表彰式で黒人選手にだけメダルを授与しなかったとして、アイルランドの体操協会は25日、選手と家族に謝罪する声明を発表した。1年半前の様子がSNSで拡散され、「故意ではない」などと説明したが、「人種差別だ」とする批判が収まらなかった。 問題の…

 表彰式で黒人選手にだけメダルを授与しなかったとして、アイルランドの体操協会は25日、選手と家族に謝罪する声明を発表した。1年半前の様子がSNSで拡散され、「故意ではない」などと説明したが、「人種差別だ」とする批判が収まらなかった。

 問題の場面は昨年3月、アイルランドの首都ダブリンで起きた。SNSに投稿された動画には、協会の職員の1人が、十数人の白人の少女らの首に次々にメダルをかける一方、黒人の少女にはメダルをかけないまま順番を飛ばす様子が映っている。

 この動画が広がった今月22日、体操協会は声明を発表。苦情を受けた後にすぐに調査し、今年8月の時点ですでに両者間で解決している、などと主張した。声明によると、メダルを渡さなかった職員は故意ではなかったと強調。直後にメダルを渡し、対面での謝罪は受け入れられなかったが、後に謝罪文を送付したという。

 動画の拡散はやまず、24日には選手の母親が地元メディアに「協会は職員をかばっている」と批判。職員の謝罪文は「関係者へ」という短いものだったとして、「真の謝罪ではない」と憤りを語った。

 米スポーツ界のスーパースターで黒人体操選手のシモーン・バイルスさんは22日、動画について、「心が折れる」とX(旧ツイッター)に投稿。選手の両親から連絡を受け、ビデオメッセージを送ったことを明らかにした上で「どんなスポーツでも人種差別は絶対に許されてはいけない」と記した。

 協会は騒動が収まらないことを受け、25日に改めて「謝罪声明」と題した文書を公表。表彰式での出来事が「あってはならないことだった」とし、「その日以来、さらなる動揺を引き起こしたことも申し訳なく思う」とした。選手の家族らや反人種差別団体と協力し、今後に向けて改善点を洗い出すという。(ロンドン=藤原学思)