国内最高峰のレースカテゴリーで、かつ国内有数の観客動員数を誇るSUPER GT。参戦を希望するチームや企業も多いと言われるが、そんな中、産業機械メーカーであるアネスト岩田がレーシングチームとして参戦の声を上げた。ドライバーは全てルーキーとい…

国内最高峰のレースカテゴリーで、かつ国内有数の観客動員数を誇るSUPER GT。参戦を希望するチームや企業も多いと言われるが、そんな中、産業機械メーカーであるアネスト岩田がレーシングチームとして参戦の声を上げた。ドライバーは全てルーキーという同チームの挑戦を追う。

◆『夢ある無謀を。』をテーマに掲げたチャレンジ
SUPER GTは「GT500」と「GT300」の二つのクラスのレースが混走で行われる。GT500クラスは基本的に自動車メーカー直径のチームが最先端の技術を注ぎ込んだレーシングカーで勝負をしている。一方GT300クラスはカスタマーチームが多く参戦し、自動車メーカーが販売するサーキット専用のレーシングカーを購入して参戦している。

GT300クラスは参戦チームの入れ替わりも多く、実は話題に事欠かない。このGT300に今年、新チームとして参戦の声を上げたのがアネスト岩田による50号車 ANEST IWATA Racing with Arnage。もともとレーシングファクトリーとして参戦していたアルナージュに、アネスト岩田がメインスポンサーとなりレーシングチームを立ち上げ参戦することになったというのがその経緯だ。

Aドライバーはイゴール・オオムラ・フラガ選手、Bドライバーは古谷 悠河選手、監督を松浦 佑亮、チーフエンジニアを天澤 天二郎、チーム総監督をアネスト岩田の武田 克己が努める。

5月4日、SUPER GT 第2戦 富士大会の決勝を前に、アネストイワタレーシングとして記者会見を開いた。その中で総監督の武田氏が参戦への思いを語った。

「産業機械メーカーとして96年の歴史を持つアネスト岩田は、主にコンプレッサーやスプレーガンなどを製造販売を行なっている。レースとは直接関係取引関係などはないが、自動車部品メーカーとは多くの取引をさせてもらっている。近年は自動車好きの方に有名な箱根ターンパイクのネーミングライツを取得して、『アネスト岩田ターンパイク箱根』と呼ばせていただいている。そこから自動車関連やレース関連の皆様との繋がりが生まれてきたことで今回レーシングチームを立ち上げ、SUPER GTに参戦することになった。『夢ある無謀を。』をテーマに掲げて新たなチャレンジを行なっていきたい」

◆20代若手ドライバー3人の挑戦
Aドライバーのイゴール・オオムラ・フラガ選手は幼少よりレーシングカートを始め、同時期にTVゲームの『グランツーリスモ』をプレイし始め、実車とヴァーチャルモータースポーツの二刀流で頭角を表している。実車ではブラジルF3、フォーミュラリージョナル・ヨーロッパなどを戦い、2020年にはニュージーランドのトヨタレーシングシリーズでチャンピオンを獲得。ヴァーチャルでは2018年の「FIAグランツーリスモ選手権」ネイションズカップで初代チャンピオンに輝いている。今年はスーパーフォーミュラ・ライツにも参戦する。

Bドライバーの古谷 悠河選手は2021年のフォーミュラ・リージョナルでチャンピオンを獲得、2022年からスーパーフォミュラ・ライツに参戦し、同時期にスーパー耐久などフォーミュラから箱車レースまで多彩な経験を持つ。今シーズンはスーパーフォーミュラ・ライツに継続参戦する。

そしてCドライバーに女性ドライバーの小山 美姫選手を登録している。今年のSUPER GTでは450kmレースを8戦中5戦行うが、450kmレースではCドライバーの登録が認められるため参戦となった。今年のSUPER GT参戦ドライバーとしては紅一点となる。

小山 美姫選手はFIA-F4でレース活動を始め、2019年に女性がF1を目指すWシリーズにも参戦している。その後スーパーフォーミュラ・ライツ、フォーミュラ・リージョナルに参戦、2022年にはフォーミュラ・リージョナルで年間ドライバーズタイトルを獲得するなど新進気鋭のレーシングドライバーだ。

イゴール選手、小山選手、古谷選手は全員が20代。同時期にフォーミュラ・ライツやフォーミュラ・リージョナルで戦っていることもあり、普段から顔を合わせることも多く、友達同士のようになんでも言い合える環境だという。

◆「先入観がないことで思い切ったこともできる」
SUPER GTではベテランドライバーと若手ドライバーの組み合わせ、というのがよくある光景だが、アネストイワタレーシングではベテラン不在により、マシンのセッティングやタイヤ選択などは自分たちで考え、話し合って決めている。それだけに固定観念にとらわれない、のびのびとした雰囲気も感じられる。

「ベテランドライバーの知見も必要だが、データがない状態からドライバーとしてもものすごく濃密は経験をしている。先入観がないことで思い切ったこともできる。将来に向けても良い経験ができている」と3人は話す。

そんな3人がそれぞれの意気込みを語った。

イゴール選手「コロナの影響で実車レースを2年乗れない期間があったなかで、こうやってAドライバーとしてチームに迎え入れていただいて非常に嬉しい。そして結果に繋げていきたい」

古谷選手「フォーミュラからレースを始め、スーパー耐久にも参戦させてもらったことで、箱車レースやクラス違いの混合レースなども経験しているので、その経験を生かしてSUPER GTを戦っていきたい」

小山選手「レースにはまだ出ていないので語れることは多くないが、少ないチャンスをものできるようにしていきたいし、外から見ることで勉強することも多くある。2人に食らいつき追い越していけるように頑張りたい」

5月4日の第2戦富士450kmレースでは、予選17番となり決勝は14番でレースを終えた。次戦SUPER GT第3戦 SUZUKA GT 450kmレースは6月4日に決勝が行われる。フレッシュなメンバーでどのような戦いを見せるのか注目だ。