(17日、第105回全国高校野球選手権記念岩手大会2回戦、大船渡7―0盛岡農) 打って、走って、投げて。 4年前の兄と同じく大船渡の背番号1をつけた佐々木怜希が躍動した。 初戦となった盛岡農との2回戦に「2番・中堅手」で出場すると、見せ場は…

(17日、第105回全国高校野球選手権記念岩手大会2回戦、大船渡7―0盛岡農)

 打って、走って、投げて。

 4年前の兄と同じく大船渡の背番号1をつけた佐々木怜希が躍動した。

 初戦となった盛岡農との2回戦に「2番・中堅手」で出場すると、見せ場は四回にやってきた。

 先頭で右打席へ立ち、「なんとか出塁して流れをもってきたかった」。初球にセーフティーバントを試みた後の2球目。外角直球を逆らわず右中間へはじき返すと、50メートル6秒2の俊足で一気に二塁を陥れた。

 その後、2死一、三塁となり、6番打者の初球に重盗を仕掛ける。二盗を阻もうと捕手が送球した瞬間に判断よくスタートを切り、先制の本塁へ滑り込んだ。

 仲間たちの祝福に、ハイタッチで応える。だが、内心はドキドキしていたという。

 「じつは別のところを見ていて、サインを見ていなくて。いきなり一塁走者が走ったから、『えっ』となったけど、『(本塁を)狙える』と思って走りました」

 そう言って照れ笑いを浮かべる表情は、兄にそっくりだ。

 兄は昨年4月にプロ野球で28年ぶり16人目となる完全試合を史上最年少で達成した千葉ロッテマリーンズの朗希(21)だ。今春のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも投手陣の柱の一人として日本代表の優勝に貢献した。

 朗希は高3だった2019年の春に163キロを計測して大きな注目を集め、夏の第101回全国選手権岩手大会ではチームを決勝に導いた。決勝では登板することなく花巻東に敗れた。

 身長は兄より14センチ低いが、それでも178センチある。昨年までは内野手だったが、新沼悠太監督に勧められ、この春から投手に転向した。

 この日は7―0の七回に3番手でマウンドに立った。打者4人に対し、1安打1四球で無失点。自己最速を4キロ更新する143キロの直球でぐいぐい押した。

 「兄の投球はとくに参考にしていない」と言いながらも、左足を高く上げるフォームや強気に打者の胸元に投げ込む姿は、似ている。

 今大会の開幕前には兄から「がんばれよ」とLINEが届き、「ありがとう」と返したという。

 「次も勝って、その次も勝って、ずっと勝って甲子園に行きたい」

 兄が届かなかった場所をめざしている。(山口裕起)