20日から英国のロイヤル・リバプール・ゴルフクラブで第151回全英オープンが開催される。出場する日本人選手は9名。その中で最も期待できる選手としては中島啓太を挙げたい。中島の今季の日本ツアーでの安定感は目を見張るものがある。10戦して優勝1…

20日から英国のロイヤル・リバプール・ゴルフクラブで第151回全英オープンが開催される。出場する日本人選手は9名。その中で最も期待できる選手としては中島啓太を挙げたい。

中島の今季の日本ツアーでの安定感は目を見張るものがある。10戦して優勝1回、2位(タイ含む)3回、3位1回。トップ10を外したのはたったの3回。プレーオフで敗れたミズノオープンからJAPAN PLAYERS CHAMPIONSHIPでは5週連続最終日最終組でプレーした。

中島はアマチュアでツアー優勝という快挙を達成し、同世代の選手の中で最も活躍が期待される選手。プロ初優勝は同学年の平田憲聖やアマ時代にツアー2勝をあげた蝉川泰果に先を越されたが、気が付けば同じ世代どころか日本ツアー全体のトップに君臨している(7月17日時点・賞金ランキング1位、メルセデス・ベンツ トータルポイントランキング1位タイ)。

中島のすごみは今季の成績が良いだけではない。松山英樹のプロ1年目のスタッツと比較しても遜色がない。

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■中島啓太と松山英樹 プロ1年目の比較

アジア人初のマスターズ 優勝を果たした松山英樹 (C)Getty Images

中島のプロ転向は大学4年生だった昨年9月。今季、初めてフルにシーズンを戦っているという点で実質プロ1年目だ。松山は2013年、大学4年生になってすぐにプロ転向。その年は日本ツアーを主戦場にし4勝をあげた。

今季の中島と松山の2013年(プロ1年目)の主要スタッツを比較すると、中島の方が上を行っていると見ることができる。

「平均ストローク」「平均パット」「パーキープ率」「パーオン率」「バーディ率」「トータルドライビング」で、総合的な順位ではわずかに松山に分があるものの、記録ではすべて中島が上。

もちろん、同じ日本ツアーとはいえ、10年違えば、ギアの進化に伴うコース攻略の難易度などが異なるため、単純な比較にはならないが、それらを差し引いて考えてみても、現在の中島と当時の松山の日本ツアーを戦う上での力量の差は、あまりないと考えて良いのではないか。

2013年の全英オープンで、松山は6位タイに入った。ということは、中島が今回の全英オープンで上位進出しても不思議ではない。

日本ツアーでの成績は、胸を張れるものだが、メジャーでの実績は気になるところ。2011年のマスターズでローアマを獲得し、2013年の全英オープンの前に出場した全米オープンでは10位タイに入っている松山に対して、中島は、海外メジャー挑戦元年となった昨年、全米プロ以外の3つのメジャーに出場したが、すべて予選落ち。今回の全英オープンがプロとして初めてのメジャー出場となる。

■風を苦にしない中島

昨年の全英オープンは、聖地セントアンドリュースの壁が高く予選通過まで3打足りなかった。ただ、メジャーでの苦い経験を昇華し、経験値だけでなく技術一つ一つにおいても、現在は1年前よりも質が高いものになっているだろう。

英国のリンクスコースといえば、選手たちを苦しめる強風が特徴に挙げられるが、低弾道のショットを得意とする中島は「リンクスは好き」と、風を苦にしない。

海外メジャーという舞台のレベルの高さに現実をつきつけ続けられても、磨いてきた低弾道ショットに自信を持って臨むことができれば、海外ツアーの猛者たちと対等に戦えるはずだ。

中島の目標は米ツアー挑戦。早ければ今年、米ツアー予選会にエントリーすることも選択肢の一つ。米ツアーに挑戦するか否かの判断は、成績だけで決めるものではないだろう。だが、自身の思いや周囲の声が‟時期尚早”とならないためには、相応の力があることを結果で示せればそれに越したことはない。

今年出場する最初で最後のメジャーでは、予選通過するだけでなく、さらに上を目指して欲しい。上位争いが実現すれば、その実績は、早い段階での米ツアー挑戦の意欲や結果を後押しするものになるはずだ。

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著者プロフィール

野洲明●ゴルフ活動家

各種スポーツメディアに寄稿、ゴルフ情報サイトも運営する。より深くプロゴルフを楽しむためのデータを活用した記事、多くのゴルファーを見てきた経験や科学的根拠をもとにした論理的なハウツー系記事などを中心に執筆。ゴルフリテラシーを高める情報を発信している。ラジオドラマ脚本執筆歴もあり。