登山YouTuber・安涼奈(アリョーナ) インタビュー前編(全2回)東大卒で登山YouTuber、モデルとして活動する、ロシア出身の安涼奈(アリョーナ)さん。登山の楽しさを伝える『安涼奈の山登り』は、登録者数4万人以上の人気チャンネルだ。…
登山YouTuber・安涼奈(アリョーナ) インタビュー前編(全2回)
東大卒で登山YouTuber、モデルとして活動する、ロシア出身の安涼奈(アリョーナ)さん。登山の楽しさを伝える『安涼奈の山登り』は、登録者数4万人以上の人気チャンネルだ。2021年に登山を始めて以来、現在は山梨のワイナリーに勤めながら各地の山を精力的に歩く安涼奈さんにインタビューした。
登山YouTuberとして活動する安涼奈さん
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●東大卒、モデルの才色兼備ぶり
ーーまず日本に興味を持ったきっかけは?
安涼奈(以下、同) 子どもの頃、父親が日本のアニメを私に見せてくれたんです。そのなかに「カードキャプターさくら」というアニメがあったんですよ。
登場人物が学校に行ったり家族と過ごしたり、神社のお祭りに行ったり。日本の生活や文化、信仰、日本にしかないようなものが映し出されていて、興味を持ちました。
ーーその後、留学生として来日し、東大に入学されたのですね。
2014年4月に来日して、まもなく10年になります。ロシアで外国人留学プログラムに申し込んだ時、両親は「うちの娘は優秀だけど、まあ受からないだろう」と思っていたみたいで、受験したいならどうぞって気軽な感じだったのですが、受かってしまって驚いたと思います。
日本語はロシアにいた時から3年くらい勉強していて、来日する時には日本語能力試験という試験で一番高いレベルを持っていました。
来日して最初の1年は大阪で暮らして勉強をしたうえで大学受験をしました。できれば東大に入りたい、国際関係や政治を学びたいと考えて、法学部を受験し合格しました。
法学部は勉強がきついと聞いていたけれど、たしかにきつかったですね(笑)。でも法律や判例などを読み込んで、どう適用される、というのを考えるのは楽しかったです。
ーーさらに大学院に進学。東大の公共政策大学院とはどんなことを学ぶのですか?
文字どおり「公共の政策」ですね。観光とか交通、税政策など、国としてどのような問題を抱えて、どのように解決していくのかを考える。来日してから観光で47都道府県を全部巡っていたので、特に観光の政策は問題点を自分なりに具体的に考えることができました。
ーー大学に在籍している間に、モデルのお仕事もされていたのですよね。
はい。ウェディング関係やアパレルのモデルのお仕事が多かったですね。日本にいる外国の方で、モデル事務所に登録してお仕事をされている人は多いと思います。
●日本のすばらしさを日本人に伝えたい
ーーYouTubeを始めたのは、大学を卒業されてから?
学部を卒業してから一度就職していたのですが、その時にYouTubeを始めました。日本各地を旅行して、日本って面白いところがたくさんあるのに、日本の方々は意外と全然知らないんだなって思っていました。
例えば、世界で一番雪が積もるのは青森市なんですけど、知られてないですよね? 日本の面白いところ、すばらしいところを日本人に紹介したいなと思って、YouTubeを始めました。
日本各地の山へ登り、魅力を発信している
ーー2019年に日本の暮らしや観光について紹介するチャンネルを立ち上げ、その後、登山専用チャンネルを開設していますね。
そう。登山がしたいと思ったのは、2020年8月に上高地に行った時ですね。上高地から北アルプスの穂高連峰を見て、なんてきれいなんだろう、こんなきれいな山に、なんで私は登っていないんだろうって思いました。
登山を始めたのはそれから。「登山」と意識して初めて山を登ったのは2021年1月、丹沢(神奈川)の大山で、初めての日本百名山は2021年3月の赤城山(群馬)でした。
撮影は主にスマートフォンで行なっているという
●山に行かないと気がすまない
ーー子どもの頃は登山をしていなかったのですか?
家族でピクニックくらいは行きましたけど、登山はしていなかったですね。日本は山へ行く交通機関が便利で、登山道もしっかり整備されていて、気軽に山に入れますが、私が暮らしていた南ロシアは、山って日本よりずっと自然に近いんです。
登山口には車でしか行くことができないし、登山道もわかりにくかったり道標もなかったり、普通の人が気軽に入れる感じではなかったんですよね。
子どもの頃は親に勧められて新体操をしていました。今、登山でバランスよく歩けるのは、新体操の影響もあるかもしれませんね(笑)。
ーー登山を始めてからは、ハイペースで日本の山を登っていますね。
最初の年(2021年)は約40座、次の年も40座くらいですね。本当はもう少し行けるはずだったけど、昨年11月や12月は大学院の卒業前で勉強が大変で、ほとんど山に行けませんでした。おかげさまで大学院は2年間で無事に卒業できました(笑)。
今年は就職して、仕事が休みの日に山に行っています。今(2023年5月)、日本百名山は81座登っています。あと19座をできれば今年中に登りたくて、登る順番を考えているところです。
お休みの日があって、天気予報がよさそうなら、すぐに山に向かっていますね。北海道とか遠くの山でも、行こうと思ったら躊躇しないで平気で行っちゃう。天気がよくて休みがあったら、山に行かないと気がすまないんです。
ーー行く山の基準はやっぱり百名山や標高の高い山ですか?
「絶対的な基準」は特にないんですよね。今は百名山完登を目指していますけど、百名山以外の山にもたくさん行ってます。山を調べていて、この景色が見てみたいな、これは面白いかなと思ったら「行きたい山リスト」に入れて、天気予報と休みの日を見て行っちゃいますね。
標高の低い山にも行きますし、雪のある山にも、岩山にも。登ってみると、どんな山もみんな好きだし、楽しさがあるんですよね。
北アルプスの槍ヶ岳にて
●私にしかできないことはなんだろう
ーー安涼奈さんの動画を見ていると、景色や歩く行程を楽しんでいるのがよくわかります。
ありがとうございます。動画を作る時は、見た人が私と一緒に山を歩いているような気持ちになれるようにと意識していますね。私の視点で一緒に景色を楽しんでほしいから、編集もほとんどしていないです。
音楽も少なめ、風の音や鳥の鳴き声とか、自然の音を残すようにしているんです。動画の時間は、視聴者が見てちょうどいいぐらいの時間で、アニメ1話分ぐらい......だいたい20分前後にしていますね。
ーーチャンネルは登録者数も多いですよね。反響も大きいのでは?
そうですね。特に百名山に登ると、視聴者の方によくお会いしますね。その場で声をかけてくれたり、「いましたよね」とあとから連絡を下さる方もいます。声をかけてもらえるのはやっぱりうれしいですよ。
ーー今後の目標、どんな活動をしていきたいですか?
ワイナリーでの仕事を続けながら、山ガールとして活動していきたいって思いがあるし、山に関する仕事ができたらって思います。百名山を全部登ったあとも、まだまだ行きたい山、歩きたいルートがたくさんあります。
今は、私のチャンネルの特別な点はなんだろうと考えています。国籍とか顔とかに関係なく、私にしかできないことはなんだろうと。
私には、自分のパッション(情熱)を人に伝える力、好きなものを人に伝染させる力があるのかなって思っているんですよね。登山のチャンネルでいうと、私が見たすばらしい景色をカメラに収めて、伝えないと気がすまない。
もっともっとたくさんの人に動画を見てもらって、日本の山の魅力を知ってほしいです!
後編<安涼奈の
「忘れられない山」5選>
【プロフィール】
安涼奈 アリョーナ
南ロシア出身。2014年に来日。東京大学法学部卒業、東大公共政策大学院修了。大学時代からモデルとしても活動し、現在は山梨県内のワイナリーに勤務。2021年から本格的に登山を始め、日本各地の山へ登っている。YouTubeチャンネル『安涼奈の山登り』で登山の魅力を発信中。