「加賀温泉郷で、自転車レースと温泉とグルメを楽しんでしまおう」という、遊びゴコロいっぱいの自転車イベント「温泉ライダー in加賀温泉郷」が、今年4年ぶりに開催された。1日目は周回コースを用い、後半はサイクリングを楽しむという敷居の低いヒルク…

「加賀温泉郷で、自転車レースと温泉とグルメを楽しんでしまおう」という、遊びゴコロいっぱいの自転車イベント「温泉ライダー in加賀温泉郷」が、今年4年ぶりに開催された。1日目は周回コースを用い、後半はサイクリングを楽しむという敷居の低いヒルクライムレース。2日目には、公道を使った耐久レース「柴山4時間エンデューロ」が開かれた。

※初日の立杉ヒルクライム・レポートはこちら



「温泉ライダーin加賀温泉郷」。2日目は耐久レースだ

2日目のエンデューロレースは、リゾートホテル「ホテルアローレ」をメイン会場に、公道を使った4.1kmの周回コースで競われる4時間耐久戦だ。一人参加のソロでも、グループ参加でもOK。平坦基調ではあるが、10%の勾配の登り坂が含まれ、一部風の影響を強く受ける吹きさらし区間もあり、4時間走り続けるには、なかなかホネのあるコースと言えよう。



公道を使った4.1kmのサーキット。難所は序盤に待ち受ける10%の登り坂だ

この日は、エンデューロに先立って、小学生向けの「柴山ジュニアタイムトライアル」が開催された。参加費は1000円とリーズナブルで、競技志向のキッズでなくとも、思い出作りとして気楽にチャレンジできる。一人、一人スタートして、タイムを計測するのだが、真剣な面持ちでスタートして行くキッズライダーの表情は頼もしく、全力でゴールに向かうチャレンジが微笑ましくもあり、多くの来場者が沿道に立ち、子供たちに拍手を送っていた。



タイムトライアルに挑むキッズライダーたち



ゲストライダーとコースを試走



コースを駆け抜け、ゴールするキッズライダー



各年齢性別カテゴリーの優勝者には、「ハンテン・ヴェール」が贈られた

また、この日は未就学児を含むキッズスクールも同時開催され、まさに年齢性別を問わず、自転車で楽しめるイベントとなった。



楽しみながら自転車にうまく乗れるようになるキッズ対象のスクールも大人気



スクールでスラロームの手本を見せるゲストライダー

メインイベントであるエンデューロは10時スタート。ゲストライダーとして、マトリックスパワータグとキナンレーシングチームからプロロードレーサーが3名参加し、安全管理を行った。地元の競輪選手らも参加し、スタート最前列には、豪華な顔ぶれが揃った。



最前列にゲストが並び、参加者たちはスタートの時を待つ

今年はコロナ禍前と比べると、参加人数もやや少なく、余裕を持って整列し、ガツガツと前に上がろうとする参加者もおらず、マナーの良い、ゆったりとしたスタートとなった。

リアルスタートと同時に、ゲストライダーが先頭を引き、ペースアップし、表彰台を狙うメンバーが入った集団は長く引き延ばされた。このいきなりのふるい落としで、先頭を集団はかなり絞り込まれたようだ。結果、ハイスピードの大集団が周回するシーンもほぼないまま、参加者がそれぞれのペースで走る落ち着いた展開となった。



レース開始直後から一気にペースアップし、集団は長く伸びた

こんな中、怒涛の「ふるまい」が始まる。圧巻なのは、鴨だしうどん! 鴨の旨味が溶け出したスープを使い、鴨の肉団子を乗せた大会名物のメニューだ。収支を度外視して提供し続けており、これを目当てに来る参加者もいるという。
今年はさらに加賀のお米もふるまわれた。「ツール・ド・フランス」の4賞リーダージャージにちなみ、イエローは加賀名物のカレーを混ぜたごはん、赤ドットはカリカリ梅、グリーンはわかめの混ぜご飯、ホワイトはふりかけをあしらう形で提供された。サイクルロードレースファンなら、くすっと笑ってしまうユーモアのあるメニューであり、参加者は、つやつやのおいしいお米とシチュエーションを楽しんだ。



名物「鴨だしうどん」



うどんを提供するのは地元の女子高生たち! この日も多くの地元のボランティアスタッフが開催を支えた



ゴハン・ジョーヌならぬ、黄色のごはん。カレーは地元の「チャンピオンカレー」だ

バナナやようかん、お水のふるまいもあり、小腹が空いた参加者はブースエリアに足を運ぶ。チャンピオンカレーのレトルトパックや、大会オリジナルグッズの販売ブースも、好評だったようだ。フードやドリンクを売るキッチンカーや地元の米やパン、焼き芋を扱うブースも並び、チームで参加し、待機時間の方々や応援に来た家族や仲間たちが、常に会場をめぐっており、終始にぎやかだった。



オリジナルグッズのアヒルにロックオンされた子供たち。グッズのセンスがよく、つい欲しくなる



集まったキッチンカーのメニューを楽しむ

参加者は、長いようで短い4時間を満喫。真剣にリザルトを狙うチームやソロの参加者もいれば、「皆で自転車に乗る」ことを楽しむのが目的の参加者も、「休憩多め」スタイルで、テントでくつろぐチームもいる。会場に漂うレースらしい熱気と、春の午後らしいのんびり感との絶妙なマッチングが、なんとも心地よい。



グループ参加者はピットインし、ライダーチェンジを行う。この頻度やタイミングも各チームの重要な作戦になる



計測チップが入ったアンクルベルトの受け渡しの手際は重要!チームワークが鍵になる



仮装も復活!「大阪のオバチャン」らしい

あっという間に4時間が経ち、チェッカーフラッグが振られる時間となった。レーサーたちの戦いは、表彰台圏内の参加者が早々に絞り込まれていたが、男子ロードソロは激戦となり、最後まで表彰台の順番が見えない展開に。元プロロードレーサーで、今は石川県内で自転車のプロショップの店長をしている井上和郎選手が、最終周回で抜け出し、堂々の勝利を飾り、会場は大いに沸いた。



フィニッシュを迎えるためにチームメイトがゲート周りに集まる



次々フィニッシュする参加者たち。その格好も個性豊かだ

今年は、表彰式も完全な形で開催された。タイムトライアルとエンデューロの各カテゴリーの優勝者には、ツール・ド・フランスのポイント賞リーダーの「マイヨ・ヴェール」、総合優勝者の「マイヨ・ジョーヌ」にちなみ、「ハンテン・ヴェール」と「ハンテン・ジョーヌ」が贈られた。仮装賞や、勝者には企業PRタイムが与えられる企業対抗(だが、優勝チームが表彰式に現れなかった)、ヒルクライムとエンデューロの総合上位の表彰も行われ、惜しみない拍手が贈られた。



仮装賞の表彰



「ハンテン・ジョーヌ」を獲得した各カテゴリーの優勝者たち



総合優勝者には山中塗の大皿が授与された

豪華な賞品が当たる抽選会が行われ、今年の大会は幕を下ろした。多くの参加者は、加賀温泉の4つの代表的な湯で、2日間使い放題の「温泉手形」で、お目当てのお湯に向かい、汗を流してから、家路についたようだ。
土地に漂う、上品で少しレトロな空気も特別であるし、地域のウェルカムな姿勢も心地よく、楽しみどころも満載。一度参加したら、やみつきになる「温泉ライダーin加賀温泉郷」であるが、現時点では、節目の回となる来年の開催を持って、終了する方向だという。
2024年春に、新幹線が延伸する「加賀温泉駅」からも、小松空港からも近く、アクセスも良好。来年の開催は5月25日~26日で決定しているそうだ。「来年終了」の撤回を祈りつつ、この機会に加賀温泉に足を延ばされることをオススメしたい。

画像提供:ⓒツール・ド・ニッポン、編集部