卓球の強豪ひしめくアジア地域で9月3日から10日にかけて開かれた「ITTF-アジア選手権」(韓国・平昌)が幕を閉じた。 男女の団体、シングルス、ダブルス、混合ダブルスの7種目を8日間で消化するアジア選手権はタイトなスケジュール。そのため試合…

卓球の強豪ひしめくアジア地域で9月3日から10日にかけて開かれた「ITTF-アジア選手権」(韓国・平昌)が幕を閉じた。
 
男女の団体、シングルス、ダブルス、混合ダブルスの7種目を8日間で消化するアジア選手権はタイトなスケジュール。そのため試合経過や結果を追いきれなかった方も多いことだろう。

そこで、あらためてアジア選手権のトピックを振り返るとともに、パリ五輪代表選考レースの状況も見ていきたい。

まず、日本のメダル獲得数は女子が団体銅とダブルス銅(木原美悠/長﨑美柚。ともに木下グループ)の計2個。男子はゼロに終わった。

女子団体は宿敵中国と準決勝で対戦。世界最強の中国とその背中を追う日本の一戦は実質上の決勝となった。

この大一番に日本は早田ひな(日本生命)、平野美宇(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)という布陣で挑んだが、1番の早田が孫穎莎にストレート負け、2番の平野は陳夢から1ゲームを奪うにとどまり、3番の伊藤も陳幸同にストレートで敗れた。

日本は順位決定戦なしの3位で銅メダル。目下、パリ五輪代表を競うベストメンバーをもってしても中国の高い壁を超えることはできなかった。

女子団体準決勝後に始まった混合ダブルスは早田が張本智和(智和企画)とのペアでベスト8。金メダルを見据えていた2人だが、ここでも中国の林高遠/王芸迪にストレート負けを喫した。

3ゲーム全てでリードを奪いながら逆転を許した早田/張本。早田は「自分たちの得点にする1球が決めきれなかった。相手を見ながら試合ができずに自分たちの世界で試合をしていた」と振り返っていた。

その早田のシングルスは準々決勝で孫穎莎に敗れベスト8止まり。

ただ団体戦の時よりも孫のボールに対応し、第3ゲームは得意のフォアドライブに加え、チキータやしゃがみ込みサーブなどを駆使して1ゲームを奪った。

そして、続く第4ゲームも4点を先取する反撃を見せたが、世界ランク1位の孫には及ばずゲームカウント1-3で敗退。

「迷いながら試合をして2ゲームを落としてしまったので、もったいなかった」と語る早田は、「自分の中で収穫はあったので、今後さらに精度を上げていきたい」と次の対戦チャンスに意欲を見せた。

世界ランク日本女子2番手の伊藤もベスト8だった。伊藤が負けたのもやはり中国。

王芸迪から先に1ゲームを奪い、2ゲーム以降も得意のスマッシュで攻撃を続けたが、王のカウンターやバック対バックの打ち合いで先手を取られ、立て続けに3ゲームを奪われてゲームカウント1-3で敗れた。

「3ゲーム目にやっていたことが2ゲーム目の後半でできていたら、2-0だったかもしれない。王芸迪選手に歯が立たないという部分はなかった」と言う伊藤。

一時期より状態は良くなってはいるが、まだトップギアというわけにはいかないようだ。

打倒中国への期待が最も大きかった平野は、世界卓球2023南アフリカ女子シングルス銅メダルの陳幸同(中国)に4回戦で敗れた。

第2ゲームに反撃のチャンスを得た平野。だが、鉄壁の守備を誇る陳の前に屈した。

試合後は「今回、樊振東選手(中国/世界ランク1位)だったり、強い選手の練習を間近で見た時に、どんなに追い込まれても勝つ自信がつくような練習をしていると思った。自分もそれくらいの意識で練習をしていきたい」と結果以外の部分にも目を向け、広い視点でさらなる成長の鍵を探っていた。

また、王曼昱(中国)にストレートで敗れた木原美悠(木下グループ)、陳夢から1ゲームを奪ったものの敗れた佐藤瞳(ミキハウス)もベスト16だった。

女子ダブルスは木原/長﨑美柚(木下グループ)が3位決定戦なしの銅メダルを死守した。

準決勝で中国の王曼昱/陳夢と対戦し、最初の2ゲームを奪って勝利に王手をかけた。ところがそこから底力を見せた中国が大逆転。

「中国ペアに対して、あと一歩のところまではいけたが、その壁を越えれらない。これが実力」と長﨑。木原も「勝ちきれなくて悔しい」と唇を噛んだ。

もう1組の平野/張本美和(木下アカデミー)は、孫穎莎/王芸迪(中国)と第2ゲーム10-12と競り合ったが、ストレート負け。

その中でもアジア選手権初出場の15歳・張本美和(木下アカデミー)は「自分でも通用する部分があるんじゃないかと実感できた」と手応えを感じたようだった。

アジア選手権を終えた時点で注目のパリ五輪女子代表選考レースは依然として早田が首位。今大会40ポイントを加算した早田は640.5までポイントを積み上げている。

2位は今大会20ポイント獲得の平野で420ポイント。早田との差は220.5ポイントと大きく開いている。

平野を追うのは3位の伊藤。今回40ポイント獲得で409.5ポイントとした伊藤は、平野に10.5ポイント差まで迫ったが、今月23日に開幕するアジア競技大会(9月23~10月8日/中国・杭州)の出場権が伊藤にないため、同大会に出場できる平野にアドバンテージがある。

ちなみに伊藤は、今年11月に行われる最後の国内選考会の全農CUP大阪大会(11月25~26日/Asueアリーナ大阪)と、年明け1月の全日本選手権(2024年1月22~28日/東京体育館)の2大会が代表選考ポイント獲得のラストチャンス。

パリ五輪代表の座を確実に射止められるのは上位2人のみ。トップを走る早田は余程のことがない限りほぼ手中に収めたと言えそうだが、2つ目のイス争いは極めてし烈だ。


(文=高樹ミナ)

<アジア選手権 女子結果>

■女子団体
3位(早田ひな、平野美宇、伊藤美誠、木原美悠、佐藤瞳)

■女子シングルス
優勝:王曼昱(中国)
準優勝:孫穎莎(中国)
3位:陳幸同(中国)、王芸迪(中国)
ベスト8:早田ひな、伊藤美誠
ベスト16:平野美宇、木原美悠、佐藤瞳

■女子ダブルス
優勝:陳夢/王曼昱(中国)
準優勝:孫穎莎/王芸迪(中国)
3位:チョン・ジヒ/シン・ユビン(韓国)、木原美悠/長﨑美柚
ベスト8:平野美宇/張本美和

■混合ダブルス
優勝:林高遠/王芸迪(中国)
準優勝:梁靖崑/銭天一(中国)
3位:イム・ジョンフン/シン・ユビン(韓国)、林昀儒/陳羽思(台湾)
ベスト8:張本智和/早田ひな


※2023年の国際大会(個人種目)中国トップ3選手に勝利 7ゲームマッチ 1勝15点/5ゲームマッチ 1勝10点


■2024年パリ五輪選考ポイント
男子上位10名(2023年9月10日現在)

順位 選手名(合計ポイント)世界ランク
1位 張本智和(569.5)4
2位 戸上隼輔(404)41
3位 田中佑汰(302)60
4位 篠塚大登(273)29
5位 吉山僚一(208)224
6位 曽根翔(207)254
7位 宇田幸矢(183)44
8位 吉村真晴(170)77
9位 及川瑞基(152.5)47
10位 横谷晟 134(-)
※世界ランク updated on 12/9/2023

■2024年パリ五輪 日本代表選考ポイント