部員が少なく、6年ほど前は団体戦の5人のメンバーがそろわないほどだった。そんな剣道部が最近、和歌山県内外の大会でめざましい活躍を見せている。 7月中旬に奈良県橿原市であった近畿大会。大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の24選手が争った男…

 部員が少なく、6年ほど前は団体戦の5人のメンバーがそろわないほどだった。そんな剣道部が最近、和歌山県内外の大会でめざましい活躍を見せている。

 7月中旬に奈良県橿原市であった近畿大会。大阪、京都、兵庫、滋賀、奈良、和歌山の24選手が争った男子個人戦で、和歌山県湯浅町にある県立耐久高校の前主将、箕沢真広さん(3年)が頂点に立った。同校の選手の優勝は男女を通じて初めて。県勢としても男子は16年ぶりの制覇だった。

 箕沢さんは6月にあった県高校総体個人で4位となり近畿大会への切符を得ていた。大会前は「一つでも多く勝てたらいい」と気負いはなかった。

 トーナメントを勝ち上がり、決勝は京都の選手と対戦した。相手の攻めに押され気味だったが、慌てなかった。延長で相手の一瞬のすきをつき、メンを決めて勝利。「気持ちを最後まで切らさずにできた」と笑顔で語った。

 県内の高校生の剣道人口は減っているという。伝統校である耐久も例外ではなかった。剣道部顧問の上田秀人教諭(36)が同校に赴任した6年前、新入部員は男女ともゼロだった。

 和歌山市出身の上田さんは剣道経験者。前任の和歌山工業高でも指導に携わった。上田さんが指導するようになってから、地域で剣道をしている生徒やそのきょうだいが集まりだした。上田さんの熱心な指導で、選手たちは力をつけていった。

 昨年の県高校総体の団体戦は女子が優勝し、全国の舞台に進んだ。今夏は部員5人の少数ながら県高校総体団体2位と健闘。女子の主将だった竹井愛美さん(3年)は「明るくて仲がよい部活です」と話す。

 部員9人だった男子は今夏の県高校総体団体で3位。9月に橋本市であった県下剣道優勝大会は1、2年生で挑み、男子団体で優勝を果たした。

 学校の道場の隅には、剣道マンガ「六三四の剣」の全巻が置かれている。高校から剣道を始めた部員もいて、上田さんが剣道のことをもっと知ってもらいたくて自宅の倉庫から持ってきたという。1980年代のマンガだが、いまの部員たちもよく読んでくれているという。

 上田さんは「みんなで仲良く課題に向き合って克服することを学べるクラブにしていきたい」と語った。(伊藤秀樹)