(27日、バスケットボール・男子ワールドカップ 日本98―88フィンランド) この河村勇輝を、日本中のファンが待ち望んでいた。 第4クオーター(Q)の残り5分を切った場面。ドリブルで相手の体勢を崩すと、切り返して一気に抜き去った。ファウルを…

(27日、バスケットボール・男子ワールドカップ 日本98―88フィンランド)

 この河村勇輝を、日本中のファンが待ち望んでいた。

 第4クオーター(Q)の残り5分を切った場面。ドリブルで相手の体勢を崩すと、切り返して一気に抜き去った。ファウルをされながら右手で球を制御し、リングにねじ込む。このフリースローも決め、スコアは79―78。最大18あった点差を、ついにひっくり返した。

 試合終了のブザーの時が迫る中、「ただただ、リングを見続けていた」という。

 40秒後にはドリブルで相手を揺さぶり、3点シュートを沈めた。さらに1分後にもパスの出先を探しているように見せたかと思えば、素早い動きから3点シュートを決めた。

 たった1人で25得点。172センチのポイントガードが世界ランクで12も上位の強豪を手玉に取った。

 エースだった福岡第一高で、日本一になった回数は4度。進学した東海大を中退し、昨季のBリーグからはプロ契約選手として参戦した。機敏なフットワークを生かして1試合平均19・5点を稼ぎ、さっそくMVPに輝いた。

 25日のドイツ戦で、ワールドカップ(W杯)デビュー。だがパスミスなどを連発し、シュートを打つ前に相手に攻撃権を渡す「ターンオーバー」をチーム最多の四つ犯した。

 それでも感じた。トム・ホーバス監督や仲間、ファンからの変わらぬ信頼を。「(きょうは)信じてくれた思いだけで打てたシュートかな」と力に変えた。

 試合後のロッカールームで、ある選手に近づいた。このW杯でパリ五輪のアジア出場枠をつかめなければ、代表を引退すると宣言していた渡辺雄太だ。「雄太さん、まだまだ引退させませんよ」。人一倍の重圧を背負う日本で唯一のNBA選手に優しく声を掛けた。

 その心遣いは報道陣にも。取材場所に現れるや否や、報道陣に詰め寄られ、仕切りの柵が倒れかけた。

 「ああ、大丈夫ですか? 気を付けてください。(取材には)大きな声で話します」

 どこまでも優等生な22歳が、そこにいた。(高橋健人)

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 河村 第4クオーターに4本全ての3点シュートを決めるなど25得点。「勝ちたい執念だけだった。40分間、流れが来ることを信じて戦い続けた」

 富永 効果的な3点シュートを4本成功。同じ22歳の河村とともに勝利に貢献し、「若いエネルギーで勝利に導けた」。