卓球の強豪ひしめくアジア地域で9月3日から10日にかけて開かれた「ITTF-アジア選手権」(韓国・平昌)が幕を閉じた。 男女の団体、シングルス、ダブルス、混合ダブルスの7種目を8日間で消化するアジア選手権はタイトなスケジュール。そのため試合…

卓球の強豪ひしめくアジア地域で9月3日から10日にかけて開かれた「ITTF-アジア選手権」(韓国・平昌)が幕を閉じた。
 
男女の団体、シングルス、ダブルス、混合ダブルスの7種目を8日間で消化するアジア選手権はタイトなスケジュール。そのため試合経過や結果を追いきれなかった方も多かったことだろう。

そこで、あらためてアジア選手権を振り返りトピックをまとめるとともに、パリ五輪代表選考レースの状況も見ていきたい。

まず、日本のメダル獲得数は女子が団体銅とダブルス銅(木原美悠/長﨑美柚。ともに木下グループ)の計2個。男子はゼロに終わった。

男子団体は初戦の決勝トーナメント準々決勝でいきなり強敵の中国とあたる不運もあり、順位決定戦で5位に踏みとどまったが、2007年から続いてきた8大会連続メダルが途絶えた。

また、世界ランク4位のエース張本智和(智和企画)が試合前のウォーミングアップで利き手の親指あたりを痛め、本来の力を発揮できないアクシデントにもあった。

これが響いた張本は早田ひな(日本生命)とのペアで金メダルを狙った混合ダブルスも、中国の林高遠/王芸迪に準々決勝で敗退。林/王ペアは優勝した。

そして、シングルスに至っては自身初戦の2回戦で38歳のベテランで格下のノルージ(イラン)から1ゲームしか奪えず戦線離脱となった。

その一方で快進撃を飛ばしたのはアジア選手権初出場の田中佑汰(個人)だった。

度肝を抜いたのは世界ランク2位の王楚欽(中国)をフルゲームで破った男子シングルス2回戦。回転を読むのが難しい王のサーブを攻略し、逆に自分のサーブで先手を奪った。

団体戦で王とあたっていた張本から、王が勝負どころで使う巻き込みサーブについて「アップ系が多い」と助言を受けたこともアドバンテージになったという田中。

「メンタルの状態も良かった。王楚欽選手に勝った翌朝のアチャンタ選手との試合の方が雑念が入って難しかった。でも、そこでストレートで勝てたのは成長した部分だと思う」と話している。

続く4回戦も韓国の大砲イム・ジョンフンにゲームカウント3-1で勝利。

準々決勝であたった台湾のエース林昀儒にはサーブ・レシーブで先手を奪われストレートで敗れたが、日本の男子選手で唯一、中国トップ3の一角を崩しベスト8入りした田中は、パリ五輪代表選考ポイント40点とボーナスポイント10点を加算して獲得点数を302ポイントに伸ばし、4位から3位に浮上している。

これに対し、3位から4位に後退した篠塚大登(愛知工業大学)は男子シングルス4回戦で林高遠に敗れてベスト16。だが、中国人選手相手にフルゲームの大接戦に持ち込めたことは収穫となった。

また、同じくベスト16の戸上隼輔(明治大学)は4回戦で林昀儒にストレート負け。吉山僚一(日本大学)は3回戦で世界王者の樊振東にストレートで敗れベスト32という結果だった。

注目のパリ五輪男子代表争いは張本が569.5ポイントで依然として首位を独走中。アジア選手権で20ポイントを加算した戸上は404ポイントで2位につけている。

その戸上を102ポイント差で追うのが田中だが、戸上は今月23日に開幕するアジア競技大会(9月23~10月8日/中国・杭州)に出場できるためアドバンテージがある。

273ポイントで4位の篠塚にもアジア競技大会の出場権はない。そのため田中と篠塚は今年11月に行われる最後の国内選考会の全農CUP大阪大会(11月25~26日/Asueアリーナ大阪)と、年明け1月の全日本選手権(2024年1月22~28日/東京体育館)の2大会が代表選考ポイント獲得のラストチャンス。

2位の戸上が逃げ切りパリ五輪男子シングルスの代表権を死守するのか。それとも田中、篠塚を交えた三つ巴か。はたまた他の伏兵が追い上げてくるのか? 

火花散る代表選考レースはいよいよ佳境を迎える。


(文=高樹ミナ)

<アジア選手権 男子結果>

■団体
5位(張本智和、戸上隼輔、篠塚大登、吉山僚一、田中佑汰、松島輝空)

■男子シングルス
優勝:馬龍(中国)
準優勝:樊振東(中国)
3位:梁靖崑(中国)、林昀儒(台湾)
ベスト8:田中佑汰
ベスト16:篠塚大登 戸上隼輔
ベスト32:吉山僚一
ベスト64:張本智和

■男子ダブルス
優勝:樊振東/林高遠(中国)
準優勝:王楚欽/馬龍(中国)
3位:チャン・ウジン/イム・ジョンフン(韓国)、アン・ジェヒョン/パク・ガンヒョン(韓国)
ベスト8:田中佑汰/篠塚大登
ベスト32:吉山僚一/松島輝空

■混合ダブルス
優勝:林高遠/王芸迪(中国)
準優勝:梁靖崑/銭天一(中国)
3位:イム・ジョンフン/シン・ユビン(韓国)、林昀儒/陳羽思(台湾)
ベスト8:張本智和/早田ひな


※2023年の国際大会(個人種目)中国トップ3選手に勝利 7ゲームマッチ 1勝15点/5ゲームマッチ 1勝10点


■2024年パリ五輪選考ポイント
男子上位10名(2023年9月10日現在)

順位 選手名(合計ポイント)世界ランク
1位 張本智和(569.5)4
2位 戸上隼輔(404)41
3位 田中佑汰(302)60
4位 篠塚大登(273)29
5位 吉山僚一(208)224
6位 曽根翔(207)254
7位 宇田幸矢(183)44
8位 吉村真晴(170)77
9位 及川瑞基(152.5)47
10位 横谷晟 134(-)
※世界ランク updated on 12/9/2023

■2024年パリ五輪 日本代表選考ポイント