宮崎県延岡市で、市内にある旭化成柔道部のコーチや選手らが、今年度から市内の中学校で体育の授業をサポートしている。市教育委員会によると、市内の中学校の体育の教諭で、柔道を競技としてやってきた人はいない。「必修科目だが、ケガも気になる」。学校…

 宮崎県延岡市で、市内にある旭化成柔道部のコーチや選手らが、今年度から市内の中学校で体育の授業をサポートしている。市教育委員会によると、市内の中学校の体育の教諭で、柔道を競技としてやってきた人はいない。「必修科目だが、ケガも気になる」。学校側の負担を減らし、競技の楽しさを伝えるにはどうしたらいいか――。そんな悩みに、旭化成柔道部が一肌脱ぐことになった。

 9月27日朝、市立東海中学校の柔道場に行くと、高上智史コーチ(31)と千野根有我選手(23)の2人が柔道着に着替えていた。

 きょうは前回りの受け身の指導だ。体育の茂(しげる)達矢教諭(38)と進め方を打ち合わせ、1年生約30人を出迎えた。みんなで入念にストレッチをして、いよいよ受け身を取り始める。

 未経験の子も多い。動きがぎこちない。茂教諭が柔道場中央を行き来して一人一人に声を掛け、高上コーチと千野根選手が向かい合った壁際で目を配る。

 「畳をちゃんと手でたたいて」「角度を気にして」「反対側の手にも神経使って」。2人は茂教諭の邪魔にならないように気を配りつつ、アドバイスした。生徒の動きが徐々になめらかになっていく。うまくできた子が笑みを浮かべる。

 休憩のあとは、模範演技の披露だ。

 生徒たちが受け身を取ると、音は「バタン」「ドスン」だが、千野根選手のそれは「パーン」。

 186センチ、100キロ超級の巨体が軽々と転がり、小気味良い破裂音が道場に響く。「こんな感じ」。生徒たちは目を丸くして「うおーっ」と歓声をあげた。

 高上コーチは「専門の教諭がいないとうかがったので、お役に立てば」。千野根選手は「柔道に興味を持ってもらえるお手伝いができればうれしい」と語る。

 サポートを受けた茂教諭は、「帯の締め方一つから(自分も含めて)3人で指導でき、ケガ防止の意味でも大きい。自分も専門家ではないので、助言をもらえて本当に助かる」と話していた。

 旭化成柔道部は、9月から11月にかけて、同校を含めて3校で授業を手助けする予定という。(星乃勇介)