ある少年が、フットボールの試合中にボールを抱えて駆けだした。ラグビー誕生の伝説から、ちょうど200年とされる年に、世界一を決めるワールドカップ(W杯)が10回目の幕開けを迎えた。 開幕戦は地元フランスが、過去3度の優勝を誇るニュージーラン…

 ある少年が、フットボールの試合中にボールを抱えて駆けだした。ラグビー誕生の伝説から、ちょうど200年とされる年に、世界一を決めるワールドカップ(W杯)が10回目の幕開けを迎えた。

 開幕戦は地元フランスが、過去3度の優勝を誇るニュージーランド(NZ)に1次リーグで初の黒星をつける歴史的勝利を果たした。悲願の初優勝を目指す開催国にとって、最高の形でのスタートとなった。

 2連覇を狙う南アフリカ、現在世界ランク1位のアイルランド、NZやオーストラリアなどを優勝候補に推す声は上がるが、どれも絶対的な存在とはいえない。大会前にフィジーが初めて競技発祥のイングランドを破るなど、地殻変動の音は聞こえている。

 世界のレベルが伯仲するなか、前回大会で初の8強進出を遂げた日本も「優勝」を公言するチームの一つだ。本番前の強化試合は1勝5敗と苦しんだ。初戦のチリ戦(10日)で、勢いに乗れるかが鍵を握る。

 初出場のチリは日本との対戦が一度もない。1次リーグの同組で唯一、世界ランクが日本より下だが、強豪チームとの対戦も少ないため、未知の部分が多い。

 不気味な相手との一戦を前に、日本は一昨年からの試合映像を全て入手し、分析を進めてきた。ジョン・ミッチェル防御コーチは「とても攻撃的な10番(SO)と15番(FB)がいる。9番(SH)はボール運びが非常にうまい」と警戒する。

 とはいえ、初戦で大切なのは緊張にのまれず本来のプレーをすること。主将の姫野和樹は「何も不安になることはない。積み上げてきたことを信じ、仲間を信じ、自分を信じることが大事だ」と力を込めた。

 選手の健康を重視する観点から頭部付近へのハイタックルが厳罰化されており、退場者が相次ぐ事態も予想される。これまで以上に、高い規律が求められる大会になりそうだ。(トゥールーズ=松本龍三郎)