「世界卓球2023南アフリカ」<5月20~28日/ダーバン・個人戦>を戦い終えた日本代表選手団が5月30日の夜遅くに帰国。翌31日の朝10時30分から混合ダブルス銀メダルの張本智和(智和企画)/早田ひな(日本生命)、女子ダブルス銅メダルの木…

「世界卓球2023南アフリカ」<5月20~28日/ダーバン・個人戦>を戦い終えた日本代表選手団が5月30日の夜遅くに帰国。

翌31日の朝10時30分から混合ダブルス銀メダルの張本智和(智和企画)/早田ひな(日本生命)、女子ダブルス銅メダルの木原美悠/長﨑美柚(ともに木下グループ)の4人が都内でメダリスト記者会見に臨んだ。

女子シングルスでも銅メダルを手にした早田は2種目でメダルを獲得したことを報告。

張本とペアを組んだ混合ダブルスでは前回、個人戦の世界卓球2021ヒューストンに次ぐ決勝進出を果たし、ディフェンディングチャンピオンの王楚欽/孫穎莎(中国)とのリベンジマッチに漕ぎ着けた早田。

しかし、雪辱はならず2大会連続の銀メダル。その一方で2017ドイツ大会の平野美宇(木下グループ)以来、6年ぶりの銅メダルに輝いた女子シングルスは、準決勝で世界ランク3位(試合当日)の王芸迪(中国)とゲームオール21-19の死闘を演じ、大会史に残る名勝負が世界中を魅了した。

記者会見でもこの一戦に触れた早田は、特に9回のマッチポイントを凌いだ最終ゲーム17-18ビハインドの場面で、「相手が思い切って強く打った(レシーブの)ボールをぎりぎり返して、それがすごい軌道でエッジ気味に入った。そこに技術の(向上の)成果が見られましたし、相手を動揺させることができた」と振り返っている。

また、8-10の相手のマッチポイントでロングラリーを制した守備力や、「最後はもう行くしかない」と腹をくくった20-19の自身のマッチポイントで、サーブ3球目と5球目をクロスへ放った2本のバックハンドをベストプレーに挙げた。

「(お互い)どのボールも究極のレベル」と言う早田。

今大会の出来についてたずねられ「75点ぐらい」と評価した中で、「シングルスで(中国に勝って)一つの壁を越えられて良かったが。それ以上にもっとこの先、険しい道のりが続く」と表情を引き締め、「地力をどんどん上げていって、中国人選手みたいに(技術や戦術の)引き出しを増やしていきたい」とさらなる飛躍を誓った。

正直なところ打倒中国は気の遠くなる話だ。

今回、早田が王芸迪に勝ったものの、その上には今大会で新女王に輝いた世界ランク1位の孫穎莎、今大会は銀メダルだったが東京2020オリンピックで金メダルの陳夢、そして今大会ベスト8に甘んじたものの2021ヒューストン大会金メダルの王曼昱らが立ちはだかる。

早田も世界卓球シングルスの初メダルに喜びはあるが、同時に「まだ上がいるという現実を突きつけられた」と悔しさをにじませている。

果たして、ここからどんな方法で中国超えを実現しようとしているのか。そのための方策は見えているのだろうか。

大会開催中のダーバンで孫穎莎に敗れた女子シングルス準決勝直後の早田に聞いた。

「環境的に中国を超える練習ができないのは当たり前なので、自分にどれだけプレッシャーをかけて練習できるか。例えば、練習相手の凡ミスでは私に点が入らない状態で試合をしたりとか。量じゃなくて質を考えて試合と同じ状況を作って練習していくしかないと思います。でも、試合で感じた課題を練習で修正して、またそれを試合で試してとやっていったら着実に一つずつ進んでいく(打倒中国に近づいていく)はず」

女子日本代表率いる渡辺武弘監督は、世界卓球2023南アフリカの総括で早田についてこう話している。

「他の選手もみんなそうだが、特に早田選手は日頃から対中国をすごく意識して練習を考えている。中国人選手だったら試合でこうしてくるだろうと、中国に勝つにはどうすればいいのかが四六時中、頭にある」

その早田は世界卓球2023南アフリカをベスト4で終え、パリ五輪選考ポイントに120ポイントを加算。さらに中国トップ3選手に勝利した場合に与えられる15ポイントも獲得して総得点を467.5ポイントに伸ばした。

247ポイントで2位の平野とは220.5ポイントの大差をつけており、早田はパリ五輪選考対象大会の最後に設けられた2023全日本選手権を待たずに代表権獲得を視野に入れている。
悲願のオリンピック初出場に向け、女子日本の新エースが猛チャージをかける。


(文=高樹ミナ)