プロバスケットボールBリーグ1部(B1)のシーズンが開幕した。B1昇格3季目を迎えた茨城ロボッツにとって「生き残りをかけたシーズン」だ。クリアすべきハードルは試合での勝利だけではない。2026年に導入される最上位リーグ「Bプレミア」入りに…

 プロバスケットボールBリーグ1部(B1)のシーズンが開幕した。B1昇格3季目を迎えた茨城ロボッツにとって「生き残りをかけたシーズン」だ。クリアすべきハードルは試合での勝利だけではない。2026年に導入される最上位リーグ「Bプレミア」入りに向け、今季さまざまな条件が課せられているためだ。社長を務める西村大介さん(46)に話を聴いた。(中村幸基)

 ――Bプレミア入りの条件は?

 ホームでの1試合平均入場者数4千人以上、年間売上高12億円以上、収容人員5千席以上のアリーナ確保など。参入できるのは最大18チームで、下部リーグとの入れ替えはありません。

 ロボッツの平均入場者数は昨季(22~23年)が3480人、その前(21~22年)の1588人から倍以上増えましたが、4千人に届いていない。さらにジャンプアップしなければならない。集客を担うマーケティング事業部だけでなく、ロボッツに関わる全員で「総力結集しよう」と呼びかけている。社内はもとより茨城県全体の総力結集が必要だと思っています。

 ――どのように集客を?

 ファンクラブ会員から「アンバサダー」を募り、特製の名刺を友人知人に配ってもらっています。名刺を受け取った人には特典もある。「応援団」はアンバサダーの団体版。商工団体や地域団体が対象で、多人数で観戦会をする際に優待価格でチケットを提供する。「チケットパートナー」は企業向け。1口10万円で優待券100枚の利用権や、ロボッツ公式サイトへの社名掲載、のぼりの提供などがセット。スポンサーほどお金は出せないが応援したいという企業がターゲットです。

 また「フレンドリータウン」は、ホームタウンの水戸市を含め昨季8自治体から今季23自治体に増える見通し。試合日にブースを出して特産品をPRしてもらうほか、自治体住民の優待や親子招待もあります。

 ――そもそもBプレミアに再編する必要はあるのですか?

 BリーグはサッカーのJリーグをまねたものです。ともに初代チェアマンの川淵三郎さんが立ち上げを主導しましたから。ただ、Jリーグに遅れること25年のBリーグが同じやり方をしては地域に浸透し、ファンやスポンサーを獲得しようにも追いつけません。このままではBリーグはなくなってしまうのではないか、という危機感が関係者全体に広まった。

 スポーツビジネスはもうからないと言われます。なぜかわかりますか? 勝って売り上げが伸びれば人件費(選手の年俸)も上がる。昇格降格があると勝つために無尽蔵に選手に金をつぎ込み、自転車操業になる。これを何とかしなければならない。

 そこで、チームの所属選手に支払う年俸総額に上限を設けるサラリーキャップ制度や、新人獲得の公平性を保つドラフト制度の導入が検討されている。各チームの戦力が均衡することで、競り合ったスリリングなゲームが増えます。また、入れ替え戦はありませんが、ポストシーズンのプレーオフを充実させることが検討されています。下位チームもファンも、プレーオフに進出できるか否かでシーズン終盤まで気持ちが途切れない。

 それらによってコストが安定すれば、オーナー企業も安心してバスケに投資でき、現場で運営に携わるスタッフの待遇改善にもつながる。スポーツビジネスを志す有能な人材も集まりやすくなる、というわけです。

 ――ご自身のキャリアをロボッツでどう生かすか?

 京都大学アメリカンフットボール部のコーチ・監督時代は、私立大のようなスポーツ推薦のない中で一からの選手育成に力を注いだ。B1滋賀の社長時代は、いきのいい大学選手たちをリクルーティングしつつ、いかに低予算でやり繰りするかに取り組んだ。そんな経験が、人口も大企業も少ない地方都市をホームとするロボッツをBプレミアに連れて行くのに役立てばと思っています。

 ――県内にはサッカーの鹿島アントラーズや水戸ホーリーホック、野球の茨城アストロプラネッツも。ファンの奪い合いになりません?

 サッカーや野球とはシーズンがずれているので競合しない。スポーツ好きな茨城の人たちをバスケにいざなえれば、奪い合いではなく相乗効果が生まれる。

 季節ごとに異なる競技を楽しむシーズンスポーツを提唱してきました。一つに打ち込むのも美学だが、いろいろなスポーツを体験して観戦して新たな可能性を広げ、夢中になるものを見つけられるのでは。

 バスケ観戦の魅力は、たくさん点が入る競技なので、1試合で数十回も喜びの瞬間が訪れること。身長2メートルの選手が躍動する迫力を間近に見ることもできます。ホームのアダストリアみとアリーナでは日本最大級のセンタービジョン(横15メートル、縦5メートル)や、音と光を連動させた演出、ダンスチームも見応えがある。屋内なので老若男女が安心して楽しめます。友だちに連れてこられた人が、リピーターになることも多い。ぜひ一度、非日常空間を体験しに来てください。

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 にしむら・だいすけ 1977年、鳥取市生まれ。兄の影響で小学5年からバスケットボールを始め、高校まで続ける。京都大学在学中、アメリカンフットボール部「ギャングスターズ」選手として日本選手権・ライスボウルで日本一に輝く。東京海上火災保険(現東京海上日動火災保険)、グロービス勤務を経て母校アメフット部のコーチ・監督に。2018年からBリーグ滋賀レイクスターズ社長、長崎ヴェルカ事業部長を歴任。21年、クラブを保有する「茨城ロボッツ・スポーツエンターテインメント」の社長に就任。

 〈いばらき・ろぼっつ〉 2013年、つくば市でクラブチーム「つくばロボッツ」発足。16年、本社を水戸市に移転し、名称を「サイバーダイン茨城ロボッツ」に改め、Bリーグ開幕を2部(B2)で迎える。19年4月、アダストリアみとアリーナ開館記念試合で入場者数5041人を記録。同年7月、名称を「茨城ロボッツ」に。21年、B1昇格。