2年に一度のアジア王者決定戦「ITTF-アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)」<9月3~10日/韓国・平昌>が平昌ドームで開幕した。前回、カタール・ドーハで開かれた2021年大会は中国がコロナ対策で出場を辞退したこともあり、日本の早田…

2年に一度のアジア王者決定戦「ITTF-アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)」<9月3~10日/韓国・平昌>が平昌ドームで開幕した。

前回、カタール・ドーハで開かれた2021年大会は中国がコロナ対策で出場を辞退したこともあり、日本の早田ひな(日本生命)が女子シングルスと混合ダブルス、団体を制して3冠に輝く大車輪の活躍を見せた。

その日本は今大会も早田を含む女子7人、男子は6人が出場。男子団体は4日に行われた初戦の準々決勝で中国に敗れ順位決定戦に回ったが、女子団体は初戦でインドを破り準決勝に進出。

シングルスおよびダブルス、混合ダブルスとともに打倒中国、そしてアジアの頂点を目指す。

中でもパリオリンピック代表選考ポイントがかかっているシングルスは力が入る。上位入りすれば大量得点が狙えるためだ。

■アジア選手権のパリ五輪代表選考ポイント
1位:160ポイント
2位:120ポイント
3-4位:80ポイント
5-8位:40ポイント
ベスト16:20ポイント
ベスト32:10ポイント
※中国トップ3選手に勝利:今回は5ゲームマッチで1勝につき10ポイント

今大会には中国が復帰し優勝へのハードルは上がった。

打倒中国を誓う日本代表メンバーは男子が張本智和(智和企画=世界ランク4位)、篠塚大登(愛知工業大学=同28位)、戸上隼輔(明治大学=同44位)、松島輝空(木下アカデミー=同50位)、田中佑汰(個人=同69位)、吉山僚一(日本大学=同205位)。

女子は早田ひな(日本生命=同7位)、伊藤美誠(スターツ=8位)、平野美宇(木下グループ=同14位)、張本美和(木下アカデミー=同17位)、木原美悠(木下グループ=同23位)、長﨑美柚(木下グループ=同29位)、佐藤瞳(ミキハウス=同-位)という布陣。

対する中国代表は男子が世界ランク1位で世界王者の樊振東(同1位)、次世代エースの王楚欽(同2位)、オリンピック2連覇の馬龍(同3位)、梁靖崑(同6位)、林高遠(同7位)。

女子は世界ランク1位の孫穎莎(同1位)、東京オリンピック金メダルの陳夢(同2位)、陳幸同(同3位)、王芸迪(同4位)、王曼昱(同5位)といったおなじみの顔ぶれだ。両チームの各種目出場選手およびペアは次の通り。

■日本代表選手のエントリー種目
男子団体:張本智和、戸上、篠塚、吉山、田中
女子団体:早田、平野、伊藤、木原、佐藤
男子シングルス:張本、戸上、篠塚、吉山、田中
女子シングルス:早田、平野、伊藤、木原、佐藤
男子ダブルス:田中/篠塚(戸上/篠塚から変更)、吉山/松島
女子ダブルス:平野/張本美和、木原/長﨑
混合ダブルス:張本智和/早田

■中国代表選手のエントリー種目
男子団体:樊振東、王楚欽、馬龍、梁靖崑、林高遠
女子団体:孫穎莎、陳夢、陳幸同、王芸迪、王曼昱、銭天一
男子シングルス:王楚欽、樊振東、馬龍、林高遠、梁靖崑
女子シングルス:孫穎莎、陳夢、王芸迪、王曼昱、陳幸同
男子ダブルス:樊振東/林高遠、馬龍/王楚欽
女子ダブルス:孫穎莎/王芸迪、陳夢/王曼昱
混合ダブルス:梁靖崑/銭天一、林高遠/王芸迪

いよいよ佳境を迎えるパリオリンピックの代表争いは、男子は張本、女子は早田の独走状態が続いている。

首位に立つ張本は569.5ポイント獲得で、2位戸上の384ポイントと185.5ポイント差。早田に至っては600.5ポイントの大量得点で、2位平野の400ポイントに200.5ポイントの大差をつけている。

「今大会でベスト4以上に入れば確定すると思っています。メダルを獲得できれば必然的に代表枠も確定してくると思うので、結果は後から付いてくると思います」と話すのは張本。

早田も近づいてくる待望のオリンピック初出場を意識し、「昨日よりも自分が1日でも成長してることを実感しながら今は毎日練習を頑張っていて、パリオリンピックに出た時に自分自身がどういった状態で戦えるかを逆算してやっています」と語っている。

その張本と早田がペアを組む混合ダブルスは大会3日目の5日にスタート。2人は2回戦からの登場で、順当に勝ち上がれば準々決勝で林高遠/王芸迪(中国)との対戦が濃厚だ。

強敵の林高遠/王芸迪を下し準決勝へ進んだ場合、次なる相手はジャン・ウジン/チョン・ジヒ(韓国)、林昀儒/陳思羽(台湾)のいずれかになる可能性が高い。

そして決勝に駒を進めれば、おそらく梁靖崑/銭天一(中国)との頂上決戦が待つ。張本/早田が狙うのは世界卓球2023南アフリカで果たせなかった金メダル獲得のみだ。

大会4日目の6日からはシングスとダブルスが始まる。

女子は早田、伊藤、平野、張本美和、佐藤瞳がいずれも2回戦からで、今大会エースの早田は準々決勝まで勝ち上がるとトップシードの孫穎莎(中国)と対戦する組み合わせだ。

2人の直近の対戦はWTTスターコンテンダーリュブリャナ(2023年7月3〜9日/スロベニア)の準々決勝で、この時は早田が孫穎莎を追い詰めたものの、最後は3-2のフルゲームで孫穎莎が勝った。過去の対戦成績は孫穎莎の7戦全勝。

また、世界卓球では準々決勝で王芸迪との死闘を制した翌日、孫穎莎に負けたことから、早田は今回のアジア選手権で「シングルスで中国人選手を2回倒すことが目標」と話している。

パリオリンピック代表選考レースの2番手につける平野は順当に勝ち上がると、最初の山場を迎えるのは4回戦の陳幸同(中国)になることが濃厚だ。

両者の対戦は2021年12月のWTTカップファイナル以来、約1年9カ月ぶり。

大会前、「シングルスではパリオリンピックの選考ポイントにもかかってきて、とても大事な大会だなと思って準備してきました。それを発揮したいと思っています」と話していた平野。

今シーズンは7月のWTTコンテンダー・ザグレブで世界女王の孫穎莎を倒し優勝するなど絶好調の"ニュー・ハリケーン"。快進撃に期待したい。

男子シングルスは田中以外、張本智和、戸上、篠塚、吉山僚一が2回戦から。

エース張本は準々決勝に駒を進めると梁靖崑と対戦する可能性が高い山に入った。だがその前にも4回戦でおそらくあたる台湾の大ベテラン荘智淵(台湾)は油断大敵だ。

ちなみに2021年以降、張本は負けなしで過去の対戦成績も5勝3敗と勝ち越している。

そして、準々決勝で梁靖崑との対戦が実現すれば、張本にとっては世界卓球2023南アフリカ準々決勝で惜敗したリベンジマッチ。雪辱を果たしたい。

パリオリンピック代表選考レースで2番手につける戸上の最初の山場は4回戦か。おそらく林昀儒(台湾)が勝ち上がってくるだろう。

気かがりなコンディションはまだ本調子とは言えないが、しっかり準備はしてきた。

「アジア選手権でもポイントを獲得できるチャンスがある。張本選手との差もまだまだあるので、ここで縮めることができたらなと思います」と意気込みを口にし、銅メダルを獲得した2年前の前回大会同様、メダルを目指す。

パリオリンピック代表選考レース3番手で戸上を追う篠塚は準々決勝まで勝ち上がると林高遠との対戦が濃厚な山に入った。

吉山僚一は3回戦でトップシードの樊振東とあたる可能性が大きい。両者は初対戦。

唯一、1回戦からの田中は初戦を勝つと2回戦の相手は世界ランク2位の王楚欽だ。初対戦だが今シーズン、勢いのある田中が中国の若手エースにどこまで食い下がるか注目したい。

 
ダブルスは女子の平野/張本美和、木原/長﨑ともに優勝を狙えるペア。どちらも2回戦からで、平野/張本美和は順当に勝ち上がると準々決勝で孫穎莎/王芸迪との対戦が濃厚。

木原/長﨑は準決勝で陳夢/王曼昱とあたる可能性が高い。

男子は戸上に代わって急きょ、田中が篠塚とペアを組むことになったが、2人は愛知工業大学の先輩と後輩。互いのプレーをよく知る仲で急ごしらえのペアでも不安はなさそうだ。

篠塚/田中は1回戦からで、最初の山場はおそらく準々決勝に勝ち上がってくるアン・ジェヒョン/パク・ガンヒョン(韓国)。ダブルスに定評のある韓国勢に一矢報いたい。

吉山僚一/松島の若手ペアは2回戦からだが、いきなり手強いグナナセカラン/アチャンタ(インド)と対戦。これに勝つと3回戦の相手はさらなる難敵、トップシードのジャン・ウジン/イム・ジョンフン(韓国)になるだろう。のっけから厳しい戦いを強いられる。

2021年の前回大会、4種目を制覇し大会史上最多の9個のメダルを獲得した日本。世界最強の中国が出場している今大会、どれだけ中国に迫れるか真価が試される。


(文=高樹ミナ)