女子バレーボール日本代表は、今年度初の公式戦となるネーションズリーグ(VNL)の名古屋大会とブラジル大会の2ラウンドを終え、6月28日からタイ大会に臨む。日本は現在5勝3敗で、ポイントの差により7位だが、ここまでの戦いを振り返る。和田(右…

 女子バレーボール日本代表は、今年度初の公式戦となるネーションズリーグ(VNL)の名古屋大会とブラジル大会の2ラウンドを終え、6月28日からタイ大会に臨む。日本は現在5勝3敗で、ポイントの差により7位だが、ここまでの戦いを振り返る。



和田(右から2番目)の32得点の活躍もあって、東京五輪覇者のアメリカに勝利した日本

【課題のミドルブロッカー、リベロに光明】

 名古屋大会は3連勝で幸先よくスタートしたものの、最終日の中国戦でストレート負けを喫すると、続くブラジル大会の初戦のセルビア戦では、それまで全敗だった相手に初白星を献上。その後は、韓国にストレートで勝ち、ドイツにフルセットで敗れ、ブラジル大会の最終日に東京五輪覇者のアメリカにフルセットで勝利してファイナルラウンド進出への望みをつないだ。

 これまでVNL(前身の大会はワールドグランプリ)は、その後に控えるオリンピックや世界選手権などを見越して主力選手がほとんど出場しない国もあるなど、若手育成の面も強かった。しかしパリ五輪から出場権獲得のルールが変わり、世界ランキングの重要度が増したことで各国ともメンバーの質は向上している。

 また、世界ランキング上位チームに勝つとポイントが多く入り、逆に下位のチームに負けると多く減らされるという独特のシステムが導入されたことで、下位チーム相手に控えの選手たちを中心に闘うことも難しくなった。

 日本は、昨年の世界選手権を戦った主力選手のうち、主将の古賀紗理那と司令塔の関菜々巳、林琴奈、井上愛里沙などは変わらず。ただ、同大会の途中からスタメンとして活躍した石川真佑がコンディション不良のため初週はベンチ入りできなかった。

 そんな中で迎えた初戦の相手は、東京五輪で痛敗したドミニカ共和国。スタートは上述の4名のほか、ミドルブロッカーに荒木彩花(184cm)、入澤まい(188cm)と、日本の女子選手としては大型の選手を揃えた。チーム全体のブロックでの得点は11だったが、そのうち入澤が4、荒木が2と活躍した。

 眞鍋政義監督も「日本でこんなにブロックでの得点、タッチが多く出るのは久しぶりですよね」と頬を緩めた。

 また、「今日のベストプレーヤーは、リベロだと思いますよ」と、やはり新戦力の西村弥菜美をたたえた。昨年度のリベロは、本来はアウトサイドヒッターの内瀬戸真実をコンバートして使うほど起用に悩んでいたポジションでもあった。

 しかし、2019年にアジア選手権優勝に貢献しながら、2021年に一度現役を引退していた西村が久光スプリングスで復帰。2022-23シーズンにサーブレシーブ成功率でトップ、ベストリベロを受賞する活躍を見せ、日本代表にも選出された。A代表デビューのこの試合でも、サーブレシーブ、スパイクレシーブとも安定していて、眞鍋監督からの信頼も厚くなった。

 後日、西村に「ベストプレーヤーはリベロと言われていましたが」と聞いてみると、「そんなこと初めて聞きました! 嬉しいです。まだまだですが、ブロックとの関係ができてきているのかなと思います」と、好守の要因を語ってくれた。

【ライトの和田が東京五輪金メダルのアメリカ相手に大爆発】

 さらに、アウトサイドヒッターの和田由紀子も、新戦力として大きな注目を集めた。名古屋大会の中国戦で、ライトで途中起用。試合は勝ちきれなかったものの、攻撃力重視のライトという新しい基軸を見せた。その試合後のミックスゾーンでは、悔しさのあまり涙ぐんでいたが、この時の悔しさがアメリカ戦で爆発することになる。

 初スタメンとしてコートに立つと、同じく初スタメンのセッター柴田真果にうまく使われ、32得点と両チーム合わせてのベストスコアラーに。アメリカが持っていた柴田のデータが少なかった、という要因もあるだろうが、それを加味しても十分すぎるほどに貢献した。

 昨年の世界選手権では、実質的にライト林の控えがおらず、林が常に出ずっぱりだったが、それを補う役割を果たすことができたといえる。セカンドセッター問題でも、柴田がアピールできた試合だった。

 日本は6月28日からタイ大会に臨む。タイではバレーボール人気が高く、日本のマンガ『ハイキュー‼』の影響もあり、日本代表は男女ともに人気がある。そんなホームに近い環境で、トルコ、オランダ、地元タイ、イタリアと対戦。なんとしてもファイナルラウンドに進み、少しでも多くポイントを獲得したいところだ。

 タイ大会の出場メンバーは前日27日に発表されたが、セッターは柴田が外れて松井珠己が復帰。また、ベテランの長岡望悠と、父がナイジェリア人の長身プレーヤー・宮部藍梨もメンバー入りした。ライトを林、和田、長岡でどう回すのか。松井も流れを変えるセッターとしてアピールができるのかといったところに注目が集まる。

 タイ大会の初戦のトルコは躍進が目立つ国で、VNLでは2度のメダルを獲得し、東京五輪ではイタリアやロシアを上回る5位につけた。注目選手のキューバ出身のメリッサ・バルガスが出場するかどうかによっても展開は変わってくるだろうが、日本はいいスタートを切ってほしいところだ。