8月5日放送の「卓球ジャパン!」は、東京五輪混合ダブルス金メダルの水谷隼をゲストに迎え、WTTコンテンダー ザグレブの女子シングルスで、世界ランク1位の孫頴莎(中国)を破って優勝した平野美宇の激闘の様子をDEEPに解説した。

孫頴莎は、2019年のスウェーデンオープンで伊藤美誠に敗れて以来、中国選手以外には4年間無敗という強さ。平野にも4連勝中で、今年5月の世界選手権でも女子シングルスで金メダルを獲ったばかり。

その強さを評して水谷は「フォアハンド、バックハンド、サービスとすべての技術が一流。メンタル、フィジカルも強く、"全部のスキルがS"みたいな」と絶賛する。

MC武井壮が「申し訳ないですけど、孫頴莎って・・・勝てるの?」と半ば諦めたように漏らしたのも無理のないこと。

その孫頴莎を平野はどのように攻略したのか。

水谷が注目したのが平野のサーブ戦略だった。平野といえば巻き込みサーブが得意だが、第6ゲームからあえて順回転サーブに切り替え、そこから流れがガラッと変わったという。

「6ゲームのデュースでまた巻き込みサービスに戻して、最後また順回転サービスと、いろんなサービスを混ぜることによって孫頴莎のコンピューターを崩していった」(水谷)

一瞬の判断の遅れが勝敗に直結する卓球ならではの繊細極まりない戦略だ。

MC平野早矢香が指摘したのは、接戦となった第2ゲーム4-5での平野のサーブのフェイクモーション。

卓球のサーブでは、相手に回転の判断を迷わせるよう、ラケットを複雑に動かすのが定石だが、この試合の平野は、ラケットを振り下ろして打球した後、わずかに振り上げてから再び振り下ろして卓球台の下に隠すという、これまでにない複雑なフェイクモーションを見せた。

「平野選手としても、これをやることによって0.1秒くらい戻るのが遅くなるんですが、それよりも甘いレシーブが返ってくる可能性が高くなるので、こういうモーションをつけるんです」と水谷。

このサーブによって孫頴莎のレシーブが甘くなり、平野が3球目でバックハンドでストレートに抜いたのだが、そのプレーによってその後のバック対バックの展開も変わったと平野。1つのサービスのモーションが連鎖的に試合の流れまで変えてしまう卓球競技の奥深さだ。

平野早矢香がもう一点注目したのが、第2ゲーム6-9で、孫頴莎のフォア前のサーブを平野がフォアハンドでクロスにフリックした場面。バックに流しそうなフォームからの一転してのクロスへのフリックだったため、孫頴莎をノータッチで抜いた。

「あそこまで真向のフリックは回転を読み切ってないとできない」(水谷)

この1本が布石になったと思われるのが第6ゲーム6-5からの場面。同じようなフォア前サーブに対して、今度はストレートにフリックをして孫頴莎のミスを誘った。

「フォアにフリックするときと同じ入りから流してバックなんで、孫頴莎も一瞬遅れちゃうんですよね。しかもナックルボールなんでネットミスしてしまう」(水谷)

絶妙な台上レシーブで知られる水谷さえ舌を巻く平野の見事なレシーブだった。

そして試合は運命の最終ゲームへ。

平野早矢香が勝敗を分けたと感じたのが、5-7からの一球だった。それまで順回転サーブで勝負していた孫頴莎が、急に巻き込みサーブに切り替えた。

普通なら一球は様子を見る場面だが、平野はサーブがわずかに台から出たのを見逃さず、フルスイングでフォアドライブで打ち抜いた。

「出たと思った瞬間に迷わず、しかもストレートに行ったんですよ。これ見た瞬間、ああ、もうこれで勝負決めたなって思いました」(平野早矢香)

サーブ、レシーブに込められた戦略と、一瞬の隙を見逃さない研ぎ澄まされた判断力が、平野の歴史的勝利を呼び込んだ。

「卓球ジャパン!」BSテレ東で毎週土曜夜10時30分放送