石川祐希のAttack The World vol.5(vol.4 初の「4強入り」を果たしたシーズンを総括 「もっと先に行きたい、行ける」>>) イタリア1部リーグでの激闘を終えた石川祐希は、少しの休息を挟んで日本代表での活動を開始した。…

石川祐希のAttack The World vol.5

(vol.4 初の「4強入り」を果たしたシーズンを総括 「もっと先に行きたい、行ける」>>)

 イタリア1部リーグでの激闘を終えた石川祐希は、少しの休息を挟んで日本代表での活動を開始した。2024年パリ五輪予選が行なわれる重要なシーズンも、主将としてチームを引っ張っていく。日本代表での今季の初陣は、6月6日から始まるネーションズリーグ。生まれ育った愛知県で、新たな戦いが幕を開ける。



日本代表の会見に臨んだ石川祐希

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――帰国して少しのオフを挟み、日本代表に合流しました。合流した時のチームの雰囲気はいかがでしたか?

「非常によかったです。(フィリップ・)ブラン監督からも状況は聞いていましたが、ちゃんといい練習ができていたんだ、と感じました」

――今季は主将として、どのようにチームを引っ張っていこうと考えていますか?

「今までは『個の力が大事だ』と言ってきて、それはある程度、日本代表の選手に浸透しました。僕(ミラノ)がイタリア1部リーグのプレーオフでペルージャに勝てたのはチーム力だと思います。だからこそ、個の力を上げていくことは必須ですが、チーム力、組織力を徹底して上げて戦わないといけないと思っています」

――あえて、チーム力や組織力に言及するのはなぜでしょうか。

「パリ五輪予選(OQT)は連戦で、短い期間で試合が行なわれます(9月30日~10月8日の9日間で7試合)。そうなると、間違いなくチーム全員の力が必要になってくる。全員が出る準備をしっかりしておくことや、誰が出ても同じようなプレーをできることが大切だと思うからです」

――18歳の麻野堅斗選手、19歳の甲斐優斗選手ら若い選手もチームに加わりました。

「のびのびやってもらうというよりは、彼らにもちゃんと責任を持ってプレーしてもらおうと思っています。OQTは厳しい戦いになるので、全員が自分の能力を100%発揮しなければ勝てません。若い選手だからといって気を使ったり、助けたりしていると、自分たちが力を100%発揮できない。『先輩たちが助けてくれる』という考えではいないでほしいと思います」

【厳しい場面では「自分で乗り切ってもらうしかない」】

――あえて厳しく、高いレベルを求めていくということでしょうか。

「厳しく思われるかもしれませんが、あくまで普通のことです。今はプロ選手が多くなり、自分の責任は自分で取るという選手ばかりになりました。どの選手に言っても納得してもらえると思います。

 誰かを助けることに労力を使ってしまうと100%のパフォーマンスを出せなくなる。全員が自分の100%のパフォーマンスを出すこと。それに加えて、『自分がやってやる』という気持ちを全員が持って試合に臨むことが、今季は特に必要だと思っています。それもチーム力に繋がっていくと考えるからです」

――ご自身も18歳から日本代表に入って、多くの経験を積んできました。それをふまえて、若手に「先輩たちが助けてくれる」という考えではいないでほしいと思うのですか?

「僕が若い時は先輩に助けてもらっていました。ですが、厳しい場面では助けてもらえないこともあります。そういう時には自分で乗り切ってもらうしかない。先輩に頼るのではなく、自分でやるというスタンスでやらないと厳しい場面は乗り越えられません。

 もちろん、困ったり、できないことがあったりしたら助けようと思っています。ただ、彼らが『先輩に助けてもらう』ことが前提だと困ります。『誰も助けてくれない、自分でやるしかない』という思いでやってもらわないと、チームとして強くなれません」

――甲斐選手は同じポジションの選手でもあります。

「技術的には不足している部分もありますが、高さがあることが一番の魅力だと思います。身長(200cm)が高くてパスもできますし、サーブもいいですし、球もしっかり叩くことができる。これからどんどん成長していくでしょう。

 口数が少ない選手なので、技術に加えて、それ以外のコミュニケーションなどもこの代表活動で学んでもらえれば。年齢的には、チビタノーバ(イタリア1部リーグ)にいるブルガリア代表の(アレクサンダル・)ニコロフ選手が同じです。そういった選手と張り合えるようになってほしいですね」

【地元でのVNLは特別】

――代表チームが昨季から上積みできているのは、どのような部分でしょうか。

「昨季は世界選手権まで非常にいいバレーができていましたし、その形は今も保てています。去年よりもそれぞれのスキルも高くなっている。海外チーム相手に通用するかどうかはこれから試さないと何とも言えませんが、練習ではいい感じです。サーブもよくなっています。ミドルブロッカー(MB)のサーブも、海外のMBよりもいいフローターを持っている。他の選手もサーブがいいので、武器になると思います」

――去年の世界選手権での悔しさが生きている、と感じる部分はありますか?

「みんなが1点を大事にしています。全員が『自分の責任で負けた』と思ったはずなので、その責任を感じながらシーズンを通してプレーしたんだろうと感じます。練習でも、もったいないミスがあまり出ないようになりました。あとは感情表現の仕方も変わりましたね。練習でも負けたら悔しそうにしますし、練習から勝負しているなと伝わってきます。だからこそ、どんどんよくなっていく気しかしません」

――チームとしては少しずつ成熟期に近づいているイメージでしょうか。

「完成にはまだまだ近づいていません。目指すところはまだまだ先です。成熟という感じはあまりなく、成長しているという表現が当てはまります。その成長のスピードは昨季よりも速くなっていると思います」

――ネーションズリーグは地元の愛知で始まります。どのような姿を見せたいですか?

「地元でできるというのは特別ですし、うれしいことです。たくさんの日本のファンの前でプレーを披露できるのは、大阪であった去年のネーションズリーグ以来になるので、そういった意味でも楽しみです」

――日本ラウンドではイラン、セルビア、ブルガリア、フランスと難敵ばかりと戦うことになります。その後もブラジル、アルゼンチン、イタリア、ポーランドといった強敵との対戦が続きます。

「名古屋にはどのチームもフルメンバーで来ない可能性があります。なので、確実に勝ちたい。4戦全勝が日本ラウンドの目標です。世界ランキングを上げることを考えると、自分たちよりも上位のチームに勝たないといけない。

 フランスには去年、世界選手権で惜しいところまでいきました。イタリアにはネーションズリーグで勝つことができた。なので、今季はブラジルに勝ちたいですね。ブラジルに対するイメージがよくないので、それを払拭したいです」

――いよいよ、代表シーズンが開幕。あらためて、どのような心境でしょうか。

「楽しみですし、意外と落ち着いています。それが、いいか悪いかは置いといて、『ちゃんとやれば問題ないだろう』という安心感みたいなものはあります。練習もしっかりといい形でできているので、その成果をネーションズリーグとアジア選手権(8月・イラン)で出したい。

 OQTではパフォーマンスが高くても低くても勝つことが求められます。その準備をしっかりとしたい。まずはネーションズリーグで、目の前の試合でどれだけ勝負できるかということに毎試合トライしていく。覚悟を持って臨みたいと思っています」

(vol.6:石川祐希が感じる男子バレー日本代表の進化 でも「達成感はまったくない」のはなぜか>>)

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