、落下地点が下り坂になり、次打でラクに2オンが狙えるベストルートとなります。

 最終日の神谷さんは、そのベストルートをとらえたティーショットを放ち、楽々と2オンしてバディースタートを決めました。この大事な1番ホールで、自分の強みであるドライバーショットを狙いどおり打っていけたこと。そして、バーディーを奪ったことによって、その後もテンポよく回れる弾みがついたのではないでしょうか。

 実際、それはパッティングにも表れていました。今年は猛暑の影響でグリーン面の芝が所どころ枯れている状態で、多くの選手がいつもより時間をかけてラインを読むなど、苦慮するシーンが目立つなか、神谷さんは何ら怯むことなく、いつもどおりのストロークで、要所でいいパットを沈めていました。

 ツアールーキーながらメジャータイトルを獲得。飛距離はもちろん、テンポのいいプレースタイルで、今後も非常に楽しみな選手のひとりです。



櫻井心那(さくらい・ここな/19歳)
2004年2月13日生まれ。長崎県出身。ツアー通算4勝。メルセデス・ランキング5位。ドライビングディスタンス4位(平均飛距離256.95)。身長166㎝。血液型O。

 櫻井心那さんもリズムよくプレーするタイプですが、神谷さんのテンポのよさとは異なり、櫻井さんは自ら決めたルーティンを崩さず、しっかりと自分のペースを守るプレーをします。

 若い選手の場合、先輩や実力のある選手とのラウンドでは、なかなか自分のペースでプレーできないことが多いです。でも彼女は、そういう時でも気後れすることなく、自分のペースでやれる空気感を持っています。

 そういう姿を見ていると、技術だけでなく、心のコントロールもしっかりしているんだな、と思わせます。

 ショットの練習の70~80%は、ふだんから100ヤード前後のショットに時間を費やしていると言います。その辺りを詳しく聞いたところ、特に95~115ヤードは5ヤード刻みで打ち分けることができるようにしている、ということでした。

 山下美夢有さんもそうですが、櫻井さんもそういった点から、ピンを狙う時に重要な距離感を大事に考えていることがわかります。

 9月のゴルフ5レディスで今季3勝目を挙げた櫻井さん。翌週の日本女子プロ選手権は彼女の地元である長崎県のパサージュ琴海アイランドGCでの開催でした。その練習日、私が「ここは(優勝を)狙っているんでしょう」と彼女に声をかけると、「思った以上に疲れています」といった反応でした。

 今夏は暑い日が続くなか、6月末からおよそ2カ月の間に行なわれた9試合のうち8試合に出場して3勝という成績を残した頑張りによって、若いとはいえ、さすがに疲労がたまっていたのでしょう。結果、40位タイで予選ラウンドを通過。3日目は1番スタートの1組目という早い組でのラウンドとなりました。

 それでも、9番ホール(パー5)に来た時にはすばらしいショットを見せました。3打目、一緒に回るふたりが先に打って1ピンちょっとの距離につけたあと、最後に打った櫻井さんは、さらに内側のOKの距離にピタリ。地元ファンが見守るグリーン周りでは、ものすごい拍手が沸き上がりました。

 いくら疲れていて調子が悪くても、期待されている場面でそれに応えるショットが打てるのはさすが。やはりこの人は「持ってるな」と思わせる一打でしたし、今後のさらなる活躍が期待されます。



竹田麗央(たけだ・りお/20歳)
2003年4月2日生まれ。熊本県出身。ツアー通算0勝。メルセデス・ランキング21位。ドライビングディスタンス5位(平均飛距離256.90)。身長166㎝。血液型O。

 竹田麗央さんは、9月の住友生命Vitalityレディス 東海クラシック2日目のラウンド終了後に行なわれた、日本女子プロゴルフ協会公認の『2023朝日インテックpresents ドライビング女王コンテスト』で、岩井千怜さん(2位)らを抑えて優勝。飛距離が魅力のプレーヤーです。

 竹田さんのドライバーのスイングは、肩幅くらいのやや狭めのスタンスで、バックスイングでは手のコックを少なくし、左ヒジを伸ばして両腕に一体感を持たせてクラブを上げていきます。そして、左腕に緩みのないトップから下半身主導でダウンスイングに入り、あとはバーンと振り抜いていって左肩を回し込み、左胸を反るようにしてフィニッシュに至ります。

 この大きなスイングが、あれほどのドライバーの飛距離につながっているのでしょう。

 お母さんの哲子(さとこ)さんとは、プロゴルファーであり、母親であるという共通点から話をする機会が多く、哲子さんによれば、竹田さんはしっかり自分というモノを持っている性格なんだとか。

 そこで、彼女の生年月日を調べてみると、4月2日生まれ。4月生まれの子は、小学校の低学年ぐらいでは同級生のなかでも体が大きく、大人びているので、相対的に人に頼らない育ち方をする子が多いみたいです。

 この自立心の強さは、プロゴルファーとしていい面に働くこともありますが、一方で調子の悪い時などは、コーチや他の人の意見を聞くことに消極的になる、という側面があります。

 哲子さんによると、どうやら竹田さんもあまり人からの意見を聞かないようなので、今後は周りの力を利用する、ということを覚えたらいいのではないかと思っています。実は私も4月生まれで、そういった性格的な部分がよくわかるんですよね。

 飛距離という大きな武器がありますし、そういうところで変化が見られるようになれば、今以上の成績が残せるのではないでしょうか。