アイアンにはゴルファーの希望が詰まっている アイアンにゴルファーの欲求を盛り込むことは、持ちつ持たれつの関係にあった。飛距離アップを優先すれば、操作性がなくなるし、易しさを追求すれば、フィーリングが損なわれる。しかし新素材と製法により開発…

アイアンにはゴルファーの希望が詰まっている

アイアンにゴルファーの欲求を盛り込むことは、持ちつ持たれつの関係にあった。飛距離アップを優先すれば、操作性がなくなるし、易しさを追求すれば、フィーリングが損なわれる。しかし新素材と製法により開発者の自由度も拡大。持ちつ持たれつの関係は、昔ほど大きくなくなったように見える。

キャロウェイゴルフのR&D部門でトップを務めるアラン・ホックネル氏は「現在のテクノロジーは、見た目では分かりにくくなっています。クラシックで美しい形状のアイアンなのに、多くの技術が詰まっていますから」と語る。

スコアアップを目指したアイアンは、主に打ち出し角とオフセンターヒット時のボール初速のアップを主眼に設計されている。これは、クラブヘッド内での重量配分を変えることで実現できるようになった。

ウイルソンのR&Dグローバル・ディレクターのマイケル・ウルスカ氏によれば「アイアンを設計する上で、一番制限があるのが重量。どんなヘッドでも重量は同じになるが、フェースを薄くすることで、余剰重量をヘッド周辺に分散させることができる。すると自動的にボールスピードと易しさが向上するのです」とのこと。

しかし、フェースは薄ければ良いというわけではない。ゴルファーは、アイアンにフィーリングを求めるからだ。「フィーリングはいつも私達を魅了する」と語るのは、テーラーメイドのCTOを務めるベノワ・ビンセント氏。「アイアンの構造を見直す時に、一番チャレンジングなのがフィーリングです」。

インパクトでクラブにどのようなことが起こるのかを理解することが、ゴルファーが望むフィーリングを作り出すことに役立つ。ミズノのゴルフクラブR&Dマネージャのデビッド・リレウェリン氏は「ヘッドの中で、あえて硬い部分とそうでない部分を作ることで、求める振動数を弾きだすのです」。

こうした知識によって、クラブフェースの大きさやオフセットのような易しさに必要な部分を残しながら、望まれるフィーリングを実現できるというわけだ。例えば、上級者は、オフセンターヒット時の許容を犠牲にすることなくオフセットの少ないコンパクトヘッドのアイアンを好むだろうし、スライスに悩むそれ以外のゴルファーは、オフセットのあるヘッドサイズの大きなアイアンを求めるだろう。しかし、そういったアイアンも以前のようなオーバーサイズヘッドではなくなっているのだ。

ホックネル氏はこう語る。「最近のスコアアップを目指したアイアンのお陰で、アイアンのクラス分けがなくなりつつある。飛距離系のアイアンなのに、飛距離系のアイアンに見えないのだから」。

次ページで最新アイアンを詳しく紹介!

ゴルファーの希望が詰まった最新アイアンを紹介

■キャロウェイ Apex アイアン
フォージドスチールのフレームにインパクト時にたわむようにデザインされたカーペンタースチールフェースをインサート。フィーリングを向上させる振動のコントロールを目的に、この構造を採用した。また3番から5番アイアンのソールには、低重心化を実現させるためにタングステンを配した。1,100ドル(8本セット、スチールシャフト)

■ミズノ JPX EZ アイアン
極薄のマルチ・シックネスフェースを採用。ボール初速の向上を実現した。4番から7番アイアンは、深いアンダーカットキャビティで深・低重心化を達成。クラブ長さ、ロフト角がこのアイアンと同じJPX Fli-Hiハイブリッドとの組み合わせも可能になっている。700ドル。

■テーラーメイド スピードブレード アイアン
3番から7番アイアンまでにデザインされたニュースピードポケットは、ロケットブレーズよりも3ミリ長く、ヒール・トゥ部分でのミスヒット時のパフォーマンスを向上させるためにトゥ、ヒール部分が厚くなっている。また1.5ミリの極薄フェースを採用した。800ドル。

■タイトリスト AP1 714 アイアン
ロングアイアン、ミドルアイアンのフェースは薄く、高打ち出し角を実現するため低重心化。またトゥ部分にタングステン重量を配しオフセンターヒット時のパフォーマンスを向上させた。ショートアイアンのフェースはやや厚く、重心もやや高め。ボールの直進性がアップしている。800ドル。

■ツアーエッジ XCG7
431ステンレススチールの鋳造ヘッドで、ソールのヒールとトゥ部分に重心を低くするためタングステンウエイトバッドを採用。また重量を配したヒールとトゥによりインパクト時のフィーリングが向上し、ソールの接地面積を減らしたため抜けが良い。500ドル。

■ウイルソン スタッフ C100 アイアン
前作のCi11よりもヘッドがコンパクト。ボール初速を上げるためフェースが薄くなっている。ヘッド周辺のコンセプトはCi11と同様だが、オフセンターヒット時の安定性と周辺重量配分を改善するため前作より75%も重くなっている。600ドル。

(※本企画は米国ゴルフダイジェスト誌、2013年9月号の一部を翻訳したもの)

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