(10日、ラグビー・ワールドカップ〈W杯〉フランス大会1次リーグD組 日本42―12チリ) 前半と後半にそれぞれ3トライ3ゴールを挙げた日本の戦い方は、試合を通して一貫していた。 PGは蹴らず、あくまでトライを奪いに行く。チーム五つ目のトラ…

(10日、ラグビー・ワールドカップ〈W杯〉フランス大会1次リーグD組 日本42―12チリ)

 前半と後半にそれぞれ3トライ3ゴールを挙げた日本の戦い方は、試合を通して一貫していた。

 PGは蹴らず、あくまでトライを奪いに行く。チーム五つ目のトライを決めたCTB中村が、その意図を明かした。「敵陣の22メートル内に入ったら、トライを取れるという分析ができていた」。初戦に備え、これまで対戦経験がなかったチリの映像を入手し、攻撃の狙いを入念に見定めてきた。

 全てが想定通りにいったわけではない。特に前半は、ゴール目前に迫りながら自分たちのミスで決め切れないシーンがあった。

 それでも、相手の反則でPKを得るとタッチキックを選択し続け、相手にじわりじわりとプレッシャーをかけた。前半終了間際のFWファカタバのトライは、貫いた姿勢が実った得点の一つだった。

 この日の試合運びにはもう一つ大事な側面があった。PGを蹴らなかったのはジョセフ・ヘッドコーチら首脳陣の一方的な指示ではなかったということだ。

 気の利いたキックを織り交ぜ、攻撃を組み立てたゲームキャプテンのSH流が振り返った。

 「PGを狙わず、全てタッチキックを蹴るというプランではなかった。フィールドの(選手たちの)感覚で、しっかりとリーダーが判断して進めていった。やるのは選手なので」

 スタッフらの周到な準備とそれを生かし切った選手たちの主体性が、「勝ち点5」という最高の結果をもたらした。(トゥールーズ=松本龍三郎)

■稲垣、節目の50キャップ

 FW稲垣が3度目のW杯で節目の代表50キャップを迎えた。試合前には両チームに先駆けて単独入場を許され、祝福を受けた。ラグビーでは笑顔を見せないことで知られる33歳は「光栄な気持ちです」。FW第1列として重要な役割を担うスクラムは試合を通して優位に立った。「しっかりトライを取って、ボーナスポイントを取れた。今日はそれが全て」といつもの冷静な口ぶりで振り返った。