10月2日からの「オールガールズクラシック」で活躍が期待される吉川美穂(左)と小林莉子【ガールズ選手のみで開催】 昨年、ガールズケイリンが10周年を迎え、この11年目に大きな変革の時を迎えた。 その一つが、年3回行なわれるGⅠ開催の新設だ。…


10月2日からの

「オールガールズクラシック」で活躍が期待される吉川美穂(左)と小林莉子

【ガールズ選手のみで開催】

 昨年、ガールズケイリンが10周年を迎え、この11年目に大きな変革の時を迎えた。

 その一つが、年3回行なわれるGⅠ開催の新設だ。これまでガールズケイリン最高峰のレース「ガールズグランプリ」への出場資格は、賞金ランキング上位者などに与えられていた。その権利を獲得するには実質、年間を通して好成績を維持しなくてはならなかったが、これらGⅠで優勝すれば、ガールズグランプリの出場権をいち早く獲得できるため、選手たちにとっても、GⅠが大きな節目となった。

 そして、2つ目となるGⅠ開催「第1回オールガールズクラシック」(ナイター開催)が、10月2日(月)~4日(水)に千葉県の松戸競輪場で開催される。1日のうち後半6レースのGⅠで争うのは、獲得賞金上位者を基本とした42選手だが、前半6レースはFⅡグレードのガールズ選手のレースも同時開催されるため、この3日間で出場するのは女子のみ。ガールズケイリンを知るには絶好の機会となる。

 優勝候補には、初のGⅠ開催となった6月の「第1回パールカップ」を制した児玉碧衣(福岡/108期)、ナショナルチームに所属する佐藤水菜(神奈川/114期)らが挙げられるが、ここで注目したいのが、決勝進出が期待される2人の30歳、小林莉子(東京/102期)と吉川美穂(和歌山/120期)だ。

 小林は2012年にガールズケイリン1期生としてデビューし、ガールズケイリン界をけん引してきた大ベテラン。初年度に開催されたガールズグランプリを制するなど、これまで数々の優勝を手にしてきた。一方、吉川はナショナルチームに所属して世界を相手に戦ったのち、ガールズ選手として2021年5月にデビュー。今年で3年目を迎えた。

【2つのビッグレースを経て掴んだ手応え】

 同い年でありながら、まったく別々の競技人生を歩んできた2人は、現在、ガールズケイリンを代表する選手として名を馳せ、強豪選手が集う特別レースにもたびたび出走している。もちろん2人ともパールカップに出場したが、どちらも大きな悔いを残す結果となってしまった。

 小林は決勝に進出したが、そのレースの最終周回に差し掛かったところで落車。体がバンクに叩きつけられてしまった。

「頭を打っていたので、それがダメージ的には大きかったかなと思います。頭を打って記憶がないというのが、11年やっていて初めてでした。(GⅠで)気持ち的にも仕上がっていたので、悔しさが残る開催でした」(小林)

 小林は競輪場からそのまま病院に運ばれ、頭部打撲と脳振とう、左肩、肘、大腿、下腿の打撲及び擦過傷で全治約1カ月と診断された。

 吉川は初日の予選で優勝候補の児玉、山原さくら(高知/104期)、坂口楓華(京都/112期)と争うことになり、6着に沈んだ。「調子もすごくよかったので、初日さえミスしなければとすごく感じています」と悔しさを口にした。

 このパールカップから約1か月後の7月中旬、2人は特別レース「ガールズケイリンフェスティバル」に出場した。小林は「(ケガ明けで)まだダメージが結構残っていた」なかでも見事決勝に進出。7着と上位には食い込めなかったが、改めてそのポテンシャルの高さを証明した。吉川も予選を勝ち抜いて決勝に駒を進め、堂々の2着に。特別レースで自身最上位の成績を残すことができた。「パールカップあたりからすごく調子が上がっていましたし、ここでも決勝に乗れて、(結果を出せたことは)大きかったと思います」と確かな手ごたえを掴んだ。



ガールズケイリン3年目ながらも堂々の走りを見せる吉川

【スピードが勝負のカギを握る】

 調子を上げてきている2人にとっても、今回のオールガールズクラシックは是が非でも獲りたいタイトル。ただ上位陣の実力は伯仲しており、そう簡単に優勝を手にできるわけではない。

 その2人の前に大きく立ちはだかるのが、ナショナルチームの存在だ。今回のGⅠでは、アジア選手権でパールカップに出場できなかったナショナルチームの佐藤水菜、太田りゆ(埼玉/112期)、梅川風子(東京/112期)の3選手が出走することになっており、彼女たちがどう勝ち上がるかにも注目が集まっている。

 出場選手が発表される前には、小林の周りでも「(ナショナルチームの選手が)『今回のGⅠに走るのかな』と結構みんなで話していた」と話題に上がっていたという。吉川も、「すごく重要視しなきゃいけない選手たちだと思います」とその存在を強く意識している。

 それを踏まえ、勝負のカギを握るのは、ともにスピードにあると考えている。

「(松戸競輪場の1周は)333mで(最も多い)400mよりも短いので、スピードレースになると想定しています。ナショナルチームの選手がいるので、確実にふだんよりスピードが上がるはず。だから自分の位置取りとスピードに遅れないことがカギになると思います」(小林)

「サトミナ(佐藤水菜)は、真後ろについても、そのままちぎれそう(離されそう)になるぐらい強烈なスピードなので、本当にすごいと思います。女子の選手の後ろについて、ちぎれそうになるのはなかなかないことです。だからスピード勝負になると思います。残り1周で最後尾にいたら、絶対に終わってしまうので、しっかり組み立てて、出遅れないようにしたいと思います」(吉川)

 小林も吉川も競走相手が強敵だからと言って、狙いがブレることはない。小林が「GⅠを獲ればグランプリ出場が決まるので、どうしても獲りたい1本。難しさはありますが、チャンスはあると思うので、優勝を狙いたいです」と語れば、吉川も「まずは決勝に乗ることを目標にして、チャンスがあれば、優勝も目指していきたいです」とともに頂点を狙う。



ガールズケイリン発展のために貢献してきた小林

【キャリアの充実期にいる2人】

 アスリートにとって30歳という年齢は、心技体ともに充実した時期に入る。2人とも競輪人生のなかで、今の状態をどう見ているのだろうか。小林はこう語る。

「正直、26~27歳くらいの時に、競技的にレベルアップするのはちょっときついかなと思ったんですが、競輪は面白くて、年齢に関係なく成長できることを学んだので、まだまだ成長できますし、もっとレベルアップできると信じています」(小林)

 小林同様、吉川の視界も良好だ。

「フィジカル的なピークはナショナルチームに所属していたころだと思いますが、経験を生かすことと、頭を使って走ることはできていると思います。私にはロードの経験があって、トラックの中距離の経験もあります。集団スプリントの技術は身についていると思いますので、その経験と考えて走ることを続けていけば、グランプリ獲得のチャンスもなくはないと思います」(吉川)

 歩んできた道は違えど、選手として豊富な経験を積み重ね、今充実期を迎えている小林と吉川。現状に甘んじることなく探求心を持ち、ともに明るい未来を描いている。これから先の30代でさらに飛躍を遂げる可能性は十分にありえる。今回のオールガールズクラシックでどんな走りを見せてくれるのか。今から楽しみで仕方ない。

【Profile】
小林莉子(こばやし・りこ)
1993年3月26日生まれ、東京都出身。小学時代からソフトボールに励み、高校時代は全国ベスト8に。高校卒業後に競輪学校(現日本競輪選手養成所)に入学。ガールズケイリン1期生として2012年にデビュー。「ガールズグランプリ」の初代女王となる。2023年1月にはガールズケイリン創成期を支え102期のなかで常にトップ選手として活躍した功績が評価され、特別賞を受賞した。

吉川美穂(よしかわ・みほ)
1993年1月15日生まれ、大阪府出身。中学・高校とソフトボールに励み、高校卒業後に、ロードレースの実業団へ。その後、プロロードレースチーム「ライフガーデン・ビチステンレ」、スペインの「ビスカヤ・ドゥランゴ」に所属し、ワールドツアーに参戦する。トラックレース中距離の選手として、ナショナルチームにも6年間在籍。2020年に日本競輪選手養成所に入り、2021年5月にガールズケイリンデビュー。2023年7月の特別レース「ガールズケイリンフェスティバル」で自身最高位となる2着に入る。