大相撲秋場所で熱海市出身の前頭15枚目、熱海富士(21)が初優勝をかけて千秋楽に臨んだが、惜しくも敗れた。優勝すれば県出身力士として初めてとなるだけに、地元の熱海市や母校の飛龍高校(沼津市)ではパブリックビューイング(PV)が開かれた。 …

 大相撲秋場所で熱海市出身の前頭15枚目、熱海富士(21)が初優勝をかけて千秋楽に臨んだが、惜しくも敗れた。優勝すれば県出身力士として初めてとなるだけに、地元の熱海市や母校の飛龍高校(沼津市)ではパブリックビューイング(PV)が開かれた。

 熱海富士は2020年九州場所で初土俵。所要18場所での優勝となれば、年6場所制となった1958年以降、最速となる。

 偉業がかかる千秋楽。11勝3敗の単独トップで大関経験者の朝乃山に臨んだ。熱海市のPV会場では市民ら約100人が集まり、熱海富士が土俵に上がると大きな歓声が上がった。寄り切りで敗れると、「あー」とため息が漏れた。すぐに「まだまだだ」と声があがり、4敗で並ぶ上位力士の取組を見守った。同市の若林みや子さん(82)は「惜しかった。ここまで来たんだもの、素晴らしい」とたたえた。

 大関貴景勝との優勝決定戦が決まると、会場は大歓声に包まれた。はたき込みで敗れると再びため息が広がったが、その後拍手に変わり、優勝争いを闘った熱海富士をねぎらった。

 昨年4月に立ち上げた後援会は会員が400人を超える人気ぶりだという。後援会長で熱海商工会議所の内田進会頭は「今場所が始まる前はまさか優勝争いに絡むとは思ってもみなかった。いつもと違って緊張していたようだが、これからたくさんチャンスがある。最高位めざしてがんばってもらいたい」と話した。副会長の渡辺修一さんは「よくやった、本当にご苦労さん。最近は表情がしっかりしてきて、上の番付が相手でも引けを取らないハングリーさが出てきた。来場所は上位陣とあたるが、これからが楽しみだ」と期待を寄せた。(田中美保)

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 熱海富士の母校・飛龍高校(静岡県沼津市)では、後輩の相撲部員や生徒、教職員ら約60人が視聴覚教室の大スクリーンで観戦した。初優勝を信じて熱い声援を送ったが、優勝決定戦で敗れると、後輩たちは「来場所こそ優勝」とエールを送った。

 相撲部は1972年に創部され、焼津市出身の幕内・翠富士ら多くの力士を輩出してきた全国屈指の強豪校だ。熱海富士の妹で3年の武井陽奈さん(18)は、昨年秋から女性主将として男女14人の部員を引っ張ってきた。武井さんはこの日は両国国技館で兄を応援した。

 副主将の国次晃輔さん(17)は「悔しい」。優勝決定戦で大関・貴景勝が立ち会いで左にずれたことについて「大関のプライドをへこませた」と、今場所での先輩の活躍を喜んだ。相撲部からは来春、3人が角界入りする。白坂湧人さん(17)もその1人だ。「僕も熱海富士のように日ごろからしっかり稽古して頑張りたい」と誓った。(南島信也)