いよいよ秋のGIシリーズがスタート。その幕開けを告げるのは、秋の短距離王決定戦となるGIスプリンターズS(10月1日/中山・芝1200m)だ。 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は5勝と比較的安定した結果を残しているが、伏兵の台…

 いよいよ秋のGIシリーズがスタート。その幕開けを告げるのは、秋の短距離王決定戦となるGIスプリンターズS(10月1日/中山・芝1200m)だ。

 過去10年の結果を振り返ってみると、1番人気は5勝と比較的安定した結果を残しているが、伏兵の台頭も頻繁に見られる波乱含みの一戦だ。事実、昨年は8番人気のジャンダルムが勝利して、3連単は45万円超えの高額配当が飛び出した。その昨年を含めて過去10年の3連単の配当は、実に半数となる5回が10万円超え。まさに一発の魅力を秘めた、穴党向きのレースと言える。

 はたして、今年も荒れるのか。日刊スポーツの松田直樹記者はこう語る。

「近年のスプリントGIは、2022年の高松宮記念(中京・芝1200m)が8番人気のナランフレグ、同年のスプリンターズSが8番人気のジャンダルム、2023年の高松宮記念(3月26日)が12番人気のファストフォースといった面々が優勝。もちろん馬場や展開もありますが、勝ち馬の人気を見てもわかるように、軸となるような絶対的な存在がいません。

 それは今回も同じ。群雄割拠といった状況にあって、穴馬台頭の可能性は十分にあると思います」

 松田記者は続けて、舞台となる中山コースの特徴に触れ、狙い目となるタイプについて言及する。

「おにぎり型のコース設定となっている中山・芝1200mは、スタートから緩やかな下り坂となっており、ゲートが開いた直後から猛烈なスピード争いが生じます。上級条件になるとラップも速く、追走に忙しさを感じてしまう馬は、たとえ爆発力があっても、その差し脚が最後に届くことはありません。

 実際、2020年に最後方から差しきったグランアレグリアは別格として、マイル路線から新境地開拓を目論んだ昨年のシュネルマイスターは、勝ち馬からコンマ5秒差の9着が精一杯でしたから。

 だからといって、前が有利か、というとそうでもなく、意外と逃げ馬が押しきれない設定でもあります。過去10年の結果を見ても逃げきり勝ちはなく、最も直近となるのが2009年のローレルゲレイロ。先手を奪ってハイラップを生き残るには、よほど力が抜けているか、展開の助けがないと厳しいようです。

 年によって、前半3ハロンが32秒台に突入する消耗戦。今年もハナを主張したい馬が何頭かいるため、基本的には速いラップを追走できたうえに、最後にもうひと脚使える馬が"勝負になる"と踏んでいます」 

 そこで、松田記者は2頭の穴馬をピックアップした。



2021年のスプリンターズSを制しているピクシーナイト

「まずは、ピクシーナイト(牡5歳)です。2021年のスプリンターズSを3歳で制覇しました。続く香港遠征で、大量落馬に巻き込まれたことによる骨折で長いブランクを強いられましたが、徐々に復調気配を見せています。

 復帰2戦目となる2走前のGII京王杯スプリングC(5月13日/東京・芝1400m)は直線で前が壁になり、前走のGIIセントウルS(9月10日/阪神・芝1200m)は発馬で躓いたことが響いて、いずれも8着。力を出しきれる状況にならず結果は伴っていませんが、それぞれ勝ち馬からコンマ4秒差、コンマ5秒差と大きく負けていません。

 前走時の最終追いきりでは、栗東坂路で50秒6-12秒0という好タイムを記録。競馬を使いながら本調子を取り戻しつつあるのは明らかです。

 そもそもの能力はメンバー屈指。この中間は、騎手時代に同馬をGI馬へと導いた福永祐一技術調教師が追いきりに騎乗している点も頼もしく映り、王者に返り咲く結果を出しても驚きはありません」

 松田記者が推奨するもう1頭は、当初出走予定のなかったキミワクイーン(牝4歳)だ。

「キミワクイーンはもともと先行脚質でしたが、気性的な成長もあって、末脚の爆発力を競馬で生かせるようになりました。GIII函館スプリントS(6月11日/函館・芝1200m)の勝利後には、鞍上の横山武史騎手が『想像以上の瞬発力』と、その末脚を高く評価していました。

 中山の今開催の傾向は、インの先行有利。ですが、先週のGIIオールカマーでは7枠13番のローシャムパークが先行馬群を外から差しきりました。オールカマーは一昨年が内枠2頭、昨年が内枠3頭による決着でしたが、今年はそれに反するような結果となりました。

 そうなるとスプリンターズSも、直近2年よりも差し馬勢にもう少しだけ目を向けてもいいかもしれません。展開さえハマれば、キミワクイーンが上位争いに突っ込んでくる可能性は大いにあります」

 本命不在のスプリント戦線。今年も人気の盲点となる伏兵の台頭は十分に考えられる。それが、ここに挙げた2頭であってもおかしくない。