バレーボールネーションズリーグ(VNL)の第1週が、6月6日に愛知県・名古屋市の日本ガイシホールで開幕した。参加メンバー14名のうち、開幕直前に最年少18歳の早稲田大のミドルブロッカー・麻野堅斗が外れ、アウトサイドヒッターの富田将馬(東レ…

 バレーボールネーションズリーグ(VNL)の第1週が、6月6日に愛知県・名古屋市の日本ガイシホールで開幕した。参加メンバー14名のうち、開幕直前に最年少18歳の早稲田大のミドルブロッカー・麻野堅斗が外れ、アウトサイドヒッターの富田将馬(東レアローズ)が入った。

 数日前、エースで主将の石川祐希(ミラノ)が肘の炎症から感染症になり、ポーランドとの親善試合の2試合目は欠場。そんな石川の負担を減らすと同時に、身長200cmの新星・甲斐優斗(専修大2年)をサポートするための施策だった。

 同じくアウトサイドヒッターとして活躍が期待されるのが、イタリア1部リーグで2年目のシーズンを戦った髙橋藍。2022-2023シーズンは何度もMVPを受賞するなどパドヴァの主力として成長し、より格上のモンツァ(今シーズンはパドヴァが10位、モンツァが7位)への移籍が決まっている。


日本代表の

「攻守の要」として活躍する髙橋

 その移籍について髙橋は、笑顔で次のように語った。

「一気に"4強"といったジャンプアップをするより、自分がちゃんと出場できて、なおかつステップアップできるという視点から、オファーをいただいた中でモンツァを選びました。(本拠地の位置が)祐希さんのいるミラノと近いですし、ミラノダービーみたいなのも盛り上がるんじゃないですかね。今からワクワクします」

 2年目のリーグについては「本当に充実していました」と振り返る。目に見える部分でも、体はひと回り大きくなり、スパイクに体重が乗るようになった。

「トレーニングは強度の高いメニューを意識していますし、食事にも気をつけています。チームが提供するレストランもあるのですが、ほとんど自炊ですね。そのほうが栄養管理もしやすいので。タンパク質をたくさん摂るようにしていて、試合直前は炭水化物を摂ります。移動が長いので消耗しないようにも気をつけています」

 もともと定評があるサーブレシーブやスパイクレシーブからのつなぎも、世界トップレベルの選手たちのサーブやスパイクを受け続けて進化。さらに、自身のサーブでは相手を崩してブレイクにつなげるケースが多くなった。

 そんなシーンは、日本代表の親善試合でも見られた。6月1、2日に行なわれたポーランドとの親善試合で、髙橋は何本もサーブで相手を崩し、得点につなげている。

 現代バレーでは自チームにサーブ権がある時の得点、「ブレイク」が勝敗を大きく左右するため、サーブで崩すことは必須となる。同時に、相手のサーブに崩されないサーブレシーブ力も必要なため、それらを兼ね備えた髙橋は"日本の攻守の要"と言ってもいいだろう。

 課題だった前衛での攻撃についても、「(イタリアのリーグで)常に高いブロックを相手にしているので、いかにそれをかわすか、あるいは利用するかを試行錯誤し続けてきました。間違いなく昨年よりも成長できたと思います」と胸を張った。

 リーグ挑戦1年目はなかなか出場機会が得られず、久しぶりの出場がリベロとしての出場だったりと苦しい時期もあった。1年目はインカレが終わってからチームに合流したが、石川のアドバイスもあり、2年目からはシーズンの最初からチームに合流。そこで存在感を示し、チームメイトやコーチとのコミュニケーションもしっかり取って、開幕から主力として活躍することができた。

 VNLの第1週のメンバーで同じポジションに抜擢された甲斐は、髙橋が合流したばかりの紅白戦で「Aチーム」に入っていた。そんな甲斐について、髙橋はこう話す。

「もちろん、うかうかはできませんが、バチバチするのではなくて切磋琢磨しながら伸びていければいいと思います。自分の特長をきちんと把握して、それを伸ばしていけば焦る必要はまったくない。甲斐選手は身長が高くてスパイクの打点も高く、ブロックも高いのでそのあたりは僕にないところ。羨ましくもあります。でも、僕がそれを補ってあまりあるくらいの力をつければいい。だから、心配はしていませんね」

 ポーランドとの親善試合では髙橋がスタメンに復帰。1日目は石川と対角を組んでポーランドを破っている。石川が欠場した2日目は高梨健太や甲斐優斗らと対角を組んだが、なかなかサーブレシーブでカバーしきれず、1-3で敗れた。

「(2日目の負けは)祐希さんがいなかったから、というのを言い訳にしてはいけない。僕もサーブレシーブが少し乱れてしまい、セッターに迷惑をかけてしまいました。連携、コンビについても詰めないといけないですね。

 ポーランドは世界ランキング1位のチーム。日本で活躍する主将のバルトシュ・クレク(ウルフドッグス名古屋)らがいなくても、本当に強い。そういうチームと、この時期に親善試合ができたことは、すごくいい経験になりました」

 日本代表の実戦形式での試合は久しぶりだったが、「やっぱり祐希さんとの対角は合っていると思います。イタリアのリーグでは敵チームとしてネットを挟んで戦いましたが、同じコートにいると本当に頼もしい。常にスピードがある攻撃があらゆるところからできますし、ブロックとの連携もよくなっています。(VNL第1週が行なわれる)愛知県は祐希さんの地元でもありますから、いいプレーと勝利をお見せしたいですね」と意気込んだ。

 今年度はVNLのあとに、オリンピック出場権を争うワールドカップバレーが控えている。

「そこで出場権を獲ることが今年の一番の目標です。そのあとに、ランキングでも出場権が得られる場合もありますが、当然、先に獲っておいたほうがいい。出場国はアメリカやセルビアなど強豪国ばかりで日程もタフですが、そこで出場権を勝ち取って、パリ五輪でのメダルにつなげたいです。

 ランキングを維持するためにも、VNLでも油断は許されません。昨年は代表のスケジュールが非常に厳しいものでしたが、今年度は少し考慮していただけるとも感じます。いい戦いができるように、気合を入れて臨みます」

 VNLは3週にわたって16チームで予選ラウンドが行なわれ、上位8チームがノックアウト方式のトーナメント「ファイナルラウンド」に進む。ワールドカップバレーの試金石になる大会で、日本代表、髙橋藍がどんなプレーを見せるかに注目だ。