飯田哲也も驚嘆「タイミングの取り方が天才的」 今シーズン序盤ながら、セ・リーグ打撃成績トップの数字がさん然と輝いている。DeNA・宮崎敏郎内野手の打率は.396(30日現在)。5月25日の試合まで4割台をキープしていた。長い歴史を持つ日本球…

飯田哲也も驚嘆「タイミングの取り方が天才的」

 今シーズン序盤ながら、セ・リーグ打撃成績トップの数字がさん然と輝いている。DeNA・宮崎敏郎内野手の打率は.396(30日現在)。5月25日の試合まで4割台をキープしていた。長い歴史を持つ日本球界で、出現したことがない“4割打者”誕生の可能性はあるのだろうか。現役時代に1248安打をマークし、ヤクルト、楽天で走攻守3拍子揃った外野手として活躍した評論家の飯田哲也氏に、夢の大記録への可能性を探ってもらった。

 宮崎は身長172センチの右打ち。2017年に首位打者に輝くなど3割の常連で、打撃フォームはかなり個性的だ。両足が揃うような狭いスタンスから早めに左足を引き上げ、がっちりとした体をくるりと回してヒットを量産する。飯田氏は「バットの使い方が柔らかい。カチン、カチンじゃなくてフワーッ、フニャフニャ」と表現する。

 宮崎の強みは何なのか。「タイミングの取り方がめちゃくちゃ良い。天才的です。引っ張らず、全ての方向に打てる。本当に凄い」と絶賛の言葉が続く。

 対戦するバッテリーが難敵・宮崎を退けるには、どんな投球が有効なのか。「最初にあそこに投げて、次はあそこにというような配球面では崩れないと思います。どのタイプの投手にもタイミングを合わせることができるので。抑えようがない。今は、彼自身の打ちミスを待つしかない」。

 飯田氏がこれまで目の当たりにした安打製造機と比較すると、宮崎は誰にタイプが似ているのだろう。

 現役では近藤健介(ソフトバンク)。そして日米で打ちまくった、イチロー氏の名が挙がった。「宮崎も近藤もイチローもバットコントロールが上手。バットコントロールは率が残るバッターの証です」。

出塁が多いと体にかかる負担は増す「相当しんどいと思う」

 過去に4割へ迫った選手たちを振り返ってみると、シーズン最高打率は1986年のランディ・バース(阪神)の.389。歴代2位と3位はイチロー氏だ。オリックスからメジャー移籍前の日本ラストイヤー2000年に.387。自身初めて規定打席に達した1994年は、いきなり.385を残した。

 1989年のウォーレン・クロマティ(巨人)は8月下旬まで4割台をマークしたものの、最終的には.3781。近年では近藤が日本ハム時代の2017年、6月初旬まで4割超で話題となった。しかし、太ももを痛めるなど故障で長期離脱し、規定打席には届かなかった。右打者の最高は2008年の内川聖一(横浜)で.3780だ。

 飯田氏は、宮崎が今後クリアすべきポイントをコンディション維持と見る。「打ってる時は、いっぱい塁に出るので大変なんです。必ず走りますから。相当しんどいと思う」。快足で鳴らした同氏は、塁上に留まって試合を戦うと体により負担がかかることを身に染みて知っている。感覚としては「4打数ノーヒットと比べたら3倍は疲れる」という。

 宮崎はベテランの域に入った34歳。実際ここまで、三浦大輔監督は宮崎が絶好調でも配慮を欠かさない。「試合を休ませたりしていますよね。起用の仕方は、うまくやっていると思いますよ」。これから梅雨時、夏場と体にこたえる季節が待ち構える。「首脳陣は、本当にまずいという前に止めないといけない。下半身がバチーンといったら終わりですからね。宮崎本人も、ヤバいと感じたら休む勇気も必要でしょう」。

 1シーズンは長い。飯田氏は「4割はまだ誰もいないわけですから、どこかで落ちてくるとは思いますが」と冷静に話しつつ、「史上初、行ってほしいですよね」とファンの期待を代弁する。DeNAはここまで2位。1998年を最後に遠ざかる優勝に向けて戦っているが、宮崎個人のバットからも目が離せない。(西村大輔 / Taisuke Nishimura)