7月15日、ニッパツ三ツ沢球技場。J2リーグ11位の横浜FCは18位のFC岐阜を1-0で下している。横浜は暫定で5位に浮上。J1昇格プレーオフ圏内(6位以内)にカムバックした。ここまで横浜FCの攻撃を牽引してきたイバ「自分たちがボール…

 7月15日、ニッパツ三ツ沢球技場。J2リーグ11位の横浜FCは18位のFC岐阜を1-0で下している。横浜は暫定で5位に浮上。J1昇格プレーオフ圏内(6位以内)にカムバックした。



ここまで横浜FCの攻撃を牽引してきたイバ

「自分たちがボールを持って攻めたが、決めきれず、失点してしまった。その前後のメンタルが差として出た。横浜のサッカーはPRACTICOだった」

 岐阜のゴールマウスを守ったスペイン人GKビクトルは、試合の流れを端的に説明している。「PRACTICO」は現実的な、実利的な、という意味である。効率的だったということだろう。

 では、横浜FCはこの日の戦い方でJ1昇格の夢を果たせるのか?

 横浜FCは開幕以来、自動昇格圏内(2位)をキープしてきた。センターバックとして補強した元オランダ五輪代表カルフィン・ヨンアピンが守備を堅牢化。さらにエースFW、イバが16ゴールでJ2得点王争いのトップを走って(第22節終了時点)、チームを牽引してきた。

「外国人選手が軸になっている。彼らなしのチームは考えられない。刺激を受けることで、高丘(陽平)のように若い選手が頭角を現している」

 横浜FCの関係者が洩らすように、能力の高い外国人助っ人を両輪にし、チームは成長を示しつつあった。

 しかし、序盤戦の勢いは低下している。直近8試合は1勝6敗1分けで、岐阜戦を前に11位まで転落。イバ、ヨンアピンの2人に攻守で依存してしまい、プレーを相手に読まれるようになった。第23節の岐阜戦も、その傾向は顕著に出た。

 横浜FCは立ち上がりからリトリートしてブロックを作り、ショートカウンターを狙うが、自陣に入られたときの寄せが甘い。むしろ、決定機を作られてしまう。攻撃も前線のイバに蹴り込むだけで、単調を極めた。

「前半は内容的にも決してよくなかったと言えます。相手に決定機を2度、3度と作られ、守備の緊張感が薄くて。高丘がどうにかファインセーブで防いでくれて、ゼロに抑えられました」(横浜FC・中田仁司監督)

 岐阜は4-2-3-1を攻撃時には3-4-3に変化させ(ボランチの1人がバックラインに落ち、両ワイドが高い位置を取る)、サイドに人をかけて目眩(めくるめ)く攻撃を繰り出した。とりわけ、左サイドからの攻撃は迫力満点。福村貴幸がタッチラインで幅を取り、古橋亨梧がSBとCBの間で”暗躍”した。岐阜のボールプレーの質と練度は、横浜FCを上回っていたと言えるだろう。

 横浜FCはサイドで数的に同数を作られ、ポジション的不利に陥った。戦術的に事態を改善できない時間が続き、敗色は濃厚だった。

 しかし後半、イバがキープできるようになって、息を吹き返す

「どれだけパスを回されても、最後のところでやられなければいい、と割り切ってできた」(横浜FCのMF佐藤謙介)

 岐阜のフィジカル的な消耗か、攻め疲れというメンタルの問題か。横浜FCは相手バックラインの前でボールを持つ機会が多くなって、いくらか挽回した。スペースを得た野村直輝を中心に、好機が増えた。

 そして62分だった。GKが蹴った自陣からのロングボールをイバが競らずにスルー。裏に走り込んだジョン・チュングンがこれを拾い、右サイドの角度のないところからニアに右足で蹴り込んだ。一発を仕留めた横浜FCはその後、5バックに変更。しぶとく逃げ切っている。

「最近は自分たちが攻める展開で決めきれず、やられる試合が多かったが、今日は逆の流れになった」

 横浜FCの選手たちの多くはそう感想を洩らし、安堵していた。勝利はプロの世界で確実に足掛かりになる。ただし、勝ち点3は僥倖(ぎょうこう)に近かった。

「確かにイバにボールが入ったが、(流れとして失点を喫するような)思い当たる節はない」(岐阜・大木武監督)

 横浜FCは相手の決定力の低さに助けられたと言えるだろう。GK高丘が前半の2度の決定機を封じて潮目を変え、一発で勝ちを拾った。それはひとつのパターンとなり得るが、それに依存するようなら、再び勝てない連鎖に取り込まれるだろう。

 その点、もう1人の助っ人が起爆剤になれるかもしれない――。次節、V・ファーレン長崎戦からはブラジル人MFレアンドロ・ドミンゲスが新たに戦列に加わるのだ。

「練習だけでモノが違うのが分かる。サイドチェンジのキックはやばいし、ダイレクトパスを入れられるから、ぽんぽんとボールがつながる。コンディションもいい」(南雄太)

 横浜FCの選手たちは、すでに練習で能力の高さを実感している。チームとして、レアンドロが生きるトップ下のシステムを使う可能性もあるという。ブラジルの3部にいたというのは、顔面をケガした後、恩師の指導者のいるチームに一時的に在籍していただけで、その実力は衰えていない。2011年のJリーグMVP(当時は柏レイソル)が入ることで、積極的にボールを握り、運べるようになったら、横浜FCの勝機は広がる。

 しかし、逆説的になるが、外国人選手に依存してしまうと、それ一辺倒になって状況は厳しくなる。外国人選手との切磋琢磨で日本人選手が地力をつけられるか。それが横浜の浮沈のカギを握る。