ラグビーワールドカップ2023フランス大会は8日(日本時間9日)、「フランス vs. ニュージーランド」で開幕した。 ジャパンの初戦も9日(同10日)に迫った。2019年の自国大会ではアイルランド、スコットランドを撃破し、プール戦全勝で初の…

ラグビーワールドカップ2023フランス大会は8日(日本時間9日)、「フランス vs. ニュージーランド」で開幕した。

ジャパンの初戦も9日(同10日)に迫った。2019年の自国大会ではアイルランド、スコットランドを撃破し、プール戦全勝で初のベスト8進出を果たした。ジャパンのスコッドは、あの感動をもう一度、再現してくれるのか。

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ジャパンは、7〜8月に行われた前哨戦6試合を1勝5敗と大きく負け越した。8月26日のイタリア戦は21-42という、よもやのダブルスコア。しかも、試合終盤まで21-28と食い下がりながら、終了直前に2トライ(2ゴール)で突き放されるという最悪の展開だった。せめて、本番ではボーナスポイントの対象となる7点差は死守してほしかった。

ジャパンにとって、プール戦突破は最低目標。選手や関係者は「優勝」の二文字も、たびたび口にしてきた。しかし、ここ2カ月でワールドランキングも14位に落としてしまった。いったい、どのようなシナリオを描けばいいのだろうか。

■ファレルを欠くイングランド戦が最大のポイント

ジャパンにとってチャンスなのは、初戦の相手がチリという点。チリは参加20カ国中、ランキングは24位と最下位。唯一の初出場チームだ。よもやこのチームに苦戦することはないだろう。今までできなかった自分たちのラグビーを取り戻すには格好の相手といえる。大量得点で圧勝し、メンタル面でも勢いをつけたいところだ。

最大のポイントは、2戦目(日本時間18日)のイングランド戦とみる。当然、アルゼンチンやサモアよりも格上の実績国だが、チームの調子はまったく上がっていない。過去に負けたことがなかったフィジーに完敗し(22-30)、最新のランキングではアルゼンチン6位に対して8位と下位に甘んじる。

しかも、キャプテンのオーウェン・ファレル(SO)がレッドカードの制裁で出場できない。自信を失ったチームが精神的支柱を欠いた状態だ。つけ込むチャンスは十分にあるとみる。チリ戦からの連勝となれば、最高だ。

■プール突破のライバル・サモアは実力互角

第3戦(同29日)のサモアは、前回大会で一蹴したチーム。ファンのなかには楽な相手という認識があるかもしれない。しかし、ランキングは12位とジャパンより上。実際、7月22日に札幌ドームで行われた試合は22-24で競り負けた。8月27日にはランキングトップのアイルランドの胸を借り、13-17と接戦を演じている。

近年の明らかな傾向として、トップチームと下位チームの差が縮まったことが挙げられる。その象徴がフィジーやサモアだろう。現段階でジャパンとは、ほぼ互角の力とみる。当然、プール戦突破のライバルだ。ディシプリンを保ち、勝利への執念が勝ったほうが勝利を手にする。

■ボーナスポイントと得失点差が鍵か

プールDの中で、もっとも安定しているのがアルゼンチンだ。南半球4カ国で揉まれ、ワールドカップに向けて着実に実力をつけてきた。かつては荒っぽいフォワード戦が得意だったが、オフロードパスを絡めたスタイリッシュなライン攻撃に磨きがかかった。ベスト8に進出する可能性は高いだろう。

混戦の大会の中でも、プールDは大混戦。ジャパンとしては、アルゼンチンとの最終戦(同10月8日)までにトーナメント戦進出を決めておきたい。そのためには勝利、敗戦に関わらずボーナスポイントを獲得することが重要だ。また、2勝2敗で複数のチームが並べば、得失点差でのジャッジも考えられる。試合終了のホイッスルまで貪欲に戦ってほしい。

なお、チリ戦のハーフは流大と松田力也、センターは中村亮土とディラン・ライリーというコンビになった。また、サポートメンバーから繰り上がった下川甲嗣がフランカーで先発出場する。まずは、チリ戦での大量得点に期待だ。

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著者プロフィール

牧野森太郎●フリーライター

ライフスタイル誌、アウトドア誌の編集長を経て、執筆活動を続ける。キャンピングカーでアメリカの国立公園を訪ねるのがライフワーク。著書に「アメリカ国立公園 絶景・大自然の旅」「森の聖人 ソローとミューアの言葉 自分自身を生きるには」(ともに産業編集センター)がある。デルタ航空機内誌「sky」に掲載された「カリフォルニア・ロングトレイル」が、2020年「カリフォルニア・メディア・アンバサダー大賞 スポーツ部門」の最優秀賞を受賞。