2年に一度のアジア王者決定戦「ITTF-アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)」<9月3~10日/韓国・平昌>が平昌ドームで開幕する。世界最強の中国をはじめ地元韓国や台湾など強豪ぞろいのアジア地域。2017年の中国・無錫大会で中国の牙城…

2年に一度のアジア王者決定戦「ITTF-アジア卓球選手権大会(以下、アジア選手権)」<9月3~10日/韓国・平昌>が平昌ドームで開幕する。

世界最強の中国をはじめ地元韓国や台湾など強豪ぞろいのアジア地域。

2017年の中国・無錫大会で中国の牙城を崩し、女子シングルスを制した平野美宇(木下グループ)が「アジアを制する者は世界を制する。それぐらいレベルが高い」と言うほど、アジア選手権は勝つのが難しい大会だ。

前回、カタール・ドーハで開かれた2021年大会は中国がコロナ対策で出場を辞退したこともあり、日本の早田ひな(日本生命)が女子シングルスと戸上隼輔(明治大学)との混合ダブルス、団体を制して3冠に輝く大車輪の活躍を見せた。

その日本は今大会も早田を含む女子7人、男子は6人が出場し、男女団体およびシングルスとダブルス、混合ダブルスの7種目でアジアの頂点を目指す。

中でもシングルスはパリオリンピックの代表選考ポイントがかかっており、上位に入れば大量得点が狙えるため力の入る一戦だ。

だが、今大会には中国が復帰し優勝へのハードルは上がった。

ちなみに中国は前回大会の成績が無いため団体戦のシードを得られず、予選リーグから「チャンピオンディビジョン」と呼ばれる8チームの決勝トーナメント進出を目指す。

打倒中国を誓う日本代表メンバーは男子が張本智和(智和企画)、戸上、篠塚大登(愛知工業大学)、吉山僚一(日本大学)、田中佑汰(個人)、松島輝空(木下アカデミー)。

女子は早田ひな(日本生命)、平野美宇(木下グループ)、伊藤美誠(スターツ)、木原美悠(木下グループ)、佐藤瞳(ミキハウス)、長﨑美柚(木下グループ)、張本美和(木下アカデミー)という布陣。

対する中国代表は男子が世界ランク1位で世界王者の樊振東、次世代エースの王楚欽、オリンピック2連覇の馬龍、林高遠、梁靖崑。

女子は世界ランク1位の孫穎莎、東京オリンピック金メダルの陳夢、王芸迪、王曼昱、陳幸同といったおなじみの顔ぶれだ。両チームの各種目出場選手およびペアは次の通り。

各種トーナメント表

●日本代表選手のエントリー種目
男子団体:張本智和、戸上、篠塚、吉山、田中
女子団体:早田、平野、伊藤、木原、佐藤
男子シングルス:張本、戸上、篠塚、吉山、田中
女子シングルス:早田、平野、伊藤、木原、佐藤
男子ダブルス:田中/篠塚(戸上/篠塚から変更)、吉山/松島
女子ダブルス:平野/張本美和、木原/長﨑
混合ダブルス:張本智和/早田

●中国代表選手のエントリー種目
男子団体:樊振東、王楚欽、馬龍、梁靖崑、林高遠
女子団体:孫穎莎、陳夢、陳幸同、王芸迪、王曼昱、銭天一
男子シングルス:王楚欽、樊振東、馬龍、林高遠、梁靖崑
女子シングルス:孫穎莎、陳夢、王芸迪、王曼昱、陳幸同
男子ダブルス:樊振東/林高遠、馬龍/王楚欽
女子ダブルス:孫穎莎/王芸迪、陳夢/王曼昱
混合ダブルス:梁靖崑/銭天一、林高遠/王芸迪

2年前の前回大会。早田、長﨑、佐藤、芝田沙季(ミキハウス)、安藤みなみ(トップおとめピンポンズ名古屋)というメンバーで実に47年ぶりの団体金メダルに輝いた女子日本は今大会、トップシードから2連覇を狙う。

最大の壁はもちろん中国だ。

大会前半に行われる団体戦はシングルス最大5本のうち3点先取したチームに軍配が上がる。

中国は世界卓球2023南アフリカ2冠の女王・孫穎莎を筆頭に、東京オリンピック金メダルの陳夢、世界卓球2023南アフリカ女子シングルス準々決勝で早田と死闘を繰り広げ惜敗した王芸迪、世界卓球2021ヒューストンを制した王曼昱、最新の世界ランク3位につける陳幸同ら誰と当たっても手強い。

だが、日本にも過去最強と言っていいメンバーが揃う。

世界卓球2023南アフリカ女子シングルス銅メダルの早田をはじめ、パリオリンピック代表選考レース2番手につけ好調の平野、東京オリンピック3種目メダル獲得の伊藤、次世代エース候補の木原、日本が誇るカットマンの佐藤がそれぞれ力を発揮できれば、鉄壁の中国に風穴を開ける可能性は決して低くない。

一方、前回大会は戸上、篠塚、吉村和弘(ケアリッツ・アンド・パートナーズ)、村松雄斗(La.VIES)、木造勇人(関西卓球アカデミー)というメンバーで銅メダルだった男子は第4シードから上位進出と金メダルを目指す。

中国以外にも難敵は多い。団体戦に定評のあるトップシードの韓国、林昀儒をエースに据える第2シードの台湾、さらに第3シードのインドも個性的なプレーが特長の難しいチームだ。

しかし今大会、日本には世界ランク4位のエース・張本がいる。
 
7月下旬に新シーズンが開幕したTリーグで早くも勝利数9を挙げ個人成績トップに立つ張本は状態が良く、8月31日の出国前には「自分が2点を取るのはマストですし、チームメートを勝たせるために自分の知っている相手の戦術だったりプレーを伝えることも大事」と話し、「自分のプレーだけではない部分も求められると思うので、自分の点は確実に取りチームの雰囲気も上げていきたい」とエースの自覚を口にした。

もちろん団体戦は一人では勝てない。

前回大会、宇田幸矢(明治大学)とのペアで男子ダブルス、早田とのペアで混合ダブルス2冠に輝いた戸上や腰痛から復調した篠塚、さらにパリオリンピック代表選考レースで3番手と勢いのある田中、10代の成長株・吉山僚一らの1点がものをいう。

鍵を握るのは組み合わせだ。

女子の初戦=準々決勝はインドに決定。これを突破すると準決勝はシンガポールと予選を勝ち上がってきたチームの勝者と対戦することになる。

予選から勝ち上がってくるのは2チームで、そのうち1チームは中国になる可能性が極めて高い。中国が同じ山に入るか、もしくは反対側の山に入る場合もあり、どちらになるかは大きな差と言えるだろう。

男子は初戦で予選組2チームのうち、いずれかと対戦する。

男子もやはり中国が予選から上がってくる可能性が高く、その場合、日本か韓国が中国と初戦であたることになる。もし韓国と中国があたった場合、日本はいずれか勝ったチームと準決勝を戦うが、どちらになっても簡単ではない。

女子18チーム、男子20チームがしのぎを削るハイレベルな団体戦。日本は男女とも大会2日目の9月4日、準々決勝から登場する。


(文=高樹ミナ)