日本代表の首脳陣は山中亮平を重宝していると思っていた。左足のロングキックでゲームを作れる。自陣から蹴り出す時、飛距離が10メートル伸びれば、相手の攻め手は大きく変わる。日本にとって貴重な武器だった。 それでも外したのは、山中のマイナス面に…

 日本代表の首脳陣は山中亮平を重宝していると思っていた。左足のロングキックでゲームを作れる。自陣から蹴り出す時、飛距離が10メートル伸びれば、相手の攻め手は大きく変わる。日本にとって貴重な武器だった。

 それでも外したのは、山中のマイナス面にリスクを感じたからだろう。山中は攻撃面で意思を示す選手だ。強気は長所でもあるが、各局面での強引なアタックはピンチを招く危険性が高い。そんな山中よりも、安定感のある小倉順平を選んだのではないか。

 ジョセフHCの頭にはW杯で日本がいかに戦うかという明確なチーム像があり、それを演じ切れる役者たちを選んだということだろう。一人の選手の即興やひらめき、オンリーワンのパフォーマンスを求めない。そんな意図を感じる選考となった。

 少ない準備期間で高めて欲しいのは、WTBの守備力だ。ダブルタックルを重視する日本は、防御の局面でどうしても外側に数的不利が生まれる。前回大会は俊足で機転の利く福岡堅樹の存在が守備面でも大きかったが、今回は誰がその役割を担えるか。

 残り3人のメンバー選びではロックに注目したい。過去2大会の日本が成功を収めたのは、ロック陣が地味ながらもいい仕事をしたからだ。スクラムを押す上で重要なポジションでもある。前回大会からの変化という意味で、ワーナー・ディアンズとアマト・ファカタバの2人はぜひとも欲しい人材だ。

 ジョセフHCが信頼できる選手たちを選んだわけで、ベストの布陣と信じているはず。ここまで隠してきた武器をぶつけるのは、W杯2試合目のイングランド戦になるだろう。強化試合を見る限り、相手は一本調子なラグビーをしている。勝つチャンスは十分にあると見ている。(日本ラグビー協会副会長)