(10日、ラグビー・ワールドカップ〈W杯〉フランス大会1次リーグD組 日本42―12チリ) このハードワーカーが今の日本に不可欠だと示した80分だった。けがから復帰したロックのファカタバが、初のW杯で躍動した。 チリに先行を許し、嫌な流れに…

(10日、ラグビー・ワールドカップ〈W杯〉フランス大会1次リーグD組 日本42―12チリ)

 このハードワーカーが今の日本に不可欠だと示した80分だった。けがから復帰したロックのファカタバが、初のW杯で躍動した。

 チリに先行を許し、嫌な流れになりかけた直後の前半8分。敵陣22メートル内のほぼ中央でSH流からボールを受けると、防御の隙を見逃さず斜めに走り切ってトライ。前半41分には、モールから体を回転させて抜け出し、ゴールに飛び込んだ。

 スコアが離れそうで離れないじりじりとした展開。30度を超える気温と、強い日差しが照りつけるグラウンドで互いに体力を消耗していたからこそ、前半終了間際のトライには大きな価値があった。

 トンガ出身の28歳は、ジョセフ・ヘッドコーチの信頼を勝ち取り、W杯前の国内強化試合には全5戦で先発してきた。チームが「トライ欠乏症」に陥っても、献身的な働きで結果を出し続けた。

 国内最終戦のフィジー戦で足首を負傷。それでも諦めずにリハビリを続け、バックアップメンバーからの昇格で、桜のジャージーをまとった。

 ふるさとに伝わるという、ある言葉を大切にしている。「GOING BIG OR GOING HOME(大きなものを目指しなさい。さもなければ家に帰りなさい)」

 勝利を手にしたファカタバは「信じられない。この場に立てたことを非常に素晴らしいと思っています」。一度は遠のきかけた目標の舞台で結果を出し、興奮気味に語った。(トゥールーズ=松本龍三郎)