中央アジア・カザフスタンのアルマトイで1日にあった世界アームレスリング選手権大会の左腕90キロ級に、山形市のトレーニングジム経営、植松政憲さん(42)が初めて出場し、6位に入った。世界の猛者たちを相手に、目標のメダルは獲得できなかったが、…

 中央アジア・カザフスタンのアルマトイで1日にあった世界アームレスリング選手権大会の左腕90キロ級に、山形市のトレーニングジム経営、植松政憲さん(42)が初めて出場し、6位に入った。世界の猛者たちを相手に、目標のメダルは獲得できなかったが、次の大会につながる試合内容だった。

 この階級には、オーストラリア、ブルガリア、ジョージア、イラン、日本、カザフスタンの6カ国10人の選手がエントリーした。植松さんは今年6月の国内の選手権大会を制覇し、主催団体からの要請を受けての出場だった。

 日の丸を背負う思いから、髪を赤く染め、万全の体調で臨んだ。初戦の相手はジョージア選手。台上で手を握り合い、3度目の仕切りで一気に腕を持っていかれた。

 敗北。「これが世界選手権か」。米国で国際大会の出場経験があり、「メダルを取りに行く」と意気込んだ選手権大会だった。だが、レベルの違いに衝撃を受けた。

 ただ、こうも思った。

 「負けてからが自分の人生。リベンジだ」

 実力ではるかに及ばない強打者の同級生がいた高校野球部、大けがをして3階級制覇の夢がかなわなかった一昨年の国内の選手権大会決勝。挫折を繰り返しながらも、その都度、はい上がってきた人生を振り返った。

 敗者復活戦の相手はイラン選手だ。「勝たないと、ここに来た意味がない」と気を取り直し、意地を見せた。試合会場からは、自身が代表を務めるアームレスリングチーム「SAFARI(サファリ)」の仲間の歓声が上がった。

 勝利。雄たけびとともに、右腕を突き上げた。「相手の手に向かって、自分の力をうまくぶつけることができた」

 あと続けて3回勝てば、銀メダル以上が確定し、決勝に出られる。それを阻んだのは、アームレスリング王国・カザフスタンの選手だった。

 自分よりも手のひらが一回りも大きい。組むと、相手選手の指が自分の手の甲を覆うほどだ。「これは勝負になりませんでした」。格段に強い相手の指の力を感じ、敗れた。

 結果は1勝2敗で敗退したものの、6位に食い込んだ。前回大会で2位だった選手が9位に沈むなど、今大会は日本国内の大会では見られないようなレベルの高い選手がそろっていたという。

 植松さんを破ったカザフスタン選手は勝ち進み、準優勝だった。優勝したのは著名なブルガリア選手。植松さんは世界のトップとの力の差を目に焼き付けた。

 帰国後、さっそく自身の練習内容を見直した。「今までは腕や背中などの筋トレが中心だった。そうしたこれまでのメニューには限界があるかもしれない」。手首から先の鍛錬、特に指の力の強化が必要だと痛感している。

 「今大会の1勝は次につながる、価値のある勝利だったと思う」

 来年の国内選手権を制し、再び世界選手権に挑戦するつもりだ。目標は「オーバー・ザ・トップ」。世界のてっぺんを極める。(辻岡大助)