スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月18~24日/賞金総額 215万2690ユーロ/クレーコート)の準々決勝で、第2シードの錦織圭(6位/日清食品)が第11シードのアレクサンド…
スペイン・バルセロナで開催されている「バルセロナ・オープン・バンコサバデル」(ATP500/4月18~24日/賞金総額 215万2690ユーロ/クレーコート)の準々決勝で、第2シードの錦織圭(6位/日清食品)が第11シードのアレクサンドル・ドルゴポロフ(30位/ウクライナ)を7-5 6-0のストレートで下し、準決勝に駒を進めた。
錦織は23日の準決勝で、第6シードのブノワ・ペール(22位/フランス)と対戦する。
すべては、第1セットの終盤に凝縮されていた。お互いにサービスをキープし合って進んだ第1セットの第10ゲーム、4-5からの自分のサービスゲームに臨んだ錦織は、たたみかけてくるドルゴポロフの猛攻を受け、ぎりぎりまで追い詰められた。
このゲームでのドルゴポロフは、錦織がセカンドサービスを打つとなれば容赦なくリターンから叩き、とりわけアグレッシブにプレーした。錦織はストロークで振り回され、ロブで逃げようとしたところをスマッシュで叩かれて30-40と最初のセットポイントを許す。
これを相手のリターンミスで凌いだ錦織は直後、今度は強打で振られた末に、ドロップショットにしてやられた。この2本目のセットポイントを救ったのも、やはり相手のミスだったが、3本目のセットポイントでは、ネットに出ることでプレッシャーをかけ、相手のミスを引き出したとも言えた。
そして、続くポイントで即座にリターンエースを奪われ、4本目のセットポイントを握られたとき、錦織は自らフォアハンドを打ち込む強気のプレーでポイントをもぎとりにいく。これにドルゴポロフのミス2本が続いたことから見て、錦織はここで心理戦に勝ったのだろう。
「セットもそうだが、あのゲームは取られてもおかしくなかった。ほぼ終始、彼のほうがいいテニスをしていたし、8割くらいが彼のペースだったから、第1セットを取れたのがむしろ不思議なくらいだった」と錦織はのちに漏らしている。
弱気になりそうになる瞬間もあったと認めた錦織は、強気のプレーで凌いだ4本目のセットポイントについて、「大事なポイントでは、自分からミスをするのがもっともまずいので、なるべく大事にプレーしていた。でも、たまにああいうふうに自分から取ることができれば勢いもつく。その点でうまく攻守のバランスができていたと思う」と振り返った。
こうして大ピンチを凌いでサービスをキープした錦織は、5-5で迎えた次のゲームで、まだ崩れきっていなかったドルゴポロフの息の根を止めにかかる。すかさず相手のサービスをブレークするという理想的な定石を実現したのだ。
「あのゲームをキープしてから少し(心理的に)楽になり、吹っきれたような気持ちにもなれた。そして、とにかく次のゲームに集中しようと努めた」と錦織は明かす。
「ああいう長いゲームのあとは、しっかり集中しなければならない。もちろん自分もきついけれど、特に4本セットポイントがあって、そこをとれず悔しい思いをした相手にとっては集中力を保つのが難しいはずだから」
そしてここでも、辛抱強いプレーがドルゴポロフの崩壊に一役買った。錦織は強打をスライスロブで凌ぎ、強引に決めようとしたドルゴポロフはグラウンドスマッシュをミス。これで錦織は、この試合最初のブレークポイントを手中にする。
打ち込まれては粘り返し、このゲームで錦織がつかんだブレークポイントの数は「4」。前のゲームでドルゴポロフがつかんだそれと数は同じだったが、違いは、錦織がセットに値するその4本目のブレークポイントをしっかりものにしたことだった。
「1セット目は最後まであまり余裕はなかった。僕のボールが浅かったこともあり、ラリー戦になるとほぼ彼のほうが攻めていたと思う。大事にいきすぎていた部分もあったかもしれない。でもブレークしてからは、自分からもっともっと打っていこうと思った」
錦織は、決して平坦ではなかった第1セットでの心境を、こう振り返る。
嵐を乗りきった錦織は、次のゲームで比較的楽にサービスをキープし、7-5でセットを奪った。しかし終わってみれば、本人さえがやや驚いた『勝負強さ』によって第1セットを取ることで、錦織は試合をも手中にしたのである。
錦織が第2セットの第1ゲームでブレークを果たすと、そこからは飛ぶように進んだ。ドルゴポロフは攻撃し続けていたが、ミスの早さがいっそう顕著になり、錦織がアグレッシブに打ち込む頻度は格段に高くなった。最後はサイドラインぎりぎりに刺さった錦織のバックハンドを、ドルゴポロフが力なく見送り、6-0のスコアで幕を下ろした。 錦織は23日、現地時間13時30分からの準決勝で、フランスのブノワ・ペール(22位)と対戦する。ペールと言えば、昨年の全米オープン1回戦と楽天ジャパンオープン準決勝で錦織を破った男。対戦成績は2勝2敗だが、錦織は昨年の2度の対戦で、“つかみどころのない”プレースタイルのペールに連敗しているのだ。196cmの長身から繰り出すサービスと、タッチのよさ、バックハンドが武器のペールは、棄権しなければ準決勝で錦織と当たる可能性のあったもうひとりのフランス人、リシャール・ガスケに次ぐ、錦織の天敵とも言える選手なのだ(錦織はガスケに6連敗中である)。
「去年負けた2試合はどちらもハードコートだったから、これはまた別の試合、別の戦いとなる。前回当たったときには、彼のサービスに苦しんだ。彼のバックハンドも十分注意しなければならないし、またタッチがよく、ドロップショットなどもうまい選手なので、そういったショットで彼のペースにさせないよう気をつける必要がある。チームスタッフと話し合い、もしかすると戦略を少し変えなければならないかもしれない」と、錦織は準決勝に向けて、こう警戒心を見せてから、次のように続けてちょっぴり自信も覗かせた。
「彼は素晴らしい選手であり、厳しい戦いになるのは間違いないが、僕も昨年より少し強くなった。明日どうなるか見てみよう」
(テニスマガジン/ライター◎木村かや子、構成◎編集部)