9月10日に25歳になった田中碧は、こんな抱負を話していた。「一年一年、あっという間にくるので、サッカー選手としてもそうですけど、人間として、もっともっと成長していけるような人生を歩みたいなと。 サッカーもそうですし、年齢にとらわれずに、…

 9月10日に25歳になった田中碧は、こんな抱負を話していた。

「一年一年、あっという間にくるので、サッカー選手としてもそうですけど、人間として、もっともっと成長していけるような人生を歩みたいなと。

 サッカーもそうですし、年齢にとらわれずに、いろんなものを挑戦し続けて、がんばりたいなと思います」



キャプテンマークを巻いて出場した田中碧

 25歳という年齢からくるものなのか、それとワールドカップメンバー選考直前のような、差し迫った緊張感がある時期ではないからなのか──。

 食事や睡眠などをストイックに管理し、常にサッカーと向き合うことで知られる田中が、サッカーだけでなく人生に言及したことは、印象的だった。

 その田中が25歳になって、初めて迎えたのがトルコ戦。まさかの「キャプテンマークを巻いて」の試合となった。

 キャプテンマークは試合中に巻いているだけで、さほど意味はない──。そう話す選手もいるが、田中にとっては少し違ったようだ。

「今日に関しては正直、自分のことを考える暇もなく、勝てばいいなと思いながらやっていた。なので、まぁ、ちょっとホッとはしていますね」

 少しはにかむような笑顔を見せながら話した。

 トルコ戦では、森保一監督が事前に宣言していたとおり、ドイツ戦から先発メンバー10人を入れ替えた。代表初先発の選手もいるなか、田中は少し気を遣ったと話す。

「まあ、そうですね、特に自分ができることは別にないですけど、周りの選手にのびのびやってもらおう、という意識も多少はありました」

 謙虚にそう話しつつ、続けて自身のプレーについて言及した。

「それでも、より自分自身のプレーのクオリティを上げてかなきゃいけないんで。まあ、まだまだやらないといけないな......というふうには思いますね」

 試合後に話をするなかで、実に6度「まだまだ」と繰り返した。課題を感じた試合にもなったようだった。

【田中碧が語るボランチのプレーについての考え方】

 この日の田中はボランチでプレー。トルコを相手に、いわゆるプレー強度、プレスのスピードなどで苦戦することもあり、ボールを奪いきれず、最終ラインをピンチにさらすこともあった。

 この日は伊藤敦樹とのダブルボランチ。伊藤の攻撃参加に対し、バランスを取る役割を担っていただけに、遠藤航や守田英正といった"守備職人"との違いが浮き彫りになった。

「守備に関しては最低限じゃないけど、戦うところだったり奪いきるところはより意識しているので、奪えることもあれば、逆に奪いきれなかったりもしました。

 特に後半になると、相手のメンバーが変わったのもありますし、僕自身の強度が少し落ちていくこともあったので、そこは反省材料。ああいうタフな相手に奪いきれるようにしていかないと」

 そう反省を口にし、ボランチのプレーについての考え方も明確にした。

「90分を通して、ボランチである以上、ボールを動かすことっていうよりも、そこ(奪いきること)は重要だと思う。2列目に攻撃的な選手がいる以上、その1個うしろでボールを奪えるというのは、カウンターも含めてチャンスになると思うので。そういう意味では、局面でボールを取るのはすごく僕自身に課していきたいなと思います」

 プレーの強度を高めるためには、どうしたらいいか。

「フルでどれだけ日頃からやれるかだと思います。その継続が最終的に、自分の成長につながる。球際の戦いで勝つ回数は増えていると思いますけど、それをいかに連続で、しかもそれを回数多くできるかは、特にボランチにとっては大事。そこの意識はより上げてかなきゃいけないと思いますね」

 自身の課題を強く感じる一方で、2連勝したチームの成長も感じている。

「(チームの成長の要因は)個々がより成長している部分もあると思います。自分もそこに追いつかなきゃいけないなと思いながら、半年がんばりたいなと思います」

 と、やや自虐的に話し、囲んでいる記者陣を笑わせた。

 田中の言う"半年"とは、つまり冬の移籍マーケットまでという意味。この夏の移籍がうまくいかなかったことを指している。

 ここで今回得た課題を、まずは自身が所属するデュッセルドルフで、ドイツ2部という日常のなかでいかに解決していくか──。その先にこそ、田中の目指す次の舞台が待っているはずだ。