バレーボールネーションズリーグ(VNL)男子のファイナルラウンド最終日、3位決定戦と決勝がポーランド・グダニスクで行なわれ、日本は昨夏の世界選手権覇者・イタリアにフルセットで勝利し、世界大会で46年ぶりとなるメダル(銅メダル)を獲得した。…

 バレーボールネーションズリーグ(VNL)男子のファイナルラウンド最終日、3位決定戦と決勝がポーランド・グダニスクで行なわれ、日本は昨夏の世界選手権覇者・イタリアにフルセットで勝利し、世界大会で46年ぶりとなるメダル(銅メダル)を獲得した。



ネーションズリーグの銅メダルを手にした日本男子バレーチーム

 予選ラウンド上位8チームによるファイナルラウンド。日本は快進撃を続けた予選に続いて確かな実力を見せた。

 初戦の準々決勝の相手は、欧州の強豪スロベニア。日本は石川祐希、西田有志、小野寺太志、山内晶大、関田誠大、髙橋藍、リベロに山本智大というオーダーで臨んだ。スロベニアの主将のティネ・ウルナウトは、昨季からVリーグのジェイテクトSTINGSでプレーしており、関田、西田と共にプレー。第1セットはそのウルナウトが機能し、シーソーゲームとなって先にセットポイントを握られた。

 しかしデュースとなった場面で起用された宮浦健人が、ブロックの手を引いてスロベニアのアウトを誘う好判断もあり、26-24で競り勝った。それは関田からの「(ブロックの)手を引いていいよ」という声かけによるものだったという。

 ペースを掴んだ日本は、第2、第3セットも取ってストレート勝ち。石川が27得点を挙げる大活躍だったが、司令塔・関田がアタッカー陣を見事に活かした。多少サーブレシーブが崩されても落下点に入ってセットアップし、アタッカーがそれを打ち切る。ネットから離れたパスになった時やラリー中でも、積極的にミドルブロッカーや真ん中からのバックアタックを多用し、相手ブロックに的を絞らせなかった。

 準決勝は世界ランキング1位、地元のポーランドと対戦。アウェーの応援は圧倒的で、日本のサーブ時には地鳴りのようなブーイングが起こった。試合中も、国際大会で得点時になるはずのSE(音響)が、日本が得点した時には鳴らされないといった"洗礼"を受けた。

 さらに日本は、ウォームアップ終了後に西田が背中の痛みでリタイアし、ベンチアウトになるアクシデントも。それでも果敢に攻めて第1セットを先取したが、対応力が高いポーランドに押され始め、第2セットをもう一歩のところで落としてしまう。その後もセットを連取されてセットカウント1-3で敗れ、決勝への道は途絶えた。

 西田のベンチアウトで、急遽スタートからの起用になった宮浦は、昨シーズンにポーランドのリーグでプレーしていて「思い入れの深い試合だった」が、3得点と思うような活躍ができなかった。宮浦は試合後、「試合直前にスタートからいくことになり、準備不足だったことは否めません。ただ、それは言い訳にはならないので、明日は必ず勝ちます」と宣言した。

 悔しい結果となったが、ポーランド戦ではファイナルラウンドからA代表入りした20歳の西山大翔が衝撃のデビューを飾った。第2セット終盤にリリーフサーバーとしてコートに立ち、ノータッチエースを決めて見せたのだ。西山は試合後、冗談を交えながら次のようにデビュー戦を振り返った。

「A代表に呼ばれた時は......正直に言うと『あれ?』と思いました。B代表でけっこう長くイタリア遠征をしていて、『やっと帰国できる!』と思っていたので(笑)。それでも、こんな機会をいただけるのはすごいことですし、ワクワクしていました。スロベニア戦でも、第2セット以降に点差が開いた時に『出させてもらえないかな?』と思っていて。今日は思い切りいいサーブが打ててよかったです」

 南部正司強化委員長も、「西山は練習ではさっぱりサーブが入らなかったのに、本番であんなすごいサーブ打ってびっくりしました」と笑顔を見せ、「明日もやってくれるでしょうね」と期待をかけた。

 そのイタリアとの3位決定戦、第1セットの立ち上がりはイタリアに連続得点を許したが、5連続ブレイクで逆転し、宮浦の連続サービスエースなどで突き放す。イタリアも終盤に4点差に詰め寄ったが、調子が上がらなかった髙橋に代わって投入された大塚達宣がラリーを制するなどして同セットを先取した。

 第2セットはシーソーゲームとなったが、途中でコートに戻った髙橋が踏ん張りセットを連取。あと1セットでメダル獲得......しかしそこから、徐々にイタリアが対応力の高さを発揮。髙橋の得意コースが塞がれ、セッターのシモーネ・ジャネッリのサービスエースやツーアタックにも翻弄されてこのセットを落とした。続く第4セットも最初はリードを奪ったがすぐに逆転され、そのまま点差をつけられてそのセットも取られた。

 勝負の第5セット。日本に流れを呼び込んだのは、ポーランド戦後に「明日は必ず勝つ」と宣言した宮浦だった。セットの幕開けでサービスエースを決めて静かにガッツポーズ。その流れに乗り、山内のブロックなどもあって得点を重ねていく。イタリアにもミスが出てマッチポイントを握ると、最後は石川がレフトからブロックアウト。1977年のワールドカップバレーボールで獲得した銀メダル以来となるメダルを手にした。

 試合後、主将の石川は「宮浦選手の5セット目最初のサービスエースで流れはこちらにきた」と宮浦を称えたあと、こう続けた。

「銅メダルは素直に嬉しい。ここまでこられたことに、チームメイトの選手たち、スタッフや応援してくださる方たちに本当に感謝しています。ただ、目標は銅メダルではない。頂上です。銅メダルに浮かれすぎることなく、先を目指していきたいです」

 また、第5セットで2本のキルブロックを見せ、サービスエースも決めたミドルブロッカーの山内は「まだ実感がないですけど、嬉しいですね」と笑顔を見せた。

 山内は、南部強化委員長が代表監督時代に結成した「NEXT4」のひとり(他の3人は石川、柳田将洋、髙橋健太郎)。決して器用な選手ではなかったため、2021年の東京五輪のメンバーに選出された時も一部で異論の声が上がった。しかし、パナソニックでの地道なプレーや、フィリップ・ブラン代表監督のコーチ時代からのアドバイスなどもあって、大舞台でもしっかり活躍する大型ミドルブロッカーとして成長した。

 石川はVNLの名古屋ラウンド後、今の日本について「誰が出ても強い」と話していたが、それを体現したのは山内だけではない。髙橋が不調の時は大塚が支え、西田が故障で離脱しても宮浦が引っ張る。そして、そのアタッカー陣を操る関田の運動量の多さと、勇気溢れるトス回し。そのトスへとつなげる山本らのレシーブ力も光った。山本は大会後、解説の福澤達哉さんに「どうしてそんなに拾えるの?」と聞かれ、「ボールをメダルと思って拾いました!」と答えた。

 サーブで攻め、ブロックを含めたディフェンスで粘ってラリーを制す。日本男子は、「弱くなった」と言われていた頃から大幅な進化を遂げた。

 リオ五輪出場を逃した際、当時の主将だった清水邦広は「弱くなったと言われるのは僕らの責任」と歯を食いしばっていた。その清水は今回、解説席から後輩たちのメダル獲得を見守った。大会後には、共に代表でプレーしていた石川に「こんなにすごくて、どこまで行っちゃうの?」と興奮気味に質問。それに対して石川は「頂上です」とはっきり答えた。

 イタリア戦の会場には「ブラジルの至宝」と呼ばれたジバが試合を見守っていた。今大会、ブラジルは予選ラウンド第2週で30年ぶりに日本に敗れ、ファイナルラウンドでは準々決勝で姿を消した。ブラジルのレジェンドは、大会のベストアウトサイドヒッターに選ばれた石川、日本代表を次のように称賛した。

「バレーボールはひとりでプレーするものではないから、僕がそうであったように石川も素晴らしいセッターやリベロ、仲間たちに助けられて今の力を発揮していると思う。もちろん彼は群を抜いた素晴らしいプレーヤーで、日本を新しい局面に向かわせている。僕は日本のバレーボールを愛してるし、彼ももっと飛躍できると思う。

 日本の復活は、僕にとっても嬉しいことだよ。日本男子はかつて、伝統ある強豪国だった。それが一時期は沈んでいたけど、新しい力と戦術でまた浮上してきたね。ブラジルもついに土をつけられた。これからは強豪国グループの一員として、共に戦っていきたいね」

 今後、日本はイランで8月に開催されるアジア選手権を戦ったあと、9月30日から日本で開催される、オリンピックの切符をかけたワールドカップに臨む。ワールドカップは8カ国ずつ3組に分かれて1回総当たり戦を行なうが、各組の上位2カ国がその時点で五輪への出場が決まる。今の日本であれば、地元で出場権を獲得する瞬間を見せてくれるかもしれない。