ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会 1次リーグD組 イングランド34―12日本 勝負の分かれ目が、スクラムにくっきりと表れた。 日本が8点を追う後半24分、自陣ゴール前でのマイボールスクラム。良いボールがSH流(ながれ)に出ない。こ…

ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会 1次リーグD組 イングランド34―12日本

 勝負の分かれ目が、スクラムにくっきりと表れた。

 日本が8点を追う後半24分、自陣ゴール前でのマイボールスクラム。良いボールがSH流(ながれ)に出ない。この試合で、初めてのことだった。

 インゴールまでプレッシャーをかけられ、残り5メートルからの相手ボールで再び組み合う。今度はスクラムを崩す反則を取られ、アドバンテージでプレーが続行すると、左に展開されて失トライを喫した。

 2トライ2ゴール以上の差をつけられる手痛い失点。日本の15人は落胆を隠せなかった。

 昨年11月、敵地のロンドン・トゥイッケナムでイングランドに完敗した。序盤から立て続けにスクラムの反則を取られ、一気に流れを持っていかれた。

 同じ過ちは繰り返さない。長谷川慎スクラムコーチとともに、周到な準備を重ねた日本のFW8人は開始からほぼ互角に組み合った。強みとする相手のスクラムを、前半は完全に制御していた。

 だが、赤いバラのエンブレムをつけた屈強な男たちは、圧力を最後まで落とさなかった。

 スクラムで崩されるシーンの数分前。相手はFW第一列の主力、エリス・ゲンジを投入して勢いづいた一方で、日本はそこまで中枢を担ってきたフッカーの堀江が退いていた。

 結果は12―34。

 日本は奮闘し尽くしたが、80分はもたなかった。

 W杯での対戦は、1987年の第1回大会以来、36年ぶりだった。71年の初顔合わせからここまで日本の10戦全敗。この世界最高峰の舞台で初勝利をつかんでいれば金星、いや、大金星と騒がれただろう。

 金星は平幕が横綱を倒すことを指す。前回大会準優勝のイングランドが現時点の「横綱」かはいったん脇に置くとして、日本は8年前に南アフリカを撃破し、4年前はアイルランド、スコットランドを相次いで破った。

 今年、日本はラグビーの国際統括団体「ワールドラグビー」から「ハイ・パフォーマンス・ユニオン」に指定された。これまで「ティア1」とされていたイングランドやニュージーランドといった世界の強豪10チームに日本を加えた11チームで構成。いわば世界のトップ層だと認められた形だ。

 番付上はイングランドに近づいているかもしれない。ただ、ニースの夜で思い知らされたのは、ラグビー発祥の地との間にある、たしかな地力の差。これでイングランドとの対戦成績は11戦全敗となった。相撲っぽく表現するならば、イングランドが看板チームの責任を果たした、といったところか。

 そんなゲームだった。(ニース=松本龍三郎)