“熱男”の一振りが、先発の石川を強力に援護した。ソフトバンクの松田宣浩内野手が2戦連発となる3ランで勝利を大きくたぐり寄せた。「1点じゃ石川も苦しいだろうと思うので、追加点が欲しいところだった」。1点をリードして迎えた3回に、その1本は飛び…

“熱男”の一振りが、先発の石川を強力に援護した。ソフトバンクの松田宣浩内野手が2戦連発となる3ランで勝利を大きくたぐり寄せた。「1点じゃ石川も苦しいだろうと思うので、追加点が欲しいところだった」。1点をリードして迎えた3回に、その1本は飛び出した。

■快投止まらないソフトバンク新星・石川柊太

 快投が止まらない。ソフトバンクの新星、石川柊太投手。今季途中、中継ぎから先発に配置転換された右腕が驚愕の投球を続けている。

 4日のオリックス戦(ヤフオクD)。初回2死で小谷野に四球を与えたところから、17打者連続でアウトに取り、7回1死までノーヒットノーランの圧巻の投球を披露した。7回1死から小谷野にこの日最初で唯一の安打となる左前安打を許し、史上79人目(90度目)、育成出身者初の無安打無得点試合を逃したものの、7回まで1安打無失点。危なげなく今季4勝目をマークした。

 前回登板だった6月27日の日本ハム戦(ヤフオクD)でも7回を投げて、12個の三振を奪い、1安打無失点。2試合14イニング連続で無失点を続け、その間に2本の安打しか許していない。先発した5試合では4勝1敗、31回2/3を投げて、わずか5失点。防御率1.42と、もはやローテの柱と言いたくなるほどの安定感を見せている。

 昨季途中まで育成選手だった石川。突然変異かのように右腕が好投を続けられる要因はどこにあるのだろうか――。

■威力発揮する150キロ直球とスライダー、「今はハマっている感じ」

 日本ハム時代にダルビッシュ有、楽天時代に田中将大を指導してきた佐藤義則投手コーチは、こう分析する。

「150キロが出て、あれだけ大きなスライダーが入れば、そうそうは打てない。四球が絡まなければ、そうは点を取られない。今はそれがハマっている感じ」

 150キロを越えるストレートと、ブレーキが効き大きな曲がり幅を見せるスライダー(石川自身はパワーカーブと言う)の威力を認めた上で、「この前は12個三振を取って、相手も追い込まれたら、そうは打てないと感じていただろう。だから、相手も早打ちになる。それに助けられたところはある」と、追い込まれたら打ち崩すのが難しいと考える、相手への心理面に与える影響も大きいという。

 また、昨季までファームで右腕のボールを受けていた、同じ育成出身の女房役、甲斐拓也は、昨季からの変化をこう明かす。

■女房役が語る昨季との違い、「ある程度のところに投げられている」

「(ファームでも)ボール自体は良かったですけど、制球がそこまでではなかった。今はある程度のところに投げられていますし、インコースにも投げられる。その制球が昨季までと違いますね」

 昨季はウエスタンリーグ9試合(33イニング)に登板して19四死球。今季は先発した5試合でほぼ同じ31回2/3を投げて12四死球だ。

 150キロ超前後の力強いストレートに、独特の軌道を描くパワーカーブ、そしてカット気味に曲がるスライダーとフォークも持つ石川。もともと一級品だったボールに、それを操るコントロールが備わりつつある。ストレートだけでなく変化球でカウントを整えられるようになることで、相手に的を絞りにくくさせているところもあるだろう。

 先発となってわずか1か月ちょっとで、早くも4勝目。この働きぶりを見れば、資格を有する新人王だって、十二分に見えてくるだろう。(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)