隠岐の島町出身で元関脇隠岐の海の君ケ浜親方(38)=本名・福岡歩、八角部屋=が30日、東京・国技館で断髪式を開いた。角界関係者や家族ら約300人がはさみを入れ、島根出身で121年ぶりに関脇に昇進した人気力士のマゲ姿に別れを告げた。 場内が…

 隠岐の島町出身で元関脇隠岐の海の君ケ浜親方(38)=本名・福岡歩、八角部屋=が30日、東京・国技館で断髪式を開いた。角界関係者や家族ら約300人がはさみを入れ、島根出身で121年ぶりに関脇に昇進した人気力士のマゲ姿に別れを告げた。

 場内が大きく沸いたのは、メインイベントの「最後の取組」だ。江戸時代が起源とされる、隠岐古典相撲の形式で行われた。

 学校や空港、道路といった公共施設の完成など、島で祝い事があったときに島をあげて夜通し開かれる神事。隠岐の海も、高校まで参加していたという。

 同島出身で同じ八角部屋の三段目、隠岐の富士(35)を相手に二番。最初の一番で勝った後、古典相撲の習わし通り、続く取組で相手に勝ちを譲った。

 「お客さんに喜んでいただけたと思う。隠岐の島の文化に触れていただいて、間違いはなかった」

 小学校で相撲を始めた隠岐の海は、航海士を志して隠岐水産高に通った。高校の後輩である隠岐の富士をスカウトするために隠岐の島に来た八角親方(元横綱北勝海)の目にとまり、プロの世界へ飛び込んだ。

 2005年初場所で初土俵を踏み、約190センチの長身でスケールの大きい四つ相撲を武器に出世した。10年春場所、県出身者で88年ぶりに新入幕。15年春場所には同じく県出身で121年ぶりとなる新関脇昇進を果たした。幕内在位75場所と長く活躍し、今年初場所中に引退した。

 断髪式では、師匠の八角親方から大銀杏(おおいちょう)を切り落とされた。

 体の一部となっていたマゲがなくなり「(頭が)軽くなった」と苦笑。「ここからが恩返しの始まり。やっぱり土俵で恩返しをしていきたい」と言った。

 親方としてスカウトする力士の第1号は隠岐の島から、と心に決めている。そのために何度でも島に足を運ぶつもりだ。自分も、隠岐の島に来てくれた八角親方との出会いがなければ入門はしていなかった。

 「自分がそうだったように、まずは出会えるかどうか」。どんな力士を育てたいかと問われると、こう続けた。

 「強い、弱いとは別に、応援していただける力士ですね。応援していただくのって、簡単そうで難しいんです。どの部屋からでもいいので、全国の方に応援していただける力士が隠岐の島から出れば良いですね」(鈴木健輔)