イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3~16日/グラスコート)の男子シングルス準々決勝。 前年度優勝者で第1シードのアンディ・マレー(イギリス)が第24シードのサム・クエリー(アメリカ)に6-3 4-6 7-6(4)…

 イギリス・ロンドンで開催されている「ウィンブルドン」(7月3~16日/グラスコート)の男子シングルス準々決勝。

 前年度優勝者で第1シードのアンディ・マレー(イギリス)が第24シードのサム・クエリー(アメリカ)に6-3 4-6 7-6(4) 1-6 1-6で敗れるという番狂わせが起きた。マレーはポイント間に足を引きずり、試合が長引くにつれて力を弱めていった。

 マレーは、痛む左腰に対処しながらこの大会に臨んだが、この日のセンターコートでは、明らかにその故障が彼のプレーを妨げていた。彼はショットを打とうと努めている間、躓いたり、おかしな具合に着地するたびに、痛みで顔をしかめていた。

 そしてクエリーは、キャリア初のグランドスラム大会準決勝進出を果たすため、その状況からフルに実りを引き出した。アメリカ人男子がウィンブルドンで準決勝に進出したのは、アンディ・ロディックが準優勝した2009年以来のことでもある。

「自分自身、まだショック状態にある」とクエリーは言った。

 その少しあと、もうひとつの準々決勝でまた驚きが起きた。3度ウィンブルドンを制した第2シードのノバク・ジョコビッチ(セルビア)が、2010年準優勝者で第11シードのトマーシュ・ベルディヒ(チェコ)に対する試合で、6-7(2) 0-2の劣勢に立たされていたときに、右腕の故障を理由に棄権したのだ。

 第1セットを落としたあと、ジョコビッチはメディカル・タイムアウトをとり、トレーナーが彼の腕にマッサージを施した。その一日前の4回戦でも、ジョコビッチはやはりトレーナーによって右肩にマッサージを受けていた。

 一方、ウィンブルドン優勝歴7度で第3シードのロジャー・フェデラー(スイス)は、2016年準優勝者で第6シードのミロシュ・ラオニッチ(カナダ)を6-4 6-2 7-6(4)のストレートで下し、オールイングランド・クラブ(ウィンブルドン)における12回目の準決勝に駒を進めた。

 この日の試合の結果、いわゆる〈ビッグ4〉のメンバーでまだ勝ち残っているのは、フェデラーひとりだけとなった。マレー、ジョコビッチの敗退に加え、第4シードのラファエル・ナダル(スペイン)も4回戦で敗れていたのだ。この4人組は、過去14年のウィンブルドン・タイトルを彼らの間で分け合っていた。

 金曜日の準決勝で、クエリーは2014年全米オープン優勝者で第7シードのマリン・チリッチ(クロアチア)と対戦する。チリッチは水曜日、33本のサービスエースの助けを借り、第16シードのジル・ミュラー(ルクセンブルク)を、3-6 7-6(6) 7-5 5-7 6-1の5セットマッチの末に振り切っていた。ドローの反対側では、フェデラーとベルディヒが対戦する。

 マレーは通常、非常にリターンのうまい選手だが、この日はクエリーが27本ものサービスエースを記録し、そのうち6本を最後の9ポイントで決めて華々しく試合を締めくくった。クエリーは70本のウィナーを決め、アンフォーストエラーを30に抑えるという、文句なしの数字を刻んだ。

「ほぼすべてのポイントで、彼が主導権を握っていた」とマレーは言った。

 第4セット1-1から、クエリーは8ゲームを連取し、そのセットを取るとともに、ファイナルセットで3-0とリードを奪った。

「スタート時の僕はベストのプレーをしていなかったが、僕はただ頑張り抜いた。とにかくプレーし続け、それから第4、5セットでいい軌道に乗ることができたんだ」と29歳のクエリーは言った。「そしてそこからは、すべてが僕に有利な方向に回り始めたようだった」。

 クエリーが、前年度覇者で世界1位の相手に対し、オールイングランド・クラブで番狂わせをやってのけたのは、これで2年連続ということになる。2016年に彼は3回戦でジョコビッチを倒すことにより、ジョコビッチのグランドスラム大会での連勝記録に、「30」で終止符を打っていた。

 マレーはそのような圧倒的成績を、このところ挙げていなかった。しかし彼は、3度グランドスラム大会で優勝しており、ウィンブルドンではここ8年のうち7回、少なくともベスト4には進出していたのだ。

 しかしながら、今大会の彼は腰が問題だった。そのしつこい故障のために、ウィンブルドンに先立つ何回かの練習セッションを控え、いくつかのエキシビションから棄権した。ひとたび大会が始まれば問題はないと言い張り続けていたマレーだが、この午後には自分のベスト・テニスに近いものすら見せることができなかった。

 マレーのサービスのスピードは落ち、特に彼のバックハンドは、通常の活力を欠いていた。マレーの成功のカギのひとつは、彼のコートカバリング能力であり、それが彼の、誰にも負けず劣らず優れたディフェンシブ・プレーを可能にしている。しかし対クエリー戦の後半には、それらの強みは影を潜めてしまった。

「今日はもう少しだったと思う。僕は試合に勝つ可能性から、何百万マイルも離れていたというわけではなかった」とマレーは言った。「言うまでもなく、最後のほうは結構、四苦八苦することになったとはいえ」。

 マレーはここまで12回、ウィンブルドンに出場しているが、クエリーはこのグラスコート大会で彼を倒した選手の中で、もっともランキングの低い選手だった。

 マレーはこれで4回連続で5セットマッチに敗れたことになる。そしてクエリーは逆の方向へ進行中----つまり5セットマッチの連勝の歩みを続けている。先週まで第5セットでは4勝10敗だった彼は、ここ3試合のそれぞれを、最後までもつれた末に勝ち獲っていた。

 クエリーは3回戦で第12シードのジョーウィルフリード・ツォンガ(フランス)に、4回戦ではケビン・アンダーソン(南アフリカ)に、そして今マレーに対し、フルセットの戦いの末に勝っていたのだ。

 クエリーは以前から常に破壊力のあるサービスの持ち主だったが、これまで一度も、グランドスラム大会の最後の週末にプレーするに十分なだけ多くの試合で、全体をいい形でまとめ上げることができていなかった。

 実際、ジョコビッチに対する昨年の勝利まで、彼はむしろ、やや常軌を逸したコート外でのエピソードのほうでよく知られていたのだ。

 2009年のタイの大会で、彼はガラスのテーブルの上に座り、それが割れたために右腕の2本の筋肉を切ることになった。2年前、彼はテレビのリアリティ・ショー『百万長者マッチメイカー』に出演した。またソーシャル・メディア上には、大人気のクエリーのビデオがある----それはサングラスをかけ帽子をかぶった彼が、シャツの前を開け、馬の頭のマスクをかぶった友達とともにダンスを踊っているというものだ

 しかし今、クエリーのコート上での成就が、ヘッドラインを飾ることになるだろう。あと2試合に勝てば、彼はウィンブルドン・チャンピオンになれるのである。(C)AP(テニスマガジン)

USTA(#Querrey)|公式ツイッター

※写真は「ウィンブルドン」準々決勝で世界1位でディフェンディング・チャンピオンのアンディ・マレー(イギリス)を倒した第24シードのサム・クエリー(アメリカ)(撮影◎小山真司/テニスマガジン)