木村和久の「新・お気楽ゴルフ」連載◆第29回どんどん暑くなる夏。やがては防護服のようなものを着用してゴルフをすることになるかも...。illustration by Hattori Motonobu 今年の夏もかなり暑いですね。35度以上の…

木村和久の「新・お気楽ゴルフ」
連載◆第29回



どんどん暑くなる夏。やがては防護服のようなものを着用してゴルフをすることになるかも...。illustration by Hattori Motonobu

 今年の夏もかなり暑いですね。35度以上の猛暑日は毎年増加しており、あと10年ぐらいしたらどんな夏になるのか? ものすごく心配しています。

 こうなってくると、もはやゴルフをやるのも命がけです。実際に今年の7月には、埼玉県で歩きラウンドによるアマチュア競技において、熱中症を起こした方が亡くなられています。

 やはり、気温35度を超える炎天下で、5時間も歩いてゴルフをするのはどうなんでしょうか? そうしたことも鑑みて、今回はいろいろと問題のある"夏のゴルフ"について、自ら反省会をしたいと思います。

(1)危うい夏場の競技
 そもそもプロのトップツアーの試合は、夏場に関東の平野部ではほとんど開催しません。プレーする選手はもちろん、大会を運営するスタッフも、観戦に訪れるギャラリーも大変ですからね。そのため、基本的に夏の試合は北海道や軽井沢など涼しいところで開催されます。

 プロがそうなのですから、アマチュア競技も関東の平野部にあるコースでは開催しないほうがいいと思うのですが......。いまだに開催している倶楽部は結構あるようです。

 競技の開催を決める人は、それぞれの組織の重鎮で年配者が多いです。そういう人たちは、昔の感覚で「ゴルフは歩いてやるもんだ。若い頃は暑くてもワンハン(※1ラウンド+ハーフラウンド回ること。計27ホールラウンドすること)をやった」などと思っており、現在の酷暑のことがよくわかっていません。感覚にズレが生じていることは明らか。

 開催を決定する人は一度、夏の炎天下での歩きのラウンドを体験したほうがよろしいかと思います。そして、そのつらさを、身をもって体感したほうがいいかな、と。そうすれば、夏場の競技を開催することの危うさがわかるのではないでしょうか。

 とにかく、気温35度を超えて熱中症アラートが出ている時は、歩きのゴルフは控えましょう。乗用カートを使用するにしても、最高気温に達する時間帯を避けてラウンドするなど、工夫が必要かと思います。

(2)最新の暑さ対策
 私は、PGMという大手ゴルフ場チェーンが運営する倶楽部のメンバーになっています。同倶楽部では、今年から『Cool Cart(クールカート)』なる送風機を搭載した乗用カートが導入されました(台数限定)。

 今夏のラウンドでは、同カートをすでに3回利用しました。35度超えの猛暑日にも使いましたが、冷風が気持ちよくて体もラク。マジで、高原でゴルフをやっているみたいない感覚で非常に快適でした。

 しかも、コース状態がよければ、フェアウェーへの乗り入れが可能。移動の疲れはほとんどありません。このクールカートが今後、夏ゴルフの救世主となる可能性は高いです。

 クールカートに設置されている送風システムは、PGMの親会社である(株)平和との共同開発。ですから、系列以外のコースまで出回ることはないかもしれませんが、送風機のシステム自体はさほど複雑なものではありません。

 そういう意味では、どこぞのベンチャー企業が開発して、各コースに売り込むのはアリでしょう。現に、似たような送風システムがもう出回っていますからね。

(3)危険な熱中症
 夏ゴルフの天敵である熱中症は、気づかないうちになってしまう......といったケースが多いので、早めの対応が重要です。

 一番わかりやすい予兆は、頭痛です。炎天下で思いきりドライバーを振り回したあと、こめかみ辺りに"ピキッ~"って、痛みが走ったりすることがあるでしょ。それが、危険信号のひとつです。

 以前、軽めの頭痛になりましたが、ラウンドの終わり頃だったので、水分を補給してなんとか切り抜けることができました。でも、熱中症の頭痛は一旦起こると収まりづらいので、1~2ホールやってみて、キツいままだったらリタイヤしたほうがいいかと思います。

 あと、昼間の暑さを超えた頃にやってくるダルさ。これが、すごく危険です。午後になり、日差しのピークを超えた頃、ドーンとやってきます。やれやれと思っていると、体の力が急に抜けて、しかも「フラフラするな」という感覚に陥りますから。

 こうしたことは、水分不足、カリウムなどのミネラル不足、そして体内の温度上昇により、循環機能が低下することで起こります。この段階で熱中症なのは確かですから、休むべきでしょう。

 以前、意外な場所で熱中症の人を目撃しました。ホールアウトしてから、お風呂に入る際に倒れて、救急車で運ばれていったのです。

 その人が床に倒れた時、ものすごい音がしました。急に意識が遠のいていったのでしょう。それを思うと、もし調子が悪くなったら、家に帰るまで注意しておくべきでしょうね。

(4)熱中症対策
 熱中症対策で効果的なのは、体を冷やすこと。人間の体はバイクのエンジンみたいなもので、熱くなったら水か空気で冷やせばいいのです。

 水分補給をして体内から冷やすか、送風機や扇風機などで体の外から冷やすか。もちろん、その両方をやるのがベストです。

 というわけで、今年一番役立ったアイテムは、氷のうです。今は「アイスバック」と呼ばれていますが、それを首や頭、脇の下などに押しつけて体を冷やします。これが、実に効果的です。

 1ホールごと、あるいは一打ごとにアイスバックを体に当てておけば、かなりの熱中症対策になります。

 しかし、今年はアイスバックの氷がすぐにとけてしまうほどの猛暑。ハーフも持たずに、1時間ほどでとけてしまう。それぐらい暑いです。

 そんなですから、クラブハウスでの氷の争奪戦が熾烈です。プレー直前、キャディーマスター室前に置かれたアイスボックスから氷を入れようとたら、氷がなかったこともしばしば。仕方がなく、レストランまで行って氷をもらったりしていました。

 熱中症対策と言えば、扇風機付きベストを着ている人を今年はチラホラ見かけました。これは、作業服などを扱う大手チェーン『ワークマン』などで売られているもので、服のなかに風を送り込んで、体を冷やすシステムです。

 バッテリーの持ちがよく、見た目以上に涼しいと評判です。ただ、服が膨張するので、太った体型の人には向いていないかも......。だとしても、太った人にこそ、着てもらいたいわけで、何かやるせない気持ちになります。

(5)足がつった時のケア
 最近、家で過ごしていてもよく足がつります。俗に言う、こむら返りです。その強烈なやつが、2~3カ月に一度あります。

 ゴルフ場でも足がつりそうになると、ピクピクと痙攣の始まりみたいなことが起こります。その時、効果的だったのは塩アメです。あれを2つ、3つ頬張り、水分を多めに摂取すると、ピクピクが収まりました。

 足を気にしていると、今度は手の指がピクピクし出したこともあります。水分やミネラル分が知らないうちに(体のなかから)失われているんですね。

 個人的にはお茶が好きなので、塩分が不足がち。今はゴルフ場以外でも、仕事場や家にも塩アメを常備して、時折舐めるようにしています。おかげで、最近は足がつることがなくなりました。塩アメ、偉大ですね。

(6)残暑に注意
 夏の暑さは「8月まで」と思って、この先、熱中症ケアを疎かにすると、またとんでもないことが置きます。くれぐれも注意しましょう。

 たとえば、ペットボトルの水とかですね。ラウンド中、次のお茶屋までは持つだろうと思ってプレーしていると、その前に飲み干してしまい、水分不足に陥ることがあります。

 昔はゴルフ場のいたるところに水道の蛇口や浄水器が置いてありましたが、今はそういうのが減りました。だから、飲み物は余分に持っていることが大事です。

 みなさん、9月からも気を引き締めてゴルフをしてください。残暑、結構厳しいですよ。